創業時に人を雇うべきか|家族・友人・外注の使い方を考える

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創業時は人を集めて始めたほうが安心に見えるため、家族や友人と一緒に始めたり、当初から従業員を雇うケースも少なくありません。

創業時に人を抱えると売上より先に固定費が発生し、給与計算・労務手続などの手間が増え、人間関係の負担も生じます。

とは言え、すべてを社長が抱え込むのも無理があるため、外部委託を活用するのも一案です。

この記事では、創業時に人を雇うべきか、家族・友人を巻き込むべきか、代わりに外部委託するなら何がポイントになるか、を整理します。

雇用は固定費になる

人を雇うと毎月の給与と社会保険料が、売上の金額に関わらず発生します。

したがって、人を雇うことは事業にとって「必要売上」「必要利益」を押し上げる結果となります。

人を雇うこと自体は悪くはないのですが、「人を雇う」ありきで計画を立てるのは問題があります。

本来、事業の計画は達成可能な「売上」をもとに「経費→税金→非経費の支出」と順に考えるものであるにも関わらず、「先に経費」が決まると本末転倒となってしまいます。

創業時は特に売上が読みにくい時期であることも、さらに問題を難しくします。

家族・友人は修正しにくい

家族や友人知人は、信頼関係があるぶん、最初の協力は得やすいです。

一方で、人間関係が近いため、役割・給与・責任・経営への裁量が曖昧になりがちです。

事業がうまくいかないと、責任の押し付け合いになりやすく、うまくいっても、お金の分配などで揉めやすいです。

具体的には「誰がどれだけ働いたか」「誰の貢献が大きいか」「給与は妥当か」といったことです。

揉めなくても問題はあり、創業時に必要な人材と、事業が軌道に乗って拡大していくときに必要な人材は異なります。

創業時は柔軟に動いてくれていた人でも、事業が軌道に乗った後に求められる管理・判断・育成の役割に合うとは限りません。

創業時からの「曖昧な」条件のまま家族や友人・知人がいると後からの役割変更がしづらく、当事者だけでなく、周囲の社員にとっても不満の原因になりやすくなります。

共同経営は終わり方が難しい

友人や知人と共同で事業を始める場合、当初は皆が同じ目標に向かって頑張れます。

途中から、出資と労働を混同し、「誰の貢献が大きいのか」で不満を抱えやすくなります。

「誰がお金を出すのか」「誰が働くのか」「誰が決めるのか」が曖昧だと、関係を解消する際にも紛糾します。

共同経営では、始めるときの熱量よりも、後から意見が分かれたときのルールが重要です。
出資割合、役割分担、報酬、意思決定権、撤退時の扱いを曖昧にすると、事業がうまくいっても、うまくいかなくても揉めやすくなります。
共同経営については、別記事でも整理しています。

配偶者は家計リスクと一体化する

配偶者に事業を手伝ってもらうのは一長一短です。

信頼関係や労働に融通が利きやすい側面はあるものの、事業が不振になると、家計全体の不安定につながりやすくなります。

配偶者の扱いは、役員報酬・専従者給与・社会保険などの設計も考えなければなりません。

配偶者は、配偶者は、条件が合えば労働力としても、税務上の整理という面でも助けになることがあります。

一方で、事業が不安定だと家計リスクまで連動してしまうため、慎重な設計が重要です。

人を雇わない=自分でやる、ではない

創業時は小さく始めた方が安全ですが、それは「なんでも社長が一人で抱える」という意味ではありません。

税務・法務・労務・融資・経理フロー・マーケティングなど、自分だけでは難しい領域があります。

事業の仕組みづくりは「知らない」と損することが多いため、小さく始めるなら、すべてを自社内や自分だけで抱え込まず、「外部の力」を活用することがポイントです。

税理士や社労士など、外部の力を活用する際にすべてを顧問契約で揃える必要はありませんが、相談先は確保しておきたいです。

雇用は固定費となりますが、外部の専門家や外注先は必要なときに活用すればよいため、特に創業時には有効です。

創業時だけでなく、事業を続けていくうえでも、人を雇わずに回す設計は資金繰り面で有効なことがあります。人を雇わない経営の考え方については、以下の記事で整理しています。

外注・業務委託は線引が重要

外注・業務委託は使い方によっては有効ですが、契約と線引きを明確にすることが重要です。

業務委託なら、「何を、どこまで、いくらで、誰の責任で行うのか」を明確にすべきでしょう。

実態として雇用に近いにも関わらず外注として扱うと、労務・税務で問題が出る可能性があるからです。

親族や友人・知人に頼む場合は、この線引きが曖昧になりやすく、これらを省略すると後々大きなトラブルのもとになります。

専門家に任せても判断主体は経営者

詳細な手続きや制度運用は専門家に任せてよいのですが、「完全に丸投げ」は危険です。

専門家の助言は、それぞれの専門分野を前提としたものになります。
税理士は税務・会計、社労士は労務、司法書士は登記や会社手続きといった視点が中心になりやすいため、事業全体としてどう判断するかは経営者自身が考える必要があります。

最終的な責任を負うのは経営者ですから、全体の方向性や採算などは経営者自身でも確認するべきです。

最終判断までは外注できないのです。

まとめ

創業時には人を雇うと、売上より先に固定費が発生し事業の難易度が上がってしまいます。

家族や友人知人に頼ると、責任や業務範囲が曖昧になりやすく、後から修正しづらくなります。

また、創業時に必要な人と将来の中核人材は一致しないことも多いです。

とはいえ、小さくはじめることと1人で抱え込むことは違います。

必要な専門性などは外部の力を借りることは有効です。

業務委託や外注は、契約・業務範囲・責任などを曖昧にしないようにしましょう。

最終的な責任や判断まで外注できないから、それらは経営者が主体となるべきです。

創業時に人を雇うか、家族を巻き込むか、外注で補うかによって、必要な売上や利益は大きく変わります。
創業前に、事業計画・資金繰り・組織の作り方を一度整理しておくと、重すぎる形で始めることを避けやすくなります。

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この記事を書いた人
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税理士・佐野匡司
大阪の小さな事務所を運営する現役税理士。
官報合格(試験合格)+実務経験15年以上。
中小企業オーナーや資産形成を志す個人(特に共働き夫婦・パワーカップル)に向けて、
「リスクを抑えたお金の戦略」を発信中。

保険・投資・不動産などの販売とは無縁の独立系の立場から、
中立的で実務に根ざした情報をお届けします。

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