小売業などの商品アイテム数が多い業種の場合には決算における棚卸しに係る事務が大変なため「売価還元法」が用いられます。
商品アイテム数が多い(多品種)のときは…
商品アイテム数が多い(多品種の製品を扱う)場合には、実務上、「売価還元法」を用いる事業者が多いです。
売価還元法とは、期末棚卸資産の評価方法の一種です。
本来、棚卸資産は「いつ・どれだけ・いくらで」仕入れて、それが「いつ・どれだけ・いくらで」売れて、「いつ・どれだけ・いくらで」仕入れた商品が期末に残っているのかを厳密に記録しなければいけません。
が、百貨店やスーパーマーケットのような多品種の商品を取扱う業種の場合には棚卸しの事務が非常に困難なので、簡便的に、期末商品の売価に一定の原価率を乗じて期末棚卸資産を算定するという方法です。(要するに品数が多くて大変なので、値札などからわかる在庫の売値に原価率をかけて簡便的に期末在庫を算定するってことですね。)
法人税においては、期末棚卸資産の評価方法を選定しなければ最終仕入原価法になりますので、「売価還元法」を用いる場合にはきちんと所定の期限までに届け出ておく必要があります。(評価方法を変更しようとする場合には「変更承認申請書」を変更しようとする事業年度開始の日の前日までに(要は前の事業年度の終わりまでに)税務署に提出しなければなりません・またやたらめったら評価方法を変更することもできませんので注意が必要です)
評価単位は…
売価還元法の適用区分(評価単位)はその種類の著しく異なるものを除き、通常の差益の率がおおむね同じ棚卸資産は、ひとまとめに評価することができます。(法人税法基本通達5−2−5)
なんだかややこしいけど、例えば衣料品店であれば、原価率が著しく異ならない限りは売り場ごとに評価してもいいよって事ですね。
ってことは原価率が異なるのであれば、ひとまとめに評価ができないということでもありまして。衣料品、例えば、オーダーメイドのスーツなどであればどう考えても原価率が違うので仕掛品が必要になります。原価計算をしていない企業の場合、製品売価の何割として評価をする場合には売価還元法に該当する(法人税法基本通達5−2−4)という通達もあります。
まぁ、つまり原価計算しないで期末棚卸を倍加の何割かと見積もる場合には売価還元法なので届け出が必要だということでもあります。
もちろん正確な棚卸しは大事…
取り扱い品種の多い業種においては正確な棚卸しが重要であることは疑いようがありませんが、よくよく言われることとしてリストを作成したりetc様々な事前準備が必要になります。
ぶっちゃけ面倒くさいですね。(だからと言ってサボれませんが…)(余談ですが、棚卸しの細かさって担当者ごとの性格が如実に出ますよね。)
ただ、事業の実態を鑑みて、弊害がなさそうであれば(なかなか素人では判断がつきませんが…)最終仕入原価法のように計算が簡単な方法にしておくほうが効率的と言えます。