決算が近づいてきた際、あるいは翌年の事業見通しを立てる際などに、利益が出そうだと税金をどうするか考える必要があります。
経費を使って利益を減らせば、法人税等も減ります。とはいえ、法人税等は利益の一部にしかかかりませんから、税金が減る以上に「キャッシュ」も減ってしまいます。
とはいえ、黒字であれば何も考えなくてよいわけではありません。利益が増えれば税金も増えるため、納税後に残るキャッシュや、今後必要となる設備投資なども考慮する必要があります。
したがって、状況に応じて判断するほかなく一般的には次の順番で判断することが有効です。
- 会社に必要なキャッシュを残す
- 必要な融資を受けられる決算にする
- その範囲内で節税を考える
この記事では、黒字決算と赤字決算の違いを確認したうえで、節税と手元資金のどちらを優先すべきかを考えます。

決算は基本的に黒字を目指す
会社を運営する源泉は利益ですから、利益が継続的に出ないと存続できません。
もちろん、赤字になることもありますが、赤字が続いたり、単発でも致命的に大きな赤字だと、会社の資金が尽きてしまいます。
資金不足は借入金である程度は補うことが可能ですが、借入金の返済原資は将来の利益です。
そのため、決算や翌年の事業見通しなどは基本的に黒字を目指すべきです。
黒字になると法人税等が発生しますが、税金を支払った後の利益は会社に蓄積されます。
税引後利益を残すこと、それを積み重ねると会社の財務基盤が強くなります。
また、融資にあたり金融機関は貸したお金を、その企業の将来の利益から回収しようと考えています。
「利益の実績」が分厚くあれば、回収可能性が高いため、融資においても有利となります。
黒字決算のメリットとデメリット
黒字決算の主なメリットは、次のとおりです。
- 税引後利益を会社に蓄積することで財務基盤が強くなる
- 事業に採算性があることを示せる
- 金融機関からの評価を得やすい
一方のデメリットは税金でしょう。
税金は会社からキャッシュが流出するため、できるだけ減らしたいと考えるのも自然です。
利益が大きくなれば納税額も増えるため、納税資金を準備していなければ、資金繰りや設備投資に影響を与えることがあります。
しかし、税金を支払うこと自体が、会社にとって損失というわけではありません。
利益以上の法人税等がかかるわけではなく、税金を支払った残りは会社の資金として残ります。
この税引後の利益の蓄積が分厚い会社が、中小企業においては財務基盤が強いとされます。
赤字決算のメリットとデメリット
赤字決算では、利益に対して課される法人税等は原則として発生しません。(ただし、法人住民税の均等割や、利益とは別の仕組みで計算される消費税などは、赤字でも発生することがあります。)
また、一定の要件を満たせば、赤字で生じた欠損金を翌期以降へ繰り越し、将来の利益と相殺できる場合があります。
とはいえ、赤字そのものが望ましいわけではありません。
赤字で生じた欠損金が「意味」を持つのは将来の利益と相殺できるからであって、将来に利益が見込めないなら無価値です。
また、赤字が続けば、多くの場合は会社のキャッシュも減少します。キャッシュが枯渇すれば、事業にかかる支払が不能となり、事業継続が困難になります。
そして、赤字が続いたためキャッシュが枯渇したときに、金融機関からの融資で対応したいと思っても、(金融機関から見ると)回収できる見込みが薄いため、融資はかなり難しくなります。
黒字か赤字かより「何を優先するか」が重要
黒字決算と赤字決算のどちらが有利かは、状況次第となるため税金だけでは決められません。
小規模企業では、基本的に次の順番で優先順位を考える必要があります。
1.最優先は会社にキャッシュを残すこと
キャッシュは、企業の生命線のため、まずはキャッシュを残すことが最優先です。
節税対策として経費を使う、設備などの投資を行う、などをしても実行後のキャッシュに問題がないか、どのくらい残るのかを常に考える必要があります。
どのくらいのキャッシュを、持つべきかは別の記事にも記載がありますが、月商と同じくらいのキャッシュがひとつの目安といえます。
また、キャッシュと黒字は必ずしも相関関係にないことにも注意が必要です。
帳簿上は黒字でも、売掛金や在庫が増えていれば、手元のキャッシュが不足することがあります。
また、借入金の元本返済は経費にならないため、利益が出ていても返済によってキャッシュが減る場合があります。
「キャッシュを残すために」黒字にする、という考えが基本です。
2.融資が必要なら利益を残す
金融機関は、その会社の「将来の利益」から回収しようと考えます。
将来の利益は確実には予想できませんから、実績が重要視されます。
