利益とお金は一致しないのですが、これは「時間のズレ」の問題です。これをうまく利用すれば良い借入なのですが、わからないままだと借入ができません。
「お金」は会社の命づな
会社がつぶれるときって「どんなとき」でしょうか?
イメージしやすいのは、赤字(利益が出ていない状態)がずっと続いているときなのですが、これは正確ではありません。
赤字が続いても、つぶれていない会社はたくさんありますし、赤字が続いただけでは会社はつぶれません。
その証拠に日本の法人の約7割が赤字申告(赤字の状態で税金の申告をすること)だといわれています。
会社がつぶれるのは、「お金」が無くなったときです。お金がまわり続ければ会社はつぶれないのです。
利益とお金は一致しない
利益とお金が一致しないのですが、これは「時間」の問題です。
たとえば、モノを買ってきて、これを売る。買ったお金と売ったお金の「差」が利益です。
しかし、買ったモノがすべて「すぐに」売れるわけではありません。
実際には、売ったお金と「売れたものを」買ったお金の差が利益になるのです。
売ったお金(収益)と買ったお金(費用)は、原則として「紐づかなければ」ならないのです。(「対応」といいます)
時間がたてば売れ残りのモノもすべて売れるとしても、それが「いつ」かはわかりません。
が、利益の計算は、時間を区切らないといけません。
時間を区切らないと、いつまでも収益や費用が「確定」できないからです。
時間を区切らなければ(ものすごく長期のスパンで考えれば)利益とお金は一致するのですが、時間を区切ると(短いスパンで考えると)利益とお金は一致しないのです。
売れ残り以外にも
利益とお金が一致しない理由は、買ったもの作ったものが全てスグに売れるわけではない以外にもあります。
いわゆる掛取引をしている場合です。
代金を現金でスグに受け取れれば良いのですが、月末に〆て翌月末に入金されるということも多いです。すると利益とお金がズレます。
また、高額な設備などを利用している場合も。
高額な設備などは、何年にもわたって利用することができます。(いいかえれば、何年にもわたって収益を生み出します)
支払ったお金を一括で費用にしてしまうと、収益と費用の「紐付き」がおかしくなってしまいます。
ですので、高額な設備などは一括で費用とせず、利用できる期間に渡って徐々に費用にするのです。(これを「減価償却」といいます)
以上のように、「買ったり作ったものがスグに売れない」「掛取引が多い」「減価償却が多い」会社は、利益と手もとにあるお金が大きくズレてしまいます。
利益とお金がズレたとき
利益とお金がズレたとき、そのことに「気づいて」おかなければなりません。
手もとにたくさんお金がある、にもかかわらず実は利益が出ていないということは、(色々なパターンが有るのですが)そのお金は将来の支払などのお金と考えられます。
それに「気づかず」、お金を使ってしまうと、支払ができなくなってしまいます。
お金には色がついていないとよくいわれますが、使ってもよいお金なのかダメなのかが分からなくなるわけです。
また、利益がたくさん出ているにもかかわらず、手もとにお金が無いということもあります。(とくに事業が拡大している時期に多いのです。)
利益に対して法人税等がかかりますから、お金がなくても利益があれば、税金を支払わなければなりません。
いずれも、「気づいて」対処すれば問題なく、「気づかず」対処しなければ問題が生じます。
ズレに気づく方法
利益とお金のズレに気づく最もカンタンな方法は、一定のタイミングごとにどのくらいのお金があるか確認することです。
お金は出たり入ったりと、残高が常に変動します。
ですので、一定のタイミングでどのくらいのお金があるのかを常に確認しておくのです。
支払の終わったタイミング(月末など)で毎月確認するというのが一般的です。
お金が増えてたり減ったりしていればその原因を考えます。
原因を考えることが最も大事です。考えるなかで、どのような入金や出金があったのか、あるいは(これから)あるのかが見えてきます。
さらに精密にすると、利益との関係を確認することで、大きくズレることもないでしょう。
お金を貯める方法は
お金を手に入れるには「利益」をあげないといけません。
会社に貯まるお金は、税金(法人税等)を差し引いたあとの残ったお金です。
(税金を払う前のお金は、利益として確定したわけではありませんから、経費などの支払に使われたりします。)
利益が決まって、それにかかる税金が差し引かれ、残ったお金が会社に貯まります。
税金が利益よりも重くなることはありませんから、利益をあげていけば、「税金は支払わなければならなけれど」、お金は貯まります。
税金を払わないとお金が貯まらない…というのが辛いけれど「真実」です。
「借入」は収益にも経費にもならない
お金を借りても収益にはなりませんし、返しても費用になりません。
お金を借りても返しても、会社の利益には関係ないのです。
なので、(当たり前ですが)お金を借りても、借りたお金に対して税金はかかっていません。(ちなみに借入は税金がかかりませんが、補助金等は税金(法人税等)がかかります。補助金は返さなくてもいいからです)
借りても返しても、税金には関係ないにもかかわらず、会社にとって借入が重要なのは、お金が会社の命綱だからです。
時間を埋める借入は問題なし
利益とお金は、短期的には一致しません。
ですので、利益をあげていても「お金が無い」ことはありますし、将来に利益をあげるため投資などのお金を使っていれば、(表面的には)赤字になります。
このような場合は、お金を借りるしかありませんし、借りたほうが良いでしょう。
利益とお金は「時間」の問題でズレるわけですから、その「時間」を埋めるために借入れるわけです。
たとえば、「代金の入金が遅れるのでその間の資金が必要」「設備を導入して効率的な生産を行う」とかです。
時間がたてば利益とお金が一致することが分かっている状態で、それに見合った金額であれば借入は全く問題がないのです。
赤字の穴埋めは問題あり
赤字が続いていても、(将来的に黒字になり)長期的なスパンで利益があれば、時間が経つと利益とお金は一致します。
赤字が解消される見込みが無いようですと、時間がたっても利益とお金が一致しません。
解消される見込みがない状態で赤字が続いていると、銀行などからお金を借りるのが難しくなります。
借入は、「将来の利益を先取りすること」と同じです。
将来の利益を先取って、時間を味方につけると、利益の増えるスピードも早くなります。
ですが、将来の利益がなければ(赤字が解消される見込みがなければ)、借入はできないということです。(できたとしても返済に困ります)
まずは赤字を解消する方法を考えることが大事です。
まとめ
お金がなくなると会社はつぶれてしまうが、利益とお金は「時間のズレ」のせいで一致しない。
そのため、利益とお金がどのくらいなのか一定のタイミングごとに確認し、ズレに「気づく」必要がある。