社会保険の随時改定は忘れに注意

社会保険の手続きの中には、理解しづらく忘れやすいものがあります。随時改定はその典型です。

社会保険の仕組み

会社が従業員を雇うと、社会保険に加入します。社会保険とは健康保険と厚生年金のことです。

社会保険料は、給料に対してかかりますので、給料に社会保険の率を掛ければ、社会保険料が求められそうなのですが、実際はそうではありません。

給料は毎月変動するので、実際の給料に率を掛けるとなると、毎月の社会保険の事務が煩雑になり過ぎてしまいます。(社会保険料は、会社と従業員が折半して負担するという複雑さがありますので)

そこで、「社会保険を計算するための給料」を従業員ごとに決めるわけです。これを「標準報酬月額」といいます。

標準報酬月額は年に一回変わるが

社会保険の計算をするため用の給料を「標準報酬月額」といい、基本的には年に一度しか変わりません。標準報酬月額は、毎年9月にその年の4〜6月の給料を基礎にして決定されます

(4〜6月に残業をすると損だと言われるのは、この時期の給料をベースに標準報酬月額を決めることに由来します。)

標準報酬月額で社会保険料を計算することによって、社会保険の事務が簡便になります。

また、毎年の標準報酬月額を決める手続を「定時改定」といいますが、時期が決まっていることと、社会保険事務所から案内が来るので、そんなには忘れません。

給料が大きく動いたら注意

標準報酬月額で社会保険料を計算すると、月々の給料の小さな変動は考慮せずに社会保険料を計算できるので、事務負担が少なくて済みます。

ただし、給料が「大きく」変動すると、実際の給料と標準報酬月額のズレが大きくなってしまいます。

そこで、給料が大きく動いたら、標準報酬月額を改定するのが「随時改定」というわけです。

標準報酬月額は、「標準報酬月額表」という表に、段階状に定められています。つまり○円〜△円までは標準報酬月額がいくらというふうに。

この段階を等級といいますが、2等級以上変動すると「大きな変動」です。

なぜ忘れる

まず、社会保険料の計算の仕組みを理解している社長や経理担当者が多くないことがあります。社会保険料の計算事務を簡便にするための手続は、仕組みが複雑で一般には知られていない。

そして、「2等級動いたか」の確認がしづらいです。2等級は、単月で見るのでなく3ヶ月平均で見るので、確認がしづらいのも仕方ありません。

さらに、中小企業では顧問税理士はいても、顧問社労士はいませんから、なかなかそこまで気が回らないのでしょう。(個人的には担当者がしっかり勉強していれば、中小企業に顧問社労士は不要かと思いますが)

給料計算にそこまでのリソースを割けない中小企業では、給料を頻繁に変更しないようにすることと、昇給の時期を定時改定の時期に揃えるなどの工夫が必要でしょう。

まあ、担当者が給料が動いたらマメに確認するのが無難です。