専門の経理担当者がいない小規模企業では、「記帳」業務を自社で行う(自計化)か、税理士などへ外注するかの選択が迫られます。
記帳とは、会社のお金に関する業務である「経理」のうち、取引を記録・集計する部分です。
自計化と外注のどちらがよいかは、無理なく継続でき、必要な時期に判断に使える数字が出るかによって考えるべきでしょう。

記帳を自分でする場合と外注する場合の違い
小規模企業の記帳方法は、大きく分けると次の3つです。
| 方法 | メリット | デメリット |
| 社長や社内担当者が入力する | 数字が早く出る・外注費を抑えられる・取引内容を反映しやすい | 時間がかかる・知識が必要・入力が滞ることがある |
| 税理士などへ外注する | 社内の作業を減らせる・専門家の確認を受けやすい | 費用がかかる・数字が出るまで時間がかかる場合がある |
| 社内処理と外注を組み合わせる | 得意な作業だけ社内で行える・負担と費用を調整しやすい | 役割分担や資料の受渡しを決める必要がある |
とはいえ、自計化している会社でも、決算整理や税務申告は税理士へ依頼することがありますし、記帳を外注しても、資料の収集や取引内容の説明は会社側で行わなければなりません。
そのため、自計化と外注は完全な二者択一というより、どの範囲まで自社で行い、どこから外部へ任せるかという比率の問題です。
自分で記帳をする「自計化」のメリット、デメリット
自計化のメリットは「早く」記帳データの確認ができることです。
自社で記帳を行うため「記帳が適宜行われていれば」、常に最新の状況を確認でき、迅速な判断と対応へ繋げることも可能です。
外注費を抑えられ、外注先との資料受渡しや取引内容の説明を減らせることもメリットです。
一方、自計化では社内の作業負担と、入力内容の正確性が問題になります。
経理に苦手意識がある社長が、無理をして入力をしても、次第に遅れてしまい、未処理が溜まってしまいがちです。
未処理が溜まると、必要な資料などが散逸し、記憶も曖昧になり、正確性に問題が出やすく、そのための確認という手間も増えてしまいます。
自計化は、「記帳が適宜行われている」ことを前提としてメリットがある仕組みのため、その体制が継続できるかが判断のポイントです。
自分で記帳する場合には、会計ソフトへ入力する基本的な流れや、最低限押さえておくべきルールを理解しておく必要があります。具体的な入力方法については、[小規模事業者の記帳の基本]で解説しています。
記帳を外注するメリット・デメリット
外注のメリットは、資料を適切に受渡すれば、会社側の負担が大幅に軽減されることです。
単純に、入力にかける時間が不要となりますから、社長の本業に集中できる時間が増えます。
また、小規模な企業は、経理が属人化しやすく繁忙期や体調不良などのアクシデントで、止まってしまいがちです。
外注すれば、社内担当者の繁忙や体調不良によって記帳作業が止まるリスクを軽減できます。(ただし、会社側の資料提出が遅れれば、外注先でも処理を進められません。)
そのうえで、税理士への外注であれば、税務的な視点での確認が入る(契約によりますが)ため、税務上の処理を確認しやすいメリットもあります。
しかしながら、デメリットとして
- 資料の受渡から試算表ができるまで一定の期間を要すること
- 税理士事務所では記帳代行を受け付けていないところもあること
- 契約内容(予算・業務範囲など)により、クオリティに差がでること
などがあり、外注先の選定には自社と税理士等との担当範囲を考慮した設計が効果的です。
記帳を外注しても経理を丸投げできるわけではない
外部へ任せられるのは、主に会社から受け取った資料をもとにした仕訳入力と集計(つまり記帳)です。
記帳は経理の一分野であり、記帳によって作成されたデータをどのように利用するか(経営判断、資金繰り判断、融資、納税予想など)は、会社から切り離せません。
自計化で作成したデータでも、顧問税理士のチェックを受けて、上記の相談・打ち合わせを行う経営者の方は多くいます。
