業績が悪いので役員報酬の引下げを検討する場合がありますが…
役員報酬の金額を決められるのは年に一度だけ
役員報酬の金額を決めることができるのは決算が終わったタイミングだけですので、来期の業績見通しが悪いけれども「利益を出したい」とか「赤字幅を小さくしたい」といった場合には「役員報酬の引下げ」を検討することになります。
役員報酬は、事業年度の途中(つまり「期中」)での変更は原則として認められていませんが、著しく業績悪化したような場合には減額が認められます。ただ、セオリーとして役員報酬は変更できないものとして来期の業績見通しに立った適正額とするべきではあります。
極端に下げても…
社長の年齢が年金を受給できるような年齢の場合には、(年金などの「役員報酬以外の収入」で補填できるので)役員報酬を減らしても問題がないように見えます。
中には極端な方もいて、業績が悪いので役員報酬を「0(ゼロ)」にするということを言い出す人もいますが、見た目上の数字は黒字になるかもしれませんが、効果は薄いと思われます。創業当初の苦しい時期ならば仕方がないと言えるでしょうが、それなりに業歴のある会社が役員報酬をゼロにするのは不自然です。
例えば、社会保険料の問題があります。役員報酬を仮にゼロとした場合、社会保険の自己負担部分はどのように支払うのでしょうか?結局、手出しということになりますし、場合によっては社会保険事務所側から説明を求められたりと面倒もあるでしょう。(社会保険が支払える程度の役員報酬は支払ったほうが良いということになります)
融資的な効果はどうでしょう?役員報酬をゼロにしたことにより業績が黒字になったからと言って、融資が通りやすくなるかといえばそうでもないでしょう。しっかりした融資担当者ならば、中小・中堅企業では業績見通しが明るいと役員報酬が増額され、業績見通しが暗いと役員報酬が減額されるということを認識しています。役員報酬が引下げられて黒字になったとしても、それがプラスに働くかは意味が無いとは言いませんが大きなインパクトもないでしょう。
社長の年齢が比較的高齢で、このまま退任してしまう場合にも問題が残りそうです。役員退職金は、退任前の役員報酬に功績倍率を乗じて求めますから、役員報酬を極端に引き下げると経費と認められる部分が減ってしまいます。退職金は金額が大きいだけに、見通しを誤ってしまうと大変なことになります。
常識的に考えて不自然なことはしない
結局のところ、創業当初のお金が苦しくて同しようもない時期を例外として、役員報酬を「0(ゼロ)」にするというのは常識的に考えればおかしいと思われます。
そして、常識的に考えておかしいから関係する役所や機関などは、説明を求めたり、役員報酬をゼロにしているという要素を加味して融資の可否決定をしたりとなってきます。
短絡的に、極端なことをしてもデメリットのほうが大きくてメリットが少ないというごく自然な結論に至るわけです。