経営者が会計や税金について最低限知っておかなければならないこと

経営者の方(特にこれから商売を始めようとする人)が最低限知っておかなければならないことを紹介します。

A0055 000859

簿記の知識は必須ではないけれど

会計をまとめるシステムのことを簿記といいますが、経営者にとって簿記の知識は必須とまでは言わないけれどできるに越したことはないでしょう。

経営に攻めと守りが有るとして、攻めが営業などで仕事をとってきて売上を上げていくこと、守りが経理などを通じて会社の資金繰りを安定させて支払いをきっちりと行っていくことでしょう。

簿記の知識は守りを固くしてくれるので有るに越したことはないでしょうが、攻めが全くできていないとかであれば優先順位は低くなるでしょう。攻めと守りはバランスが大事なので、どちらが欠けてもいけません。 

ただ、簿記の知識があれば会社の状況(儲かっているのか、お金が回っているのか、お金がどのように生み出されているのか…などなど)をより正しく認識できるので、攻めの手を考える際にも役立ちます。

簿記3級くらいの知識があれば言うことなし

簿記の知識はあった方が良いのですが、具体的にどのくらいの知識が目安になるのでしょうか?簿記の根本的な仕組みを理解するのであれば簿記3級の知識があれば十分でしょう。

簿記3級ですが、初心者の方が資格を取得するとなると、独学で1日1時間ほど勉強するとして1ヶ月程度で取得が可能と言われています。書店に行けば、テキスト類も充実していますので自分にあったテキストを1冊やり込めば、相当の知識はつきます。(ちょっと値ははりますが、DVDの講義付きの書籍もあります)

経営者の方は、簿記3級の資格取得を目的とされている訳ではないので、時間はもう少し節約出来るでしょう。また、起業をする際にはいろいろと手間のかかることもありますので、起業しようと構想している段階で少し勉強しておくというのは非常に有効だと思います。

税理士に教えてもらうという手もある

経営に必要な3要素として、ヒト・モノ・カネとよく言われます。中でも一番重要なカネの流れが分かれば、連動してヒト・モノの流れも見えてきます。ですから、カネの流れをまず理解することが経営に必要だとなります。

とはいえ、経理関係の数字が羅列された資料には拒否感のある人も多いのが事実です。 

そういった場合には、税理士など会社の状況を外部から定期的に見てくれる専門家に依頼して意見を聞くのも良いでしょう。

他人の目を通して、自分の会社がどのように見えるのか?というのは、いろんな発見や気づきがあって有意義です。 

簿記の知識は必須ではないけれど必ず知っておかなければいけないこと

簿記の知識は必須ではありませんが、経営を行うにあたって知っておかなければ非常に困ることがいくつか有るのも事実です。とりわけ税金に絡む部分は知っておかないと大幅に損をすることがあるので、最低限の部分を紹介します。

法人税等は「利益」に対してかかる

会社が支払う税金のうち大きなものは「法人税等」と「消費税等」。このうち法人税等は会社の「利益」にたいして課税されます。

税金は利益に対してかかる

利益というのは会社が物を売ったりサービスを提供することで得た売上(収益)から、それらを獲得するために必要になった経費(費用)を差し引いたものです。

利益が大きければ大きいほど税金も大きくなるという仕組みです。利益をしっかりとコントロールしなければ、税金を払うために苦しまなければなりません。

「利益」と「お金」は別のもの

利益とお金は別のもの

手元にあるお金や通帳の残高が増えていくと、儲かっている気がします。

しかしながら、「利益」と「お金」は必ずしも一致しません。むしろ、殆どの場合は一致しません。

利益は「期間」ごとに計算をしていく(この期間を事業年度といいます)のですが、この期間と売上や費用が一致しないことも有るためです。

商品を売る場合、現金販売であれば売上たときと入金が一致しますが、掛販売だと売上たときと入金のタイミングがずれてしまいます。

仕入を無視して、売上=利益で考えてみると…
今期に1,000円売って、代金の回収は翌期だとすると
今期の利益は1,000円ですが、手元にあるお金はゼロ。
翌期は利益はゼロですが、手元にあるお金は1,000円。

