老後資金準備で住宅取得を考える理由|住居費負担と将来リスクを抑える考え方

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老後資金を考えるとき、つい「いくら貯めるか」「投資でどう増やすか」に目が向きがちですが、同じくらい重要なのは「住まい」をどうするかです。

老後も家賃を払い続けるのか、持ち家で住居費を抑えるのかによって、必要になる老後資金は大きく変わります。

そのため、老後資金の準備では、住宅取得を切り離して考えることが難しくなります。

本記事では、住宅取得がなぜ老後資金準備の土台になりやすいのかを整理したうえで、リスクを抑えた住宅戦略の考え方を全体像としてまとめます。

老後資金準備で「住宅取得」が論点になる理由

老後資金の準備は、将来使えるお金をどう確保するかの問題です。
貯蓄や投資で資産を増やすことも大切ですが、出ていくお金を減らしたり、コントロールしたりすることにも同じくらい価値があります。

その意味で、住宅は老後資金と切り離しにくい論点です。
老後も家賃を払い続けるのか、住宅ローンを完済した持ち家で住むのかによって、将来の家計負担は大きく変わるからです。

しかも住宅は、

  • 取得できる時期がある程度限られる
  • いったん取得すると後戻りしづらい
  • ローン返済が長期に及ぶ

という特徴があります。

だからこそ、老後資金の準備では住宅を後回しにせず、早い段階でどう位置づけるかを考えておく必要があります。
以下では、その考え方をできるだけわかりやすく整理します。

住宅取得は“守りの資産形成”の要

住む場所の確保

預貯金には住むことができませんから、いくら預貯金が多くても、住む場所を確保しなければなりません。

大抵の人は、家を持っていない状態からスタートですから、住宅取得を一度は検討します。

一生賃貸でいることも魅力的な生き方ですが、「キャッシュフローが大きい」「かなり多額な預貯金を保有している」「相続などで家を手に入れる予定がある」などの特殊なパターンでない限り、持家のメリットは侮れません。

持家のメリットは?

持ち家の最大のメリットは、住宅費がゼロに近づく、ということです。

もちろん、固定資産税や定期的なメンテナンス費用は必要ですから、完全にゼロというわけにはいきませんが、賃貸に比べれば、かなりゼロに近いといえます。

収入の減る老後には、やはり大きなメリットになります。

また、インフレ傾向のある経済状況では、預貯金の価値は目減りしてしまいますから、インフレ耐性のある現物資産を保有しておくのも、資産を防衛するという観点から有利です。

不動産には流動性のないデメリットがありますが、これを補って余りある強力なメリットです。

老後の住まいをどうするか

高齢になると借りられない問題

老後の住まいをどうするか?は誰もが一度は考える問題です。

高齢になってからは「借りられない」という問題があります。もちろん、これから賃貸市場が変わっていき、そのような状況は終わりを迎えるかもしれませんが、このブログの立場は保守的にリスクヘッジを行うというスタンスなので、そのよう不透明な事情を「あて」にせず、住宅を確保しておいた方がいいというスタンスです。

条件付きで死ぬまで住める

近年の住宅は、大幅に寿命が延びていますからメンテナンスをきちんとすれば50年は住むことが可能です。税の世界では耐用年数という考えがありますが、この耐用年数は物理的なものでなく、あくまで税を計算するうえでの価値を考えているだけで、実際の寿命はもっと長いことが知られています。

ですから、今家を買ったら死ぬまで住めない、ということは基本的にはあり得ません。(よほど老朽化した中古住宅でない限りは)

住宅は、現物としての価値がありますから、いざとなったら売却するなどの選択肢もあります。住み替えたり、リバースモーゲージとしたり。万が一、住み続けられなくなっても、選択肢はありますから、早めに取得するほうが選択肢は多い分、有利でしょう。

