個人カードの支払いは経費になる?精算・処理の注意点を税理士が解説

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「法人カードがまだ用意できていない」「急ぎの出費でやむなく個人カードを使った」——そんなとき、その支払いは会社の経費として落とせるのでしょうか?本記事では、税務・会計上の考え方と注意点をわかりやすく解説します。

個人カードの支払いでも経費になるのか?

「事業のため」のものであれば、原則OKです。

経費は会社が利益を得るために犠牲になったものですから、たとえ個人名義のカードで支払いをしたとしても、それだけをもって経費とならないということはありません。

カードでなくても、会社の手持ち資金がなかった場合に社長が個人的に立て替えるということもありますので。ただし、証拠はきちんと残しておかないといけません。

経費として認められるための要件

経費は会社の利益に貢献したものです。
売上をあげるには、仕入や家賃などが必要なわけで、これらは利益を得るのに貢献していると言えます。

利益を得るのに貢献したものかどうかは、画一的な判断基準はなく、事業内容・支出内容・会社の規模や状況などを総合的に勘案して判断しますが、一般的に事業をしていなければ支出しなかったものは利益に貢献しているかが微妙ですので、経費となるか疑義があります。

少なくとも

事業関連性(私的ではない)を説明できる
領収書(証憑)などで支出を証明できる

ことは必要だと思われます。

事業をしていなければ支出したか?

利益に貢献しているか?で問題になるのが、私的な支出です。
「お昼ご飯を食べた」が経費になるのかならないのかは、事業に関係するかが問題となり、単にお昼ご飯を食べただけであれば経費になる可能性は低いでしょう。

事業をしていなくても、誰でもお昼ご飯は食べますので。
もちろん、「お昼ご飯を食べた」のが事業に関係するものであれば、経費になりますから、よく例に出る取引先と食事に行ったというのは経費になる可能性は高いです。

社内的にキチンとした精算手続きを踏むこと

社長などが個人カードを使って、経費精算したといった場合、公私混同を避けるため(個人カードの中には私的な支出が多いですから)、キチンとした精算手続きを踏んでおくことも重要です。

会計上きちんと精算が行われていれば、「立替金」勘定を使わなくても「現金」勘定を媒介して処理しても問題はありません。

経費は公私混同を嫌う

経費は利益に貢献していなければならないのですが、利益に貢献しているのかが曖昧なものも多くあります。

私的な支出は経費としては認めらないのは先にも述べたとおりです。

個人のカードで、利益に貢献しているのかが曖昧な支出をした場合、少々面倒が生じます。
利益に貢献しているかも微妙、しかも個人のカードで支払いをしている…となれば、単なる個人的な支出ではないか?と。

もちろん、法人名義のカードであっても個人的な支出がNGであることに変わりはないのですが、個人名義のカードで私的な支出となると、さらに分が悪いのは当然のことでしょう。
個人名義のカードを利用するのは避けたほうが無難でしょう。

クレジット明細のみのケース

経費となるかどうかは、支出が合理的に証明されればよいので、クレジット明細のみでも事業に関係すると立証できれば経費となります。

ただし、クレジット明細は支出の細かな内容がわからないことも多いので、その場合には他の証拠書類も残したほうが良いでしょう。

また、消費税の仕入税額控除を利用するには、クレジット明細のみは不可ですので、領収書(インボイス)を取っておく必要があります。

以上を勘案すると、クレジット明細のみとするのは限定されたケースでしか経費とならないので、領収書とあわせて保存が基本線となるでしょう。

インボイス制度・電子帳簿保存法との関係

なお、インボイス制度や電子帳簿保存法により、領収書や請求書の保存方法についても一定のルールがあります。

基本的には「内容の正確な記録」と「書類の保存」が求められますので、個人カードでの支払いであっても、誰が何のために立て替えたかを明確にし、書類をきちんと保存しておきましょう。

個人のお金と混ぜない(リスクヘッジの観点から)

個人名義のカードで会社関係の支出をする、あるいは逆に法人名義のカードで個人的な支出をするのは、経費になる・ならないという観点だけでなく、やめておくべきでしょう。

それは個人のお金なのか、会社のお金なのかがわからなくなってしまうという問題があるからです。

個人のお金か、会社のお金ががわからないと儲かっているのかどうかもよくわからなくなります。
そして、手元にあるお金を使っていいのか、個人か会社に返さなければならないのかもわからない。

わからないと、対外的には経理が杜撰な会社ということで、不利に扱われることもあるでしょう。

経理担当者も処理に困りますし、記帳を外注している場合にも処理がよくわからなくなります。よくわからない=杜撰ですから、税務調査の際のリスクも上がりますので。