「自社ビルを建てると会社は傾く」は都市伝説か?

自社ビルを建てると会社が傾くというのは昔から都市伝説のように言われていることですが、個人的には多少はそういった事はあるのかなと思います。

自社ビルを建てたい

やはり会社のオーナー、一国一城の主を夢見ている人にとっては、自社ビルというのは一つのステータスではあります。

社長は誰でも(なろうと思えば)なれますが、自社ビルを持つ会社のオーナー社長というのは少しハードルが高いです。

自社ビルを建てるとなると、業歴も必要だし、会社もそれなりの規模感が必要ですし。

そうなると、目標は「自社ビルを建てること」というのも、わからないではありません。

自社ビルは利益を生み出すのか?

ところで、自社ビルを建てる経済的なメリットは何なのでしょうか。

経済的以外のメリットは先に述べたとおり、いわゆるステータスでしょう。達成感とも。

ただ、自社ビルが会社の利益を生み出すのかといえばそうでもないです。

強いていえば、いままでテナントとして借りていた事務所や店舗などが、自社になるので「地代家賃」が減ることくらいでしょう。

しかしながら、地代家賃が減ったとしても土地建物には「固定資産税」が毎年かかりますし、それ以外にも付随する税金(不動産取得税など)や経費(火災保険料や設備のメンテナンス費用)が発生します。

また、いざというときに(自社ビルを)担保にしてお金を借りられるということをメリットに挙げられるかもしれませんが、そうであるならば自社ビルを建てるお金を有価証券等に変えていても同じことですし、有価証券のほうが換金しやすいし、利息や配当を受け取れる分だけ金銭的にもメリットが大きい。もっと有効な設備投資をするということも考えます。

そうすると、多くの場合、自社ビルを持つ経済的なメリットは薄いというのが実際のところです。(賃貸することが難しい事情があるような場合は、自社ビルを持たざるを得ませんが。)

 ステータスというのはいいことばかりでもない

自社ビルを持つということは、経済的な(明確な)メリットは薄いということはそうなのですが、

心の問題、すなわちオーナーや従業員たちの「自社ビルを持っている会社である」という優越感というかステータスというのはどうでしょう。

たしかに、そういった優越感がプライドになって、仕事や会社に愛着を持ち、帰属意識を高めるという効果はあるかもしれませんが、

それとてないよりマシ程度でしょう。私だったら、会社が自社ビルかどうかよりも労働環境(条件)が良いかのほうが気になりますし。

さらに、自社ビルを建てるとクチの悪い取引先などから「(自社ビルを建てるくらい儲けているんだから)もっと条件を良くしてくれ(まけてくれ)」というような嫌味を言われるというのはちょくちょく聞きます。

あるいは自社ビルが建てられるくらい儲かっているということで、さまざまなセールスの標的になったり。

儲かっているというのはいいことなのですが、儲かっている(かどうかに関わらず)と思われる」のはメリットよりはデメリットのほうが大きい気がします。

自社ビルを建てると会社が傾く

必ずしもそうとはいえませんが、明確なメリットを見いだせなければやめておいたほうが無難でしょう。

少なくとも、自社ビルを建てると一時的にしろキャッシュフローは悪化しますから、キャッシュフローが厳しい状況で自社ビルを建てれば「会社は傾く」のは間違いないでしょう。