所得税や相続税、贈与税などは「超過累進税率」をとっています。超過累進税率はよく勘違いをしてしまいがちなのですが、税率の境目で調整をしても損も得もしません。
超過累進税率の勘違い
超過累進課税とは、所得税などの税金計算方法の一つです。一般的な給与所得とか、事業所得とか、不動産所得は全部この課税方法です。
所得税以外にも、相続税や贈与税も同じ仕組みです。(税率は異なりますが)
感じの意味からも何となく察せられますが、所得などが増えれば増えるほど税率が上がっていく仕組みです。
この超過累進課税でよくある勘違いとして、「税率の変わり目のあたりの所得金額であれば、所得をわざと減らした方が、税率が低くなるから得である。」といったものがあります。
このような勘違いとして、195万円で税率が変わるから196万円(10%)よりも194万円(5%)のほうが得だというようなものですね。
実際はこのように計算している
パッと見は確かにそのような感じがしますが、超過累進課税の税額計算は面積を計算しているに過ぎませんので、上記の指摘は少し違うと分かります。
上の図は、所得金額が10,000,000円の場合の超過累進課税による税額の計算です。黄色い部分が税金の額です。
実際、計算してみると 10,000,000×33%−1,536,000=1,764,000 になります。
控除している1,536,000円は図の白い部分です。税率が上がっても、白い控除される部分が一定の割合で増えますから、税率が変わりそうな境目であっても損とか得とかはないんですね。速算表の控除額は、図の白い部分の金額を表しています。
誰であっても、195万円以下の部分は5%だけ課税されていますし、195万円超330万円未満の部分は10%だけ課税されています。あとは同じ理屈です。
必ずしも間違いとは言えないが…
先程述べたように、超過累進税率というのは面積計算をしているに過ぎません。
ですから、税率の境目の部分で調整をしてもしなくても損も得もしないことがわかります。
面積が増えれば増えるほど支払う税は大きくなるので税の負担感は大きくなります。
なので、金額そのものは増えていくので…
・儲け(税のかかる対象)が大きくなればなるほど税金も増える
→これは正しい
・税率の境目で調整をしたほうが得
→これは誤り
ということです。
個人的な意見としては、超過累進税率を正確に表現すると
儲けのうち金額の少ない部分には小さな税率で税がかかっていて、儲けのうち金額が中位の部分には中位の税率で税がかかっていて、儲けのうち金額の大きな部分には大きな税率で税がかかっている…というのが一番しっくり来るかと思います。
補足
一定の金額で所得を調整したほうが有利という考え方は、パートで働いている主婦などの住民税や社会保険からきている勘違いだと思われます。
パート労働者などは一定の所得までだと、住民税や社会保険料の負担がないため、それと所得税の話がごちゃ混ぜになったのかもしれません。
たしかに、所得税よりも住民税や社会保険料の負担のほうが大きいため、パート労働者などは所得税よりもそちらを意識しますので。