よくない決算書〜内訳書がテキトー

決算書の内容を補足するための書類が「勘定科目内訳明細書」です。

勘定科目内訳明細書のしくみ

法人税は会社の「利益」に対して課税されます。その利益を計算するために作成されるのが決算書ですが、決算書は取引をものすごく端的にまとめています。
端的にまとめないと、取引の数が膨大すぎてなんだか訳が分からなくなるからです。

パッと見が分かりやすい(外観性)というメリットがありますが、詳細が分かりにくいというデメリットもあります。
そこで、主要な勘定科目については、その詳細(内訳)を開示しようという趣旨の書類が「勘定科目内訳明細書」です。

勘定科目内訳明細書は補足資料

いくつか例をみると、勘定科目内訳明細書の立ち位置が明確になります。

①預貯金

決算書に記載されているのは、現金と預金の別くらいですので、とりわけ預金はどこの銀行にいくらあるのかがわかりません。

どういった銀行と取引又は預金口座があるのかは、対外的には信用に関わるポイントでもあります。
勘定科目内訳明細書では、そういった預金の種別から銀行の別、支店の別などまで記載させることで、信用に関わる情報を補足しているのです。

②売掛金

売却代金は販売の都度回収するのではなく、締日ごとに請求して、一定期間後に回収することがありますが、これが売掛金です。
どのような取引先と取引をしているのか、その金額(規模)はどのくらいか、といった情報は、信用面からも重要です。

決算書では、売掛金としか記載がないため全体の金額はわかりますが、先ほどのような情報は不明です。
勘定科目内訳明細書では、取引先名や住所、金額などを記載しますから、どのような取引先にそれぞれ幾らの売掛金があるのかが明らかとなります。

③地代家賃

人件費と並んで大きな固定費は家賃です。
勘定科目としては「地代家賃」で表されることが一般的ですが、決算書では合計額だけが記載されているだけなので、固定費が大きいなどの判断はできますが、どのような先に払っているのかなどは把握できません。

地代家賃とひと口に言っても、事務所家賃・駐車場代・借上社宅家賃・倉庫代などさまざまなものがありますし、所在地やオーナーが誰なのかは重要な判断材料になり得ます。
勘定科目内訳明細書では、地代家賃の種別やオーナー、その住所、支払った金額などの内訳を示しています。

決算書では不足する情報を補う

決算書は利益をキチンと求めることと、外観性を重視して作成することを目的としていますから、それ以外の目的・例えば信用情報などのための、それぞれの科目の内訳情報を記載していません。
しかし、決算書を別の視点から分析しようとすると、勘定科目ごとの内訳などの詳細が必要となります。

そこで、先に述べたような感じで、勘定科目ごとの詳細(内訳)を補足的に示すのが勘定科目内訳明細書の位置付けです。

テキトーに作っていると

勘定科目内訳明細書は、法人税などの税金には基本的には影響を及ぼしません。
しかし、決算書の性格が性格な利益及び税金の計算だけでなく、関係者に適当な情報を提供するという観点からすると、補足情報としての勘定科目内訳明細書は欠かすことができません。

勘定科目の内訳が全くイメージできないくらい薄い内容の勘定科目内訳明細書は、その役割を果たしていません。
欠陥品とは言えなくとも、よくない決算書であることは間違い無いでしょう。