月次決算は、本決算と違って簡略に行われている場合が多いです。月次決算を行う際、見る際に注意すべき事項を紹介します。
月次決算とは
月次決算では、月ごとに簡易的な決算を組みます。(決算とは平たくいえば、数字をまとめること)
ただ、月次決算は税務署に申告をするわけではなく、経営の状況を速報的に知りたいという目的での作成ですから、「簡易」に作られます。
この「簡易」というのが曲者で、速さと正確さはトレードオフなので、本決算では行うことを月次の決算では行っていなかったり、簡易に済ませています。
いくつかの処理を月次で行っていないため月次決算×12=本決算とならないことがあります。次のような点を注意すれば、わりと正確になりますので、可能であれば実施を検討してみるのもよし、難しい場合にはこういった項目で利益がズレるということを頭の片隅においておくだけでも。
棚卸の概算計上
中小・中堅企業では、月次の決算で棚卸しを行うところは少数派です。
もちろん、毎月ごとに棚卸しを行って正確な在庫と売上原価を計算するほうが正確な利益が計算できるのですが、棚卸しを行う煩雑さは大きな負担です。
在庫がある程度大きな金額の場合には、原価率などを用いて棚卸しを概算計上してみるのも良いでしょう。
棚卸の仕訳
月次決算にて、棚卸を計上する際の仕訳のやり方はいくつかあるようですが、一般的なものをご紹介いたします。
(最初の月)…3月決算の会社の場合4月の仕訳
期首商品棚卸高/商品(前期末)
商品/期末商品棚卸高(4月末)
(翌月以降)…3月決算の場合5月〜3月
期末商品棚卸高/商品(4月末)
商品/期末商品棚卸高(5月末)
仕訳のポイントは、最初の月は期首商品を振り返るのですが、翌月以降は前月に期末商品として計上したものを振り替えていきます。(学習簿記をされていた方だと、何となく変な感じがする仕訳ですが、会計ソフトの性格上、このような仕訳をきることになます)
概算棚卸の額
毎月末に棚卸を実施できるのであれば問題ないのですが、毎月実施するのは事務負担の関係から困難な場合もあります。そのような場合には、概算の棚卸高を計上するのも有効です。
概算の棚卸高の求め方も色々な方法があります。原価率を用いたり、在庫の推移から推定したりetc。ですので、自社の特性に応じた方法を選択してみると良いでしょう。(この辺りは、税理士に相談してみてください)
決算前までの月次試算表と、決算を組んだあとの数字が大きく違って面食らったということは無いでしょうか?あまりにも月次試算表と数字がかけ離れていると、心づもりも変わってきますので、ある程度予想通りの数字が欲しいところです。
減価償却費の概算計上
本決算の際に出てくる費用として減価償却費というものがあります。
いわゆる固定資産を購入等すると、一定の期間に渡って利用できる(=収益を生み出す)ことから、購入等に要した金額を一括で支出したときの費用とせず、利用できる期間に配分していくという…
要するに一括で費用にせず、分割で費用にするというものです。
固定資産が大きいため減価償却費が大きい会社の場合には、減価償却費も月次決算に考慮するとより正確になります。
年の減価償却費の1/12を毎月計上すれば、利益の見通しが大きくは変わりません。途中で設備投資をして固定資産を増やしたり、逆に減らしたりしたときは、月々の減価償却費を見直すことになります。
その他大きな経費は月割りで計上
保険料や賞与などは毎月支払うわけではないですが、金額が大きく利益に与えるインパクトが大きいものです。
金額の予測がついているものについては、月割にした金額を月次決算に織り込むとより正確に、決算の着地点が読みやすくなります。
経過勘定を用いるかは慎重に
決算で求める利益と、会社にあるお金は一致しません。
一致しない理由はいくつか有るのですが、会社の利益を計算する期間(事業年度などといいます)と売上や経費の期間が一致しないというものも大きな要因です。
たとえば、倉庫を借りて賃料を6ヶ月分先払い。
決算が3か月後であれば、決算までの3か月分は経費で、残りの3か月分は翌期の経費です。お金は6ヶ月分払っていても、経費になるのは3ヶ月分だからお金の有高と利益がズレるわけです。
このようなお金の出入りと期間のズレは放っておけば(時間の経過とともに)いずれは一致するのですが、利益や税金は一定の期間毎に計算をしなければならないので、ズレのつじつまを合わせる勘定科目を経過勘定項目といいます。(この場合は経費にならない3ヶ月分を前払費用といいます)
決算では経過勘定項目を設定するのですが、月次で設定するかどうかは判断の分かれるところです。細かく設定しすぎると、作成の手間が非常にかかります。手間と速さは両立できないので、よく吟味する必要があるでしょう。
比率で管理したほうが良いもの
試算表や決算書などを見る際には、金額だけで考えず「比率」も考えるべきものもあります。
原価率(売上に対する原価の割合)や、人件費率(売上に対する人件費の割合)などは典型でしょう。絶対的な指標ではありませんが、比率で管理することにより世間よりも原価が高いのか低いのか、人件費が高いのか低いのかという一定の目安になります。
比率で管理することで、金額だけだと気づきにくい変化を気づくこともできます。
比率を見るときの注意点というか使い方ですが、小数点以下第1位か2位くらいまでの細かいところで管理します。特に利益は数字が小さくなる傾向にありますので、細かくしておかないと勘違いしてしまいますので。