インフレ下の経営はスピード勝負|判断が遅い社長ほど資金繰りが悪化する理由

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インフレ傾向が続くなかで、値上げやコストの管理に手をこまねいていると、利益が圧迫され、資金がショートしてしまいます。

この記事では、インフレ下で社長の行動が遅れる理由と、それが資金繰りの悪化につながるメカニズムを整理します。

行動が遅い社長に共通する典型パターン

損切りができない

赤字店舗や赤字事業を「様子見」してやめられないケースは後を断ちません。

「再生できるか?」の見極めは非常に難しいため、ついつい先送りになりがちですが、根拠もなく「なんとなく」続けるケースは、あまりいい結果にならず傷口を広げてしまいます。

人件費削減や外注化が遅れる

従業員に「いい顔」をしたくて、人件費の削減に取り組めないケースは多くみられます。

従業員などのうちに身内や友人がいると、シビアにできない。

「いい顔」して社長だけが苦しむなら仕方ないのですが、取引先などに迷惑をかけてるケースも多く、そのうえで潰れると、従業員も困りますから、ダメな行動です。

値上げを「お客さまに申し訳ない」でできない

気のいい社長さんに多いケースなのですが、「お客さまに申し訳なくて」値上げに踏み切れない、というケースは非常に多いです。

しかし、我慢を続けても状況は改善しません(特にインフレ下では)。

よくある話ですが、値上げできずに廃業となると、お客さまや得意先が「閉めるくらいなら値上げしてくれたらよかったのに」と言われます。

「お客さまに申し訳ない」は単なる勘違いだったということでしょう。

現場に逃げる

苦しくなると「現場」に逃げる社長も多くいます。

中小企業では、社長は現場にも出るし、経営関係の判断もしなければならないですが、経営が苦しくなってくると、どうしても「現場に出がち」になります。

現場だと、資金繰りの苦しさを「一瞬」忘れられるのですが、先送りにしているだけなので、状況は良くなりません。

決算書に現れる「経営判断の遅れ」のサイン

粗利率が下がる(値上げが遅れた結果)

値上げをすべきなのに、先送りにすると原価とのバランスが崩れるため粗利(売上総利益)率が下がります。

粗利(売上総利益)は「事業のガソリン」とも言われる、事業継続の根幹となる利益ですから、それが下がるのは危険な兆候で、インフレ下では特に顕著です。

人件費率の上昇(適正化の遅れ)

余剰人員の整理・人件費の適正化の遅れ(利益がないのに惰性でベースアップ・ボーナス支給するなど)により、人件費率が上昇します。

自社の適正比率を把握したうえで、定期的にチェックしておかないとすぐに増えるうえに、最も削りにくい費用のため、あとから響いてきます。

固定費の膨張(撤退・整理の遅れ)

不採算な店舗の閉鎖を怠ったり、お付き合いで支払っていて売上に貢献していない会費や広告費などは素早く整理しなければなりません。

不採算な店舗について、「いつか売上が回復するのではないか」、と放置して資金繰りが致命的に悪化する悪循環です。

資金繰りが苦しくなるメカニズム

利益率が悪化するとキャッシュが減る

コスト上昇などにより、利益率が悪化すると、入ってくるお金が減ります。入ってくるお金が減っても支払うお金は減りませんから、資金繰りは苦しくなります。

固定費の負担が重くなる

在庫や仕入れのための支払い、人件費などの固定費の負担が今まで以上に重くなります。

インフレ下では、負担が「重くなる」スピードが段違いに早いですから、気づいた時には支払が不能ということになりかねません。

融資評価も悪くなる

銀行は融資に際して、利益に着目します。

利益から貸したお金を回収するためです。

お金まわりが厳しくなったので融資を受けようにも、対応が後手に回ったばかりに、利益が上がらず、融資も受けられなず、八方塞がりで倒産へ向かいます。

中小企業にとって「縮小=敗北」ではない

規模でなく利益率

見栄が邪魔をして、規模を小さくできない社長は多いですが、規模は中小企業においては問題ではありません。

規模を活かす経営は大企業のものです。

規模を守るよりも、利益率を守ることが至上命題です。

機動性をいかす

中小企業における強みは、機動性です。

図体の大きさでなく、小回りの良さで生きていく。

スピード感のある意思決定で、お金を早く回す経営に注力すべきでしょう。

経営者が今すぐやるべきアクション

利益率を計算する

インフレ下において経営が苦しいのは、利益率の悪化であることが多いですから、利益率をキチンと計算することが必要で

そのうえで、値上げ及びコスト削減を同時に検討すべきです。

早く行動する習慣を

値上げを決断しても、グズグズしていていつまでも実行できない人が多くいます。

値上げ後の価格を反映したメニューができてないから、とか言い訳ばかり。

価格表はすぐに改訂できるように、簡易的なものでも充分です。

忙しさを言い訳にしない

利益率が悪いなかで、さまざまな対策を取るのは、はっきりいってとても疲れます。

疲れるのですが、やらないと資金繰りの苦しさからは脱出できません。

値上げやコスト削減の効果は、すぐには出ないことも多いですから、早め早めにやらないと、今の苦しさは半年前にサボったから、ということです。

まとめ:行動を遅らせることこそ最大のリスク

インフレ下の中小企業経営は、機動性が何よりも重視されます。

値上げを1ヶ月遅らせると、キャッシュフローが大きく乱れますし、回復に1ヶ月以上の期間を要します。

常に利益率を意識して、スピード重視で経営判断し実行していくことでしか、キャッシュフローを守れません。