給与所得者(サラリーマン等)には、原則、経費が認められていません。かわりに給与所得控除額という概算経費のようなものがあります。「給与所得=収入金額−給与所得控除額」となっています。
給与所得控除額とは、サラリーマンの経費を計算するのが大変だろうから、概算でこのくらいの金額は経費として認めてあげますよって制度です。上の表の給与収入の金額に応じて、控除額が計算されます。(上の表は平成25年1月1日〜の分です)
確かに、サラリーマンについては、業務に必要かどうか微妙な支出も多いわけで、それらの領収書をひとつひとつ経費性を判断して、集計するのは非効率ですよね。ですので、収入がこのくらいだったら、このくらいは経費として認めてあげるよってのも制度としては簡便で良いのかもしれません。
しかしながら、人情として明らかに業務に使った支出が、それも結構な金額があれば、「こいつも経費として認めてくれ」と言いたくなるもんです。そんな声に答えていた(?)のが、特定支出控除と呼ばれる制度でした。
次のような支出をしていれば、その合計金額が給与所得控除額を超えていると、その超過した部分を、給与所得控除額に上乗せしてもよいという制度です。
①通勤のための支出
②転任に伴う転居のための支出
③職務上の研修のための支出
④資格(一定のものを除く)を取得するために必要な支出
⑤単身赴任者の帰省のための支出
しかしながら、従前の制度では、持ち出しで支出をしていなければならず、給与所得控除額を超える部分のみが上乗せの対象であったため、ほとんど使われていないのが現状でした。
そこで、この制度を気持ち使いやすくしようと平成25年1月1日から改正がされました。まず、特定支出の範囲が拡張されました。具体的には次の通りです。
⑥弁護士などの資格取得のための支出
⑦次の支出(合計65万円限度)で業務に直接必要なもの
a.書籍購入費、被服費
b.接待・贈答等の交際費
さらに、従来は特定支出が給与所得控除額を超えている場合の、その超えている部分が控除出来る対象でしたが、平成25年1月1日からの改正では、給与所得控除額の1/2を超えている部分(給与等の収入金額が1500万円超の場合は125万円を超える部分)が控除の対象に変わりました。
ただ、この制度も使い勝手が良いかというと微妙ですね。スポーツ新聞も経費になるのか?と思えば、国税庁のQ&Aによると、「スポーツ新聞は業務に関係ないからダメ」となっていますし、スーツなどについても「業務上必要で、給与等の支払者の証明を受けている」ことが必要となります。また、交際費についても同僚の結婚祝いなどはダメとなっているなど、注意が必要な部分も多いです。
特定支出については、意外と縛りが多くサラリーマンが実益を受ける部分は少なそうだというのが素直な感想です。上記のような支出が、多額にありそうでしたら、検討をしてみても良いかもしれませんが、多少の支出であれば手間だけがかかったということになりかねませんので…