大企業の経理と、中小企業の経理は同じ経理でも違うことが多いです。
会計と税務
よく勘違いされている方が多いのですが、大企業の経理と中小企業の経理は違います。その違いは、「会計」と「税務」の違いにあります。
ややこしいので多少の語弊はありますが単純化すると、
会計→正しい利益を計算するためのもの
税務→公平に税金を計算するためのもの
両者はほぼ同じなのですが、上記の目的が異なるので、部分的には異なることがあります。大筋で同じなのに、部分的に違うので勘違いしてしまいます。
目的が違う
会計は会社の業績評価(儲かっているかなど)を正確に行うことを目的にしており、税務は課税を公平にすることを目的としています。
会計も税務も儲けを計算するという手段では同じなのですが、その目的が違いますので、出てくる儲けの考え方も異なります。
業績評価のために計算される会計上の儲けのことを利益といい、公平な課税のために計算される税務上の儲けのことを所得と言います。
中小企業は税金を意識している
大企業は図体が大きいだけに、利害を受ける人が多くなります。ですので、正確な業績評価が求められます。
その業績評価にしたがって配当が決まったり、株価が決まったりするわけです。
ところが、中小企業はオーナーと社長が同一人物のため配当もあまり考えないし、株価も通常の場合はほとんど意識しません。
大企業も中小企業も税金を払いますが、大企業は税だけを意識するわけではないので業績評価を意識して経理を行い、税金の支払いにおいては業績評価を意識して行っていた経理を修正して税金を計算します。
一方、中小企業は税だけを意識すれば良いので、業績評価をあまり意識せず税を意識して経理を行っていきます。
ですから、多くの中小零細企業では税金を意識した経理(税務会計といいます)を行っているので大企業とは少し異なった経理になるというわけです。
大は小を兼ねない
大きな企業の場合には、規模が大きいだけあって携わる人も、利害関係を受ける人も多いです。規模が大きいので、ザックリと経理していると数字がドンドン不正確になります。
なので、大きな企業の場合には中小の企業よりも厳密な経理(すなわち業績評価)が求められます。厳密な経理をすればするほど、税金を計算する「公平さ」とはかけ離れてきます。決算の際に税金を意識して修正します。
一方、中小の企業の場合には規模感がそこまで大きくなく、そこまで厳密な経理が求められるわけではありません。
(もちろん、ルールは守らないといけませんが)あまりにも厳密に経理することに大きな意味もないため、中小の企業では利益を計算するための「会計」と税金を公平に課すための「税務」がお互いに歩み寄っています。
中小の企業などで、大きな企業の経理職をやっていた人が転職してくることがありますが、その違いに戸惑うことも多いようです。
結局、経理(税務)の現場においては大は小を兼ねないということになってしまいます。