話題の個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の基本をおさらい

「確定拠出年金という言葉は耳にしたことがあるけど、何のことかよくわからない」という人は多いようです。はじめての人向けに、分かりやすく解説してみました。

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確定拠出年金とは?

 日本における年金の制度では、国民は全員、何らかの年金に加入しなければなりません。しかし、職業によって加入する年金制度は様々であり、老後の生活保障という観点からは給付額が十分とは言えない面もあります。

 そこで、老後を迎える前に(つまり現役で働いている時代に)、強制的に加入する年金制度とは別に、自分自身でお金を出して準備しておく制度のひとつが「確定拠出年金」です。いわゆる「上乗せ」年金であり、加入は任意です。

 

確定拠出年金は「2種類」ある

 確定拠出年金は「Defined Contribution Plan」略してDCとも言います。このDCは「個人型DC」と「企業型DC」の2種類あるのですが、最近流行りの「老後の資産づくり」とか「節税に有利」とか言われているのは「個人型DC(※)」です。

 「企業型DC」は、企業主導の退職金制度の一種で、ご自身がお勤めの会社が企業型DCを導入していない限りはあまり関係のない制度です。

 一方、「個人型DC」は企業が主導してくれませんので、自分自身(個人)が主体となって(と言ってもそこまで面倒なことはありませんが)運用を考えていなかければなりません。

 

※2016年9月に個人型DCの愛称が「individual-type Defined Contribution pension plan」の頭文字を取って「iDeCo(イデコ)」に決定されました。現状は、「個人型確定拠出年金」「個人型DC」「個人型401k」と呼ばれていますが、「iDeCo(イデコ)」に統一していきたいということでしょう。以下、「iDeCo(イデコ)」と表記します。

 

個人が主体となるって?

 国民年金や厚生年金などの強制加入の年金は、年金保険料というかたちで掛金を支払い、これを運用機関が「国内外の株式や債券などに投資」をして運用し、運用した成果が我々の年金となって返ってくるという仕組みです。

 一方、「iDeCo(イデコ)」は強制的に掛金が徴収されるわけではないので、自分自身で運用機関を選択し、どのような株式や債券などに投資をするのか決めなければなりません。

また、「運用した成果」の受取り方も一時金、年金、一時金と年金の混合型とあるものから選び、受取開始年齢を決める必要があります。

 

 

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「iDeCo(イデコ)」はなぜ有利なのか?

 「iDeCo(イデコ)」は、政府が推進している制度なので、税務的なメリットが豊富です。

 

①運用益が非課税

 「iDeCo(イデコ)」は自分自身でお金を出して運用した成果が年金となる仕組みです。

 運用=投資ですから、本来はその投資によって得た利益に対して税金が課されるのですが、「iDeCo(イデコ)」の場合には利益に対して税金がかかりません。(つまり運用益が非課税)税金がかからない分だけ、資金的には得だということです。

 例えば、現在の税制では株の値上がり益には20.315%の税金がかかりますので、資金的には少なくとも20.315%分だけ有利だといえます。

 

②掛金が全額所得控除の対象

 所得税の仕組みはザックリと言えば、

…(所得-所得控除)×超過累進税率

となっています。

 「iDeCo(イデコ)」も国民年金や厚生年金と同じように、自身が支出した掛金は「全額」が所得控除の対象となるのです。生命保険会社などが提供している商品で個人年金というものがありますが、所得控除できる金額は僅か4万円であることを考えるとその差は歴然です。

 所得税の税率が10%の人は、「掛金×10%」だけ税金を得しています。なかなか率が10%とかいう金融商品が無いことを考えると、いかに優遇されているかがわかります。

 

③受給時に退職所得控除など

 退職金にかかる税金は、給料や賞与よりも相当優遇されています。「iDeCo(イデコ)」における、運用したお金の受取時にも同様の恩恵があります。受取り方を工夫することで、退職金と同様の税務メリットを享受することも可能なのです。