そのため、融資の審査で「決算書」を提出するのですが、赤字になると会社に蓄積された利益が減り、返済原資となる利益も示せないため、融資審査では不利になりやすくなります。
赤字でなくても利益が「薄い」のもネガティブです。利益が薄い=返済能力が低い、と評価される可能性があるためです。
「税金は払いたくないが、融資は受けたい」というのは困難です。
融資が必要な会社では、一定の利益を計上して税金を支払い、返済能力を示すことも決算対策(融資対策)の一つです。
3.節税はキャッシュと融資を確認した後に考える
節税の実行は、会社に必要なキャッシュが確保できるか、融資への影響を考慮する必要があります。
経費を使えば税金は減りますが、税金以上にキャッシュが減ります。
たとえば、実効税率を30%と仮定して、決算前に100万円の経費を使った場合を考えます。(減価償却資産では減価償却が必要となり支出額と経費化できる金額が一致しないケースがあるため、ここでは減価償却資産以外で考えています)
100万円を使うことで税金は約30万円減りますが、会社からは100万円のキャッシュが出ていきます。結果として、節税による実質的なキャッシュの減少額は約70万円となります。
100万円を使って30万円の税金を減らしたからといって、30万円得をしたわけではありません。
税負担を考慮して実質70万円で100万円分のサービス等を受益した、というのが実態に近いでしょう。
ポイントはこの100万円の支出が、「事業に必要な支出」であれば問題ありませんが、税金を減らすことだけが目的なら、会社の資金を減らしただけになります。
なお、消費税は利益に対してかかる税金ではないため、法人税等とは分けて考える必要があります。消費税を減らす目的で不要な設備投資などを行えば、消費税の納税額以上にキャッシュが流出し、資金繰りを悪化させることがあります。詳しくは「消費税で資金繰り破綻|節税狙いの落とし穴とは」で解説しています。
節税策を実行する際には、
・会社に十分なキャッシュが確保できているか
・融資への影響は問題ないか
を考慮したうえで
「その支出が将来の売上や業務効率の改善」につながるかも考えて実行すべきでしょう。
赤字決算が例外的に許容されるケース
基本は黒字決算ですが、(一時的な)赤字が許容される場合もあります。
たとえば次のような要件を満たした場合です。
- 赤字になっても十分なキャッシュが残る
- 当面は追加融資を必要としない
- 来期以降に利益を取り戻せる合理的な見込みがある
- 赤字の原因が一時的なものだと説明できる
たとえば、将来の売上獲得を目的として大規模な広告宣伝を行い、その結果として一時的に赤字になる場合があります。
広告宣伝の効果は確実ではなく、効果が現れる時期も読み切れません。そのため、十分なキャッシュがあり、広告の効果が想定を下回っても事業を継続できることが前提です。
赤字にすること自体が戦略なのではなく、必要な先行支出を行った結果として生じる一時的な赤字を、資金余力の範囲で受け入れるという判断です。
決算予測がなければ判断できない
節税するか、利益を残すか、赤字を許容するかは、決算の着地点を予測しなければ判断できません。
少なくとも、決算前には次の項目を確認します。
- 決算までの売上と利益の見込み
- 法人税等の概算額
- 消費税の納税見込み
- 借入金の返済予定
- 設備投資や賞与などの支出予定
- 決算・納税後に残る現預金
決算直前になって税額を知り、慌てて経費を使っても、適切な判断はできません。
決算の2~3か月前には予測を作り、利益、税金、キャッシュ、融資への影響を並べて検討する必要があります。
予測するためには、日頃から経理を行い、試算表を確認できる状態にしておくことも欠かせません。
まとめ
決算は基本的に黒字を目指すべきです。
黒字によって税引後利益を会社に蓄積し、財務基盤を安定させ、金融機関からの信用を積み重ねることが、企業の「継続性」を高めます。
ただし、利益とキャッシュは必ずしも一致しないため、キャッシュとの関係も確認したうえでの判断が必要です。
判断の優先順位は、次のようになります。
- 会社に必要なキャッシュを残す
- 必要な融資を受けられる利益を確保する
- その範囲内で節税を行う
赤字が許容されるのは、十分なキャッシュがあり、追加融資が不要で、来期以降に利益を取り戻せる見込みがある場合に限るべきでしょう。
どの選択が適切かは、会社の資金状況や将来計画によって異なります。
税金だけを見て決めるのではなく、決算予測を行い、納税後にいくらキャッシュが残るかまで確認したうえで判断することが重要です。





