消耗品費と事務用品費はどう違うんだろう?

会計ソフトで入力する際に似たような科目として「消耗品費」と「事務用品費」がありますが、何が違うんでしょうか?両者の違いを考えるよりも、実はもっと重要なことがあります。

勘定科目は取引のラベル

事業にかかわるお金の動き(取引)を会計データに変えることを仕訳(しわけ)といいます。

仕訳は「勘定科目」「金額」「摘要」から構成されます。

会社では多くの取引が行われるため、同じような取引はひとまとめに表したほうがわかりやすいので、ラベリングします。

このラベルが「勘定科目」(単に「科目」といったりもします)です。

消耗品費は

消耗品、つまり「使うことによって価値がなくなったり減ったり(消耗)するもの」をまとめた科目です。

少額の資産(使用可能期間が1年未満、取得価額が10万円未満の資産)などが該当します。

具体的には、消耗品・机・椅子・ロッカー・キャビネット・本棚・自転車・備品関係(少額のもの)・洗剤・石けん・蛍光灯などです。

営んでいる事業の種類によって、消耗品として登場する具体的なものは変わってきます。

事務用品費は

事務用品を計上する科目です。

具体的には、事務用品・伝票・小切手帳・手形帳・文房具・領収書用紙・請求書用紙・印鑑・ゴム印・バインダー・ファイル・コピー用紙・DVDなどのメディア・プリンタのインクなどが該当します。

まとめて処理してもOK

勘定科目は、必ずこうしなければならないというものは、ほとんどありません。(交際費や役員報酬などはいじると不味いのですが…)

消耗品費と事務用品費に限っていえば、事務用品費は消耗品費に内包されていると考えても差し支えありません。

事務で使うペンや消しゴムやセロテープなどは、使うごとに徐々に価値が減っていく(消耗する)ものなので、消耗品ともいえます。

会計ソフトにあらかじめ設定されているので、ついつい分けてしまうというのが実情ではないでしょうか。

会計の世界では、「パッと見でわかりやすく書類やデータをつくりなさい」というルールがあります(外観性重視)。

多くの会社では、事務用品費は多額になることは少なく、消耗品費と区別するほうがわかりにくいということであれば、「消耗品費」だけで処理しましょう。

(ちなみに「消耗品費」だけで処理しても、「消耗品費」「事務用品費」と分けて処理しても、税金も変わらなければ融資の審査などにも何の影響もありません)

あまり、科目を細かく設定しすぎると、会計データがわかりにくくなります。過ぎたるは及ばざるがごとしです。

勘定科目は取引の「ラベル」
わかりにくければひとまとめにしても良い

こだわるべきところ

「消耗品費」「事務用品費」を分けるかどうかより、大事なのは「いったん決めた科目は変えない」「摘要をしっかりつける」です。

いったん決めたら続ける

例えば、「鉛筆」を消耗品費で処理しても事務用品費で処理しても良いのですが、いったん事務用品費で処理をすると決めたらずっと続けるようにします。

取引の都度「消耗品費」で処理したり「事務用品費」で処理したりと変わったり、今年は「消耗品費」だけれど去年は「事務用品費」だった…などのようにコロコロと変わってしまうと、データの分析や管理の役に立ちません。

「鉛筆は事務用品費で処理する」とか社内で決めごとをつくっておくといいでしょう。

そういったルールが面倒くさいので、ひとまとめに「消耗品費」で処理するほうがおすすめです。

ただし、事務用品費を個別で管理したい理由がある場合もあるため、その場合は会社の決めごとに従いましょう。

データの分析や管理の役に立たなくなるので
「ラベル」(勘定科目)はコロコロ変えず、いったん決めたら続ける

科目のルールを決めておく

経理担当者によって科目が変わったりしないように、「こういった取引は〇〇で処理するというルール」を作成すべきでしょう。

「こういった考え方・根拠に基づいて処理する」といった考え方のルールですね。

会社によっては、「支出の内容ごとにこの科目を使う」というのをまとめた一覧表があります。

摘要をしっかりつける

会計では、「パッと見でわかりやすくしなさい」と同時に「ある程度は詳しくしなさい」という相反するルールがあります。

会計のデータが「科目」と「金額」だけだと、情報として不足を生じてしまい、何らかの補足が必要なときがあります。

そのため、仕訳(会計データの最小単位のこと)を作成する際に添える端的な説明文(これを「摘要」といいます)が重要なわけです。

税理士をはじめとして税務・会計にかかわる人たちは「摘要」から取引内容を読み取ってさまざまな判断をします。

摘要から、「経費として認められるのか?」「消費税の分類は?」などを読み取っています。

消耗品費や事務用品費であれば、摘要には「取引先名(購入したお店の名前など)」と「具体的な取引内容(具体的な物品名など)」を入れるようにします。

消耗品費と事務用品費の区別をつけるよりも、その支出が「消耗品費」もしくは「事務用品費」であるということが「摘要」から明らかにわかるようにすることのほうが意味があります。

補足的な説明文である「摘要」をしっかりと入れることで
データ(情報)としての価値があがる