 年金として受け取るときも(退職所得控除よりもメリットは薄いですが)公的年金等控除の対象となるという税制上のメリットはあります。

 あまり考えたくないことですが、「iDeCo(イデコ)」利用者が死亡した場合に相続税が課税されることがあります。(死亡退職金が課税されるのと同じ理屈です。)この際に、死亡退職金と同じように一定の非課税金額枠がありますので相続税でも優遇されています。

 

 

一定の条件を満たせば、ほぼ誰でも入れる

 「iDeCo(イデコ)」は上乗せ年金であるため、強制的に加入する年金制度において手厚く保護されているような人たちは加入できませんでした。しかし、社会状況の変化などから老後の資産づくりが重要となってきたため、2017年以降は一定要件を満たせばほとんどの人が加入できることとなります。

 

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始めるには?

 「iDeCo(イデコ)」を始めるには、運営管理機関を選び口座を開設します。投資をする場合には口座を開かないといけませんが、「iDeCo(イデコ)」の場合の口座を開く金融機関のことを運営管理機関といいます。

 運営管理機関によって、①商品の種類と品揃え②口座管理費用③信託報酬が異なります。

 口座管理費用は口座を管理するための手数料で、信託報酬は商品の運用等にかかる手数料です。ザックリと言えば前者が加入後ほぼ定額なのに対して、後者は資産額が増えるほど負担額も増える傾向にあります。

 一般的には、信託報酬を重視してなるべく低コストな運営管理機関(金融機関)を選ぶのがセオリーと言われています。

 総合的に見て、SBI証券・スルガ銀行・野村證券・りそな銀行あたりが現状ではオススメの金融機関としてあげられることが多いです。今後、「iDeCo(イデコ)」の普及が進むに従って金融機関もサービスを充実させるでしょうから、その動向には注目したいところです。

 

運用はどうする?

 投資の初心者が運用を考えるのは難しいものがありますので、企業型DCでは、事業主が社員へ投資教育することを義務付けられています。一方、個人型DCではそのような機会が無いので、自分で勉強しなければなりません。

 そもそも、投資への考え方は人それぞれで、10人いれば10人とも投資への考え方が異なるので正解というものはありません。しかし、「iDeCo(イデコ)」の特徴がわかっていれば最低限のセオリーは見えてきます。

 特徴としては、①老後の資産づくりであること②投資の利益は非課税であること③短期投資ではなく長期投資であること

従って、「iDeCo(イデコ)」以外の資産も含めてトータルで投資を考えるべきで、短期的な利益でなく長期的に大きな利益が出そうなものが良いということになります。また、金融機関の選択とも重複しますが、長期的な投資であるためコストはなるべく低いものを選ぶべきです。

 これらを踏まえて、様々な書籍が出ていますから幾つかを読んで勉強すればよいのではないでしょうか。

 

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注意すべき点は?

 「iDeCo(イデコ)」を利用するに当たっての注意点は大きく分けると3つです。

 

 1つめは、「毎月定額の支出があること」です。「iDeCo(イデコ)」の利用に際しては、投資のための掛金だけでなく手数料も発生します。比較的少額とは言え、毎月定額の支出があるということを考慮した家計の資金繰りをしなければなりません。

 

 2つめは、「60歳まで受取ができないこと」です。受取開始年齢を60歳よりも後ろにずらすことは可能です(最高で70歳まで)が、年金という性格上、60歳までは基本的に受取ができません。自分自身のライフプランを考慮しながら、「iDeCo(イデコ)」を利用しましょう。

 

 3つめは、「元本割れの可能性があること」です。元本割れがどうしても嫌ならば、預金などを中心として運用することになりますが利益も少ないです。「普通の」投資と比べて、税務的なメリットが存在するためリスクは低いものの、それでもリスクは存在し、リスクを軽減するのは自分自身での投資への勉強にほかなりません。