意外と知られていない海外相続リスク

海外にある財産を相続した場合、現地の法令に従って相続手続きをおこなう場合もあり、そのリスクは決して小さなものとはいえません。

海外にある財産を相続した
海外にある財産を取得すると、一般的には日本の相続税と現地の相続税に相当する税金がかかることになります。

海外にある財産に、日本の相続税がかかるかどうかは「納税義務」の判定によりますが、近年の法改正により大抵の場合課税されます。現地の相続税に相当する税金が課税されるかという問題も、国によるのでケースバイケースです。国によっては相続税のない国もありますし、相続税に相当する税金があっても日本の相続税としくみが大きく異なるので、手続は煩雑です。

「海外にある財産が日本の課税当局にバレるのか?」と思われる方もいるかもしれませんが、当局は国際間の課税逃れを捕まえようと注目しているので、バレます。(海外財産の調書提出制度が創設)

手続きが煩雑になる
海外にある財産を相続した場合に、一般的には、その国の法律の適用を受けることになります。ネックになるのが、「プロベート」という手続です。

アメリカなどで採用されている手続で、ザックリ言えば、死んだ人の財産を裁判所の監督のもと管理し、精算手続きや納税手続を終えた残りを遺族などに分配するというものです。 (日本の相続税に詳しい人だと、相続財産法人のイメージに近いかもしれません。)

プロベートは手間もかかりますが、時間もかかります。(6ヶ月〜3年位)日本で相続実務をしていますと、「早く手続きを終えたい」というご家族の方は多いです。精神的な負担もあるので、あまり日本にはなじまない制度かもしれません。当然の事ながら、海外の相続に精通された専門家に相談することになりますので、費用もその分だけかかります。(プロベートをする場合、現地の専門家も必要ですので、お願いする専門家を探す手間を考えると ゾッとします)

※ジョイント口座による解決策もあるのですが、誰の入出金かを合理的に説明できるよう準備する必要があり、やはり煩雑です。
※プロベートを日本語訳すると「検認」とされることが多いようです。日本の相続手続きにも「検認」というものがありますが、内容は全く違います。 

日本の相続税も
日本の相続税を計算する場合のリスクもあります。日本では、土地に相続税を課する場合、「路線価」方式と呼ばれる方法で課税することが多いです。しかし、海外には「路線価」 がありません。

「どのような価格がふさわしいのか?」 なんとも難しい問題です。

相続税を課する際の、合理的な金額が立証できるよう証拠集めするため、日本国内だけの財産での相続よりも手間も時間もかかる上に、リスクも大きくなります。さらに税理士などへの専門家報酬も増えます。 

海外財産を活用して相続税を節税するというスキームを考えている方や、実際に海外に財産をお持ちの方は、最終的にどのように処分するのかまで考えておく必要があります。節税のため海外に財産を取得したけれど、手続の不備などで財産を取得できなくなったとかであれば、何のために海外に財産を持っているのかわからなくなりますので。