外注でも、作成されたデータをどのように利用するかは、経営者が判断しなければなりません。(税理士と、どこまで深い相談になるか、などは契約次第です)
記帳を外注した場合でも、社長が仕訳やすべての勘定科目を理解する必要はありません。ただし、出来上がった試算表から売上・利益・現預金などの推移を確認する必要はあります。具体的な確認方法は、[月次試算表の見方|小規模企業が経営判断に活かすチェックポイント]で解説しています。
自計化と外注のどちらを選ぶべきか
主な観点は以下の通りです
自計化が続けられる体制か
持続可能性を考慮します。
「決算間際に慌ててデータを作る」では、自計化のメリットがあまり無いでしょう。
数字が必要な時期に間に合うか
「翌月10日までに完璧に出来てなければならない」のような高度な記帳は多くの小規模な企業では必要ありません。(決算時には完璧にする必要はありますが)
会社の規模や状況によっては、2~3か月ごとの確認でも足りることがあります。
ただし、融資・納税予想・資金繰り・設備投資などの判断をする際に数字が出ていなければ、記帳の意味が薄れてしまいます。
自計化か外注かにかかわらず、必要な時期に数字が確認できる体制にすることが大切です。
社内のリソースと予算
自計化しても、処理間違いや税理士からのチェック時に指摘事項があまりにも多いなら、判断に使えるデータの水準にありません。
この場合は、難しい入力は外注するなど「少し自計化の比率を下げる」などしてバランスを取ることも可能です。
また、社長が入力スキルはあっても、そもそも時間がないようなケースであれば、外注が有効です。
社内にあるリソースと予算をもとに、自計化・外注のバランスをうまく取ることが、小規模な企業には必要です。
自社処理と外注を組み合わせてもよい
経理のなかには自社が行わなければならないものと、外注できるものがあります。
そのなかで、記帳は外注しやすいですが区切りが難しいのが実態です。
たとえば、給与を記帳するためには、先に給与計算の結果が確定している必要があります。ただし、給与計算は記帳代行とは別業務として扱われることも多いため、どちらが担当するかを確認しておく必要があります。
すると、自社処理と外注は必要に応じて分担しても良いでしょう。
例えば、
- 現金取引だけ自社で入力し、預金やクレジットカード入力は外注する
- 定型的な取引は自社で入力し、判断が難しい処理は税理士に確認する
- 日常の記帳は自社で行い、決算整理と税務申告は税理士へ依頼する
- 日常の記帳は外注し、請求・支払・入金確認は自社で行う
- 給与計算や年末調整などは、それぞれの依頼先と業務範囲を決める
といった分担も考えられます。
創業当初は社長が入力し、取引が増えた段階で一部を外注することもあれば、外注していた経理を社内担当者へ移すこともあります。
一度決めた方法を続けるのではなく、経理の遅れや負担が大きくなった段階で見直せばよいでしょう。
まとめ|大切なのは「誰が入力するか」より数字を使える状態にすること
自計化にも外注にも、それぞれメリットとデメリットがあります。
自計化すれば数字を早く把握しやすくなりますが、社内の負担が重くなり、処理が遅れる場合があります。
外注すれば社内の作業を減らせますが、資料の整理や取引内容の説明、出来上がった数字の確認は必要です。
したがって、重要なのは「自分で経理をしているか」ではありません。
- 必要な資料が整理されている
- 必要な時期までに数字が出る
- 会計・税務上の確認が行われている
- 社長が経営判断に必要な数字を把握できる
という状態になっているかどうかです。
会社の実態に合わない方法を無理に続ける必要はありません。
自計化、外注、一部外注を比較し、社長の時間、会社の規模、取引量、必要とする数字の早さに応じて、無理なく続けられる経理体制を作ることが大切です。
数字を必要な時期に確認できる体制を整えたら、次は原因を把握し、改善策を実行することが必要です。