ものすごく簡単なモデルでもこのようにズレが生じます。実際には、売上のような収益だけでなく経費など様々なものが「ズレる」ので、利益とお金は一致しません。

法人税等は利益に対して課税されるので、手元にお金がなくてもたくさんの税金が必要な場合もあるでしょう。ですから、利益だけでなくお金もしっかりと管理しなければなりません。

利益が出ていなくても払わないといけない税金も有る

法人税等は所得(税金を計算する上での儲け)に対して課税されますので、赤字であれば大抵の場合、法人税等は納めなくても良いことになります。

ただし、法人住民税の「均等割」と呼ばれる税金納付しなければなりません。これらは、利益ではなく、法人が利用した行政サービスの利用料といった名目の税金ですので、必ず納めなければなりません。(納めなければ脱税ということになります)

均等割は、地方自治体に納付をします。大阪の場合ですと「市」と「府」に納付をすることになります。会社の規模によって、均等割額は異なりますが、最低ラインは市に50,000円、府に20,000円納付をしなければなりません。

(均等割の金額は、自治体によって異なります。兵庫県などは大阪に比べると少し高いようです。また、自治体の財政状況によっても変わる可能性があります。)

従って、会社を維持する為の最低限のコストとして毎年70,000円の均等割は納付しなければならないと覚えておいて下さい。

消費税等も利益と関係なく支払う

消費税等は税を負担する人と支払う人が違います。平たくいえば、会社はお客さんなどから消費税を預かっているだけで、支払いだけをします。

消費税等は売上に応じて支払うという勘違いもよく見かけます。

原則的には、消費税はお客さんにモノを売ったりサービスを提供した際に受け取った売上に含まれている消費税(預かり消費税)と
自社がモノを買ったりサービスの提供を受けたりした際に支払った経費等に含まれている消費税(支払い消費税)の「差額」を支払います。

消費税の仕組み

32,400円のモノを売ると預かり消費税は2,400円。
同じく21,600円の経費を支払っていると支払い消費税は1,600円。
差額(2,400−1,600)の800円を支払うという仕組みです。

消費税は、単に預かったものから自社が負担した消費税を差し引いて支払うだけなので、利益にたいして課税されているわけではありません。

ですので、節税(法律に認められた範囲で税金を安くする行為)はできません。消費税の納税資金がないということは、預かった消費税を使い込んでいるということできついお仕置きがあります。

人を雇うと源泉所得税を忘れない

サラリーマンやアルバイトをしていると、給料明細を受け取ります。

給料明細では、様々な金額が差し引かれて給料が支払われることがわかります。

会社の経理事務として気をつけないといけないのは、源泉所得税です。

従業員は、給料から所得税を支払うのですが、国の財政・資金繰りを楽にするために毎月の給料から一定の所得税を強制的に天引きします。

源泉徴収の仕組み
この天引き制度を源泉徴収といい、従業員を雇うと、会社にはもれなく源泉徴収「義務」が発生します。

平たくいえば、サラリーマンやアルバイトをしているときは会社が自分の給料から天引きしていたのと同じく、自分が会社を始めたら従業員の給料から所得税を天引きしなければならないのです。

天引きしないと、税務署からペナルティが課せられます。知らなかったでは済まされません。きつく言えば知らない事自体が、罪なわけです。

天引きした源泉所得税は翌月10日までに納付書(支払いのための書類)を書いて銀行などの金融機関を通じて納付(支払い)します。納付が遅れると、罰金がかかってしまいますので、必ず期日までに納付しましょう。

「払えない」はありえない

利益に対してかかる法人税等は、利益がないと支払わなくても良いです。利益はある程度コントロールできる(いわゆる節税)ます。

一方で、消費税等や源泉所得税は利益に足してかかっているわけではなく、単に預かっているだけです。消費税であればお客さんから、源泉所得税であれば従業員等から。

預かっているだけのものなので、「払えない」ということは理屈上「ありえない」です。払えないということは払う気がないのか、盗んでいると考えられます。

しかしながら、悪意がなくても経理がずさんだと預かっているお金なのか、自分のお金かがわからなくなってしまうことがあります。

そうであっても、税務署としては他に真面目に払っている会社がいる以上取り立てないわけには行きません。

消費税等や源泉所得税は金額が大きくなりやすいので、キッチリと管理しておかないと致命傷になりかねません。