経営者が給料について知っておくべきことは、そんなに多くありませんが、しらないと損をする可能性が高いのでしっかり抑えておきたいところです。
給料から天引きされる
給料は、決めた金額をそのまま従業員に払えばいいというものではありません。
一定の金額を天引きして、一定の期日までに納める必要があります。
従業員が各自で納めるとなると、事務が煩雑になるため、給料を支払う側が取り立てを代行しなければならないというわけです。(個人的には不条理と思うのですが、法律で決まっているので仕方ないです…)
社会保険
給料から差し引かれる「健康保険料」「年金保険料」「雇用保険料」をあわせて社会保険料といいます。(雇用保険を含まない考え方もあるようです)
なかには社会保険「税」といったりする考え方もあって税金的に思われる方もいますが、厳密には税金ではありません。
健康保険
病院に行った際に一定額を負担してくれる「健康保険」です。会社によって加入している健康保険組合(健康保険を運営している)が違います。
中小中堅企業では、協会けんぽの加入がほとんどです。
40歳以上になると、介護保険にも加入しなければならなくなるため、保険料が少し増えます。
意外に知られていませんが、死亡した際に「埋葬料」などを支給してくれたりもします。
年金保険
年齢を重ねて働けなくなった際に受け取ることができる年金のための保険料です。
会社が厚生年金に加入していれば、厚生年金保険料を払います。
雇用保険
失業した際に受け取る失業保険などの保険料です。
労働者の雇用を守るため保険ですから、経営者は加入する必要はありません。
労使折半
健康保険と年金保険は、従業員と会社が折半して負担します。
従業員からすれば、自分の給料から天引きされている金額とほぼ同額を会社が負担して、両者を合わせて支払っています。
月末に支払うのですが、口座引落にすることが可能なので、月末に自動的に引き落とされます。
現状ですとだいたい28%(従業員と会社の負担の合計で)くらいで、大きな金額となるため、経営者としては人を雇うと給料以外に「社会保険料」を常に意識しなければなりません。
はじめから目一杯ださないように
社会保険は、会社も負担しなければなりません。
つまり、給料のほかに支払うべきものがあるということで、これを考えずに給料を決めてしまうという失敗が経営初心者は多いです。
給料はいったん決めてしまうと下げるのが困難です。
最初から目一杯、給料を支払ってしまうと社会保険料の負担に苦しむことになります。
ですので、会社は給料だけでなく15%前後の社会保険料も負担すると考えて、給料を考えなければなりません。
任意継続
会社を辞めると、会社が加入していた保険組合から脱退するので、市町村が運営する国民健康保険に加入することになります。
国民健康保険に加入しているのは、「自営業の人」や「個人事業主のもとに勤めている人」などのほかに「無職の人」もいます。
会社勤めだと半分を会社が負担してくれるのですが、上記のような「会社勤め」でない人たちは全て自分で負担しなければなりません。
会社を辞めると、国民健康保険に加入するか、会社勤めのときに加入していた保険に引き続き加入する(任意継続)かを選べます。
ただし、任意継続は会社が負担していた部分も自分で負担しなければなりませんから負担は倍になり、2年間の期間限定です。(再就職すれば、新しい会社の健康保険に加入することになります)
会社勤めのとき、いかに恵まれていたのかを実感する瞬間でもあります。
所得税・住民税
所得税も住民税も、利益に対してかかる税金という点は共通していますが、支払先と期間が異なります。
給料の場合には、給与所得控除額(このくらいの給料の人は、このくらいの金額を税金の対象から外そうというもの)を差し引くのですが、差し引くまえの金額を「給与収入」、差し引いたあとの金額を「給与所得」と呼び分けています。(年末調整のときに迷うところです)
所得税は国に、住民税は住んでいる自治体に支払います。いずれも翌月10日まで。
ただし、所得税は現在進行形で税金をとるので、年末にならないとわからない内容は考慮されていません。保険料をいくら支払ったかとか、住宅ローンがいくら有るかとかです。
年末に、それらを考慮して帳尻を合わせる、つまり取りすぎは返して足らない分は追加でとる、これが年末調整です。
一方、住民税は前年の確定した金額(年末調整済み)をもとに税を計算します。
確定した税金を12分割して、毎月納めるのですが、端数調整で6月だけが少し多くなり、あとは同額です。
源泉徴収義務
国に代わって会社は、従業員に支払った給料から所得税を天引きして、納めなければなりません。
この義務のことを「源泉徴収義務」といいます。
義務を怠ると、ペナルティとして罰金がかかりますから、忘れないように事務をしっかりしなければなりません。
役員はちょっと特殊
会社の役員は、会社のことを決める人です。
もちろん、給料も。
給料を増やせば、会社の利益が減ります。
会社の利益に対してかかる税金(法人税が代表)は、給料を増やせば、減ります。
今年は儲かったけど、税金払うのがイヤなので、俺の給料増やそう…
ということを禁じるために、役員の給料(役員の場合は報酬といいます)は年に1度しか決めることができません。
今年は儲かりそうだから、役員の報酬を増やそう、あるいは業績が厳しいから役員の報酬を減らそうと、事前に決めるわけです。(要は後出しジャンケンはできず、先に決めろということです)
そのような理由から、役員の報酬は毎月同じ金額になります。(年に一回変えられますが)
役員の報酬は、社会保険料や天引きされる所得税などを計算するのはカンタンなのですが、これからの業績をにらみながら決めなければならないという難しさがあります。
まとめ
・社会保険料は従業員と会社が折半する。負担が重いので、計画に織り込むとともに、給料を決める際には慎重に。
・所得税を天引きする源泉徴収義務は会社にある。怠るとペナルティが大変。
・役員の給料(役員報酬)は年に1度しか変えられない。慎重にシュミレートする必要があるが、社会保険なども考慮に入れること。