税制優遇と相続税対策の観点

住宅は経済波及効果の大きな商品なので、税制優遇が多く設けられています。

住宅取得のために住宅ローンを組めば、その残高の一定比率を所得税等から控除できる住宅ローン控除はその中で最も有名です。

税の優遇を受けながら、資産形成できるわけですから、住宅取得のメリットは大きい。

他にも、固定資産税における新築住宅の減額などの優遇策もあります。新築の住宅で一定のものは、固定資産税額が一定期間減額されます。

住宅取得のために傷んだ、家計を癒すのにはとても良い制度ですね。

自己資金だけで住宅取得が難しければ、親に援助してもらう制度(住宅取得等資金の贈与)なんてのもありますので、もはや政府が持家を後押ししています。

また、遠い未来の話にはなりますが、自身の相続の際には、自宅敷地の相続税評価額を最大で8割引き下げる小規模宅地等の特例という制度もあります。

税制的には賃貸より、持家が有利なのです。

オーバーローンを避ける住宅取得戦略

最大のリスクヘッジはオーバーローン対策

住宅取得をする際に気をつけるべきことは、さまざまなメディアで報じられますが、玉石混交です。

返せる範囲の住宅ローンにする、資産価値の減りにくい立地を選ぶ、などは考えなくてもわかることですが、見落としがちなのはオーバーローン対策です。

つまり、自宅を手放さざるを得なくなった時に自宅の方がローン残高を下回ってしまう状況を避けるべき、ということです。

自宅の価値が住宅ローン残高を下回ると、ローンが残ってしまい、かなり厳しい状況といえます。

対策:土地のみにローンを設定する

このような状況を避けるために、建物は頭金で賄い、土地のみにローンを設定するという方法が有効です。(実際には土地建物両方にローンを設定させる金融機関もありますから、金額的にバランスを取ろうということですが)

会計的には建物は経年とともに価値が減りますが、土地は価値が減りません。

したがって、土地比率を高めればオーバーローンは避けられるわけです。

マンションは比率で

マンションだと、一戸建てのように建物部分と土地部分がわかりづらいので、概ね建物を1/3くらい、土地を2/3くらいと考えるといいでしょう。(金額的にはそうでないのですが、マンションは流動性が高いので、筆者試算だとこのくらいでオッケーです)

終の住処としての自宅ですが、場合によっては手放すこともありますから、オーバーローンにならないという状況を作り出しておくことは、選択肢を広げることですので、ぜひご検討ください。

よくある誤解と持家への不安

「持家=負債」論も否定はできないが…

持家は負債という議論がよくあります。持家は、メンテナンス費用が発生するし、固定資産税などの維持コストが思ったよりかかる。

引越しも気軽にできない。

この考えは正しい面もありますので、この考えを支持する人は持家を持たないのも合理的です。

持家は「将来の住宅費負担」を軽減する

ただ、持家は将来の住宅費負担を軽減します。会計的にいえばキャッシュアウトを軽減するので、資産とも言えます。

長いスパンで考えれば、老後の住宅費負担はバカになりませんから、その安心感は大きいのではないでしょうか。

住み替えもできる

また、持家は売却や住み替えをした場合にも税制優遇があります。一定の居住用不動産を売却すると、その譲渡益から3,000万円を控除できる特例があります。

つまり居住用不動産に含み益があっても殆ど課税されない、ということですね。

まとめ:戦略としての住宅取得

住宅をせっかく取得するなら、税制などをうまく利用しながら、資産形成にも活用する、つまり「使いこなす」と物質的だけでなく精神的な満足感も高まります。

「使いこなす」なかで、相続・老後の住宅費・インフレ対策などのリスクヘッジとしても一定の効用を有しますので、甘言に惑わされず、ご自身のライフスタイルにあった住宅戦略を、考えてみる一助としてください。

共働き世帯の資産形成を整理したい方へ

資産形成は、投資商品を選ぶだけでは決まりません。
住宅取得、教育費、老後資金、保険、税金、相続まで含めて、家計全体で考える必要があります。

このブログでは一般的な考え方を整理していますが、実際の判断は、収入、家族構成、住宅ローン、教育方針、保有資産によって変わります。

個別の状況を前提に整理したい方は、内容に応じて単発相談をご利用ください。

この記事を書いた人
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税理士・佐野匡司
大阪の小さな事務所を運営する現役税理士。
官報合格(試験合格)+実務経験15年以上。
中小企業オーナーや資産形成を志す個人(特に共働き夫婦・パワーカップル)に向けて、
「リスクを抑えたお金の戦略」を発信中。

保険・投資・不動産などの販売とは無縁の独立系の立場から、
中立的で実務に根ざした情報をお届けします。

共働き世帯の資産形成
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