決算料30万円は高くない…決算料の相場とその根拠

決算料の相場、その金額の根拠を知っておくことで、安物買いの銭失いのように、損をすることを避けられます。

決算料の相場決まり方

そもそも「決算料」とは

会社から独立して起業すると、自身で利益を計算し、その利益に応じた税金を支払う必要があります。

利益を計算し税金を納めるための「期間」は通常1年間なので、年に1度はこれまでの取引をすべてまとめなければなりません。

1年分の取引を振り返りまとめる作業を「決算」とよんでいます。

「決算」作業には専門的な判断や知識が必要になるため、税理士に委託し代行してもらうことが多く、決算にあたって税理士に支払うのが「決算料」とか「決算報酬」よばれるものです。

決算料は幅がある

決算料の相場は月額顧問料の6ヶ月程度、あるいは20万円〜40万円程度と幅があります。

金額に幅があるのは、会社から提供される資料の「質」に差があり、取引量や取引内容が異なるためです。

会社から提供される資料の「質」会社の「取引量」や「取引内容」によって、税理士(会計事務所)側は「作業量」や「難易度」が変動するという事情です。

決算は時間がかかる

税理士(会計事務所)側は「決算」にあたって1社あたりに20〜40時間程度はかけています。

(事務所や税理士によって、着手(決算に取り掛かる)が早かったり遅かったりの差があります)

事前の打ち合わせ、資料の受け渡し、データのチェック(データ作成を請け負っている場合にはデータの作成も)、税のリスクなどの検討、税金関係書類の作成(チェックも)、税金支払関係の段取り、税額の承認(了解)、電子申告の手続き、預かった資料の返却準備、決算書の納品

少なくとも上記のような行程を経て、決算が完了します。

決算には期限がある

決算には「いつまでにしなければならない」という期限があります。

この期限までに、1年間の取引を振り返りまとめ利益を計算し、税金を支払わなければなりません。

この期限のことを申告期限といい、決算日(1年ごとの期間の区切りの日)から2ヶ月とされています。

4月1日から3月31日までを事業年度(利益計算する期間のこと)としている会社の場合、3月31日が決算日ですから、その2ヶ月後の5月31日までに決算作業を終えて税金を支払わなければなりません。

税金を支払わなかったり、遅れたりするとペナルティがあり、悪質な場合には「塀の向こう」へ連れて行かれることもあります…

税理士(会計事務所)は1時間あたり7,000円は売り上げなければならない

突然ですが、サラリーマンは「自分の給料の3倍稼げ」といわれます。

売上がそのまま利益になるわけでなく、さまざまな経費を差し引いた残りが(会社の)利益となるからです。

一般的にサラリーマンの時給は2,500円程度といわれていますから、1時間あたりにあげなければならない売上は7,500円ほどです。

同じように税理士も、1時間あたりにあげなければならない売上額が分かっていて、7,000円〜10,000円(※)あたりが最低限といわれます。

※決算作業という意味で考えた場合です。セミナーやコンサルなどの単価はまた別の考え方になります。

計算してみると

決算にかかる時間が20〜40時間なので、間をとって30時間。

税理士(会計事務所)の1時間あたりに必要な売上は約7,500円〜10,000円。

30時間×7,500円=225,000円。(30時間×10,000円=300,000円)

さらに、「時間の制約」がある(限られた期限までに決算を終えなければならない※1)こと、会社ごとの特殊な事案も検討しなければならない(※2)ことから作業以外の部分での金額も発生します。

※1作業を依頼するときに「急ぎ」でやってもらうと料金がかかるのと同じ理屈でしょう。

※2複雑な取引は、難易度が上がり、「できる」人間が減るため。

決算料については、作業にかかる部分の金額だけで20万〜30万円。これに時間の制約、会社ごとの特殊事情を検討するなどが加わって20万〜40万円程度。(もちろんこれ以上の場合もあります)

時間には限りがあるので一定額以下にはならない

決算には期限があり、その期限までにすべてを終えなければなりません。

そして、どのような会社の決算であれ、一定の時間(や手間)がかかります。

時間の制約があるなかで、一定の時間がかかるため、薄利多売ができません。

税理士や会計事務所の人間だけ、1日48時間あれば、決算をこなせる数が倍に増えますが、どんな人でも1日は24時間です。

したがって、時間に制限(制約)がある以上、決算料は(もっといえば人が主体となるサービスはすべて)「絶対に」一定額以下にはなりません。

決算は単なる「作業」ではない

決算は単なるデータの組み立てという作業ではありません。

税務調査のこと・融資や資金繰りのこと・事業承継のこと・節税のこと・社長の意向など様々なことを考えながら、それらを数字として意味をもたせ、資料や根拠を整理していきます。

取引をデータ化することを仕訳といいますが、仕訳には、主観的な判断が入ります。(どの勘定科目を採用するのか、いくつか認められる経理処理方法のどれを選択するのかetc)

また、決算に必要なデータは手や足を使って集めなければなりません。(たとえば棚卸作業ですが、これは決算日の在庫を実際に確認しなければなりません。)

時間がかかりますし、あまり安く値切ると、こういった時間が充分に取れないということも考えましょう。

「人」への支払いは安かろう悪かろう

先程あげた決算料20万円〜40万円という相場から、かけ離れた価格で依頼をする場合、どこかで歪みが出ます。

どのような事業であれ、一定の利益を確保しないと、事業が続けられません。

結果、歪みが出てしまい、最終的にはクライアント自身に返ってきます。

安かろう悪かろうです。

相場を知ることで、損をすることを避けられるわけです。