消費税で資金繰り破綻──節税狙いの落とし穴とは

この記事は約4分で読めます。

経営者の中には、消費税をできるだけ払いたくないという意識が強くなりすぎるあまり、不要な設備投資や広告宣伝費を浪費することで、「節税できた」と勘違いしている人が一定数以上おられます。

しかし、消費税は節税という概念に馴染まない性格の税金であるゆえに、そのような付け焼き刃の対応を続けていると、納税資金や運転資金などが消え、資金繰り破綻へ一直線──そんな事例は後を絶ちません。

本記事では、消費税がなぜ中小企業を静かに、しかし確実に追い詰めるのか、現実的な視点から解説します。

消費税は赤字でも納税が必要な「預り金型の税金」

正確には、消費税は「売上にかかる消費税(預かり消費税)」から、「仕入・経費にかかる消費税(仮払消費税)」を差し引いて納税する仕組み。

しかしその理解は困難で、中小企業の経営者にとっての実態としては、「売上に乗った消費税分を確実に持っていかれる」感覚となります。

ですから、厄介なことに「赤字」でも、多くの場合、売上があれば納税義務が発生することになります。

設備投資や出店で消費税を減らすと、逆に資金繰りが苦しくなる

過去にあった事例です。

消費税を払いたくない思いが強すぎて、不急不要の設備投資を行いました。

確かに設備投資すると、仮払い消費税が増えるので、今期の消費税については、ある程度は減ります。

しかし、設備投資は資金繰りに与える影響が甚大なため、時期を慎重に見計らって行うべきもの。

多少の消費税の「節税」と引き換えに、資金繰りに「大きな傷」をつけてしまい、数年後には資金ショートへ陥りました。

設備投資と同様に、新規出店なども資金繰りに同様の「傷」を与えるのですが、なぜか「一発逆転」みたいな都合のいい妄想に取り憑かれて、失敗する事例が後を断ちません。

消費税を納められない本当の理由は『使い込み』

消費税は売上時に「預かった」消費税の一部を支払う仕組みですから、「納税資金がない」ということは理屈上はあり得ないはずです。

「預かった」お金が無いことに対する主な原因は、「使い込んでいる」ためです。

お金に「色」はありませんから、売上金のうち消費税分を切り分けず、会社資金として一緒に使ってしまうのです。

売上金は全て「自分(自社)のお金」と勘違いしてしまうのが問題なのですが、「制度への無理解」や「経理への無関心」が根本原因です。

消費税の納税資金は多額ですから、以上のような理由から、決算時に「そんなお金はない」となると、資金ショートへ一直線です。

簡易課税でも原則課税でも、資金管理が必要な理由

消費税実務では、「原則課税」「簡易課税」の制度があり、納税額に違いが生じます。

さらに原則課税には、仕入や経費を消費税の「区分」ごとに分けたり、インボイスの有無による取扱に違いがあったりします。

「有利不利」や「選択の可否」は、会社の状況によって異なるため、慎重な判断が必要なのですが、経営者が完全に読み切るのは、かなり困難です。

困難であるゆえに、思考停止するか、「大まか」にでも備えるかで、資金繰りの安全度が全く異なる結果となります。

当然、納税資金を大まかでも「積立てて管理」をすることが「唯一の」対応策です。

消費税対策は「粗利の10%積立」が現実解

消費税の標準税率は10%ですから、売上の10%を積み立てれば消費税の納税資金が枯渇することはないはずですが、これは非現実的な金額です。

売上1億1,000万円なら1,000万円を積立るということになってしまいますから。

他の支払いも「きちんとして」となると、かなり無理があります。

消費税は売上のみに依存するわけではありませんが、売上の10%だと資金繰りに支障をきたすので、粗利(売上総利益)の10%程度を「めやす」に積立てていけば良いのではないでしょうか。

これもキツめの設定で、実際の納税額と乖離が生じますが、多少の「余裕」を持たせたほうが現実的です。

語弊はありますが、余ったお金は使えますが、「足りないお金」はどうしようもありません。

消費税の納税額を読み切るのは、税理士であってもデータが揃っていないと困難を極めますから、「読み切る」のでなく、多少ズレても「納税できる体制作り」のほうが遥かに重要です。

消費税滞納で会社が信用を失う理由と再起不能リスク

消費税の滞納は絶対に避けるべきです。

そもそも税金は滞納すべきものではありませんが、消費税は「絶対」です。

それは「預かった」消費税を納めているからで、税務署や銀行も非常に厳しい目を向けます。

「預かった」お金を使い込む会社を信用するか?と考えれば当然です。融資も厳しい現実を突きつけられます。

滞納してしまうということは、資金繰りがかなり厳しい状況となっているので、後手を踏み続けることとなり、再建のチャンスはほぼありません。

資金繰りは、学校のテストと違って一夜漬けは通用しません。普段の行い(=管理)のみです。

まとめ:消費税を軽視した会社が破綻する理由とは

消費税は節税に馴染まない

・節税狙いの投資や新規出店は、資金繰りを苦しくするだけ

・毎月コツコツ、粗利ベースで積み立てる以外に生き残る道はない

・地味な積立管理ができない会社は苦しみ続ける