中小零細企業に厳密な事業計画は不要

暴論のように聞こえるかもしれませんが、中小零細企業に「厳密な」事業計画は不要だと思います。

事業計画の決まったパターンはない

まずはじめに断っておきたいのが、事業計画と呼ばれるものに決まった雛形はありません。法律などで求められるものではないからです。

事業計画とは、「今後数年間の事業の推移を数字に落とし込んだもの」くらいの意味なのでしょうが、漢字四文字で書くと小難しく聞こえます。

事業計画の目的は社内外に知らしめること

事業を行ううえで、利害関係者にも事業が今後どのように進んでいくのかを示す必要がある時に、事業計画を使います。

事業が事業計画の通りに進むとは限りませんが、利害関係者からすると、会社が「どう考えているか?」を知ることは重要な意味を持つからです。

例えば、融資であれば事業計画により、貸した側からすると回収できるのか否かの参考となるからです。

もちろん、利害関係者は社外だけでなく社内にもいます。利害関係者は、利害をもっているわけですから、会社が今後どのように進んでいこうとしているのかを知る権利があるし、それを数字をもって示すのが事業計画の役割です。

中小零細では利害関係者がそもそも少ない

事業計画は、社内外の利害関係者に対して、会社の進む方向性を示すものです。
会社の規模が大きくなればなるほど、利害関係者は増えていきます。
上場しているような会社であれば、広い意味でほとんどの人が利害関係者といえるかもしれません。

一方で、中小零細と呼ばれる企業は利害関係者はほとんどいません。
中小零細企業では、オーナー社長であることがほとんどですから、経営者が株主に対して説明するというのも、同じ人なんだから分かってて当然です。従業員数も両手の指の数で足りるくらい。

となると、銀行とかその辺りが大きな利害関係者ということになるのでしょう。
であれば、そこら辺に通じる程度の事業計画で充分ということです。
いわゆる素人(会計などの)は居ないから、そこまで素人目線で作らなくてもいいわけです。

中小零細では柔軟性や機動性が大事

事業計画は、会社が今後このように進んでいくという方向性を数字に落とし込んだものですから、数字化する必要があります。

ところが、中小零細企業では、計画をキチンと立てることよりも、その時々の状況に応じて臨機応変に対応していくことの方が重要だったりします。(数字化するのに縛られすぎてはいけない)

大企業に比べて、経営資源に乏しい中小零細企業では、柔軟性だったり機動性の方が重要で、例えば赤字を垂れ流している部門があれば大企業よりも中小零細企業のほうが、早急に手を打つ必要があると言えばわかりやすいです。

とすれば、計画を数年のスパンでキチンと組むよりも、大きな計画はあるとしても、そと時々に応じて臨機応変に対応できるようにしておいた方がいいはずです。

中小零細では前提が弱い

計画を立てる際には、売上予想など一定の数値は予想を入れますが、これらの前提となる企業の体力や営業力などは、大企業のほうが強く、中小零細では弱い。

前提が弱いと、売上予想などの予測値は変動が大きくなります。(景気などの影響を受けやすくなるなど、外部要因による変動の影響は前提が弱いと、強くなる)

前提が弱いにもかかわらず、「厳密な」事業計画を立てるというのは、弱い地盤の上に堅牢な建物を建てようとすることで、バランスが悪いので地盤沈下したり、傾きが起きやすくなります。傾いた建物は風が吹いてもミシミシと嫌な音をたてるものです。

前提が弱いのだから、事業計画も少し緩めに立てるほうが無難。

繰り返しますが、事業計画が要らないと言っているわけではありませんし、事業計画の有効性は否定しません。

しかしながら、中小零細と呼ばれる企業では、大企業と前提が違います。

世に流布している事業計画や、その周辺知識などは大企業を想定している(と思われる)部分が多く、それを真に受けてギチギチに事業計画を立てるのは、有効性がないだけであればまだマシで、中小零細企業の経営で重視されるはずの柔軟性や機動性を損なうことになると一大事です。