「自動車を買って良いか?」という質問に対して、明確な回答はありません。そのときどきの状況が異なるからです。
お金が足りているかという観点
おそらく、最も大きな心配は「お金が足りているのか?」ということでしょう。
自動車などの高額な買い物をしたあと、何かしら不意にお金が必要となったときに「困らないか?」という心配。
これに対しては、会社にどのくらいの「現預金」があるかでしょう。
一般的には、月商の1〜3ヶ月程度の「現預金」を持っていれば良いといわれています。そのくらいのお金があれば、何らかのアクシデントが起きても支払に困らず耐えられるという目安です。
ですから、自動車を買ったことによって「現預金」が月商の1ヶ月分を大きく下回るようなのであればやめておいたほうが無難でしょう。
事業への必要度
手もとのお金が少なくなってしまう場合は、不要な支出はしないほうがいいのですが、事業への必要度が極めて高い場合にはこの限りでありません。
この機械がないと製造できない…とかだと事業が成り立ちませんので。
こういった場合には、融資も検討して資金繰りを抜本的に考えるべきですが。
事業に必要なのであれば買わなければならないし、そこまで必要性が高くないのであれば、それ以外の要因から考えます。いずれにせよ、必要なのかそうでないのか優先順位は常に考えておくべきです。
節税になるのかという観点
自動車を買うと節税になるのかという観点ですが、節税にはなりますが、経費にできる期間が異なります。
自動車は高額なので、一発で経費にはなりません。いいかえれば、全額が買ったときの経費という訳にはいかないということです。
自動車が使える期間に渡って徐々に費用にしていくのです。(いわゆる減価償却)
ただし、中古車などの場合には、新車よりも「使える期間」が短くなりますから全額を経費にできる期間が短くなり、場合によっては一発で経費になることもあります。
節税を重視して中古車にするのか、長く利用できることを重視して新車にするのか、このあたりは正解はなく個人の考え方とそのときの会社の状況次第でしょう。
心理的な観点
高額な買い物をする場合、人はどうしてもためらいを感じます。
無駄遣いなのではないか…、もっと他に必要なものがあるのではないか…、本当に買っても良いのか…、
その底にあるのは「失敗したくない」という心理でしょう。
ただ、身も蓋もないですが経営には失敗がつきもの。
ほとんどが失敗です。
要は、失敗でも致命的でなければ良いわけです。自動車の購入に失敗して、経営に重大な影響を及ぼすほど(と思うの)であれば、やめておいたほうが良いでしょう。
なぜ明確な答えがないか
この心理的な観点が一番やっかいで、理屈でわかっていても決断しにくいという問題は、しばしば起こります。
税理士として、こういった質問を受けたときにも、会社の経営状態や節税などの観点だけでなく、社長の性格も考慮に入れて回答することになります。
ところが社長の性格…というか、感じ方もその時々によって変わります。
ですから、その時々によって回答も変わることがあるので、常に同じ回答ということになりません。
個人的には、よっぽどお金が苦しいとかでなければ、買えばいいと思いますが。