【税理士として働く】大きな税理士事務所に勤めるメリットはない

税理士として「独立開業を全く考えていない人」以外には、大きな税理士事務所に勤めるメリットはありませんから、「大きさ」だけを根拠にするのはやめておいたほうがいいでしょう。

給料

税理士事務所は、労働分配率(ざっくりといえば付加価値のうち人件費にどのくらい割り当てるか?)が約3割と言われてますから、自身の担当している関与先の売上(税理士業の場合、仕入などがないため簡便的に売上=付加価値と考えても差し支えないでしょう)の3割程度の給料に収束します。

大きな給料を望むならば、独立開業したほうが取り分は増えるでしょう。
給料を考えるならば、税理士事務所の職員というポジションはめちゃくちゃ美味しいわけではなさそうです。(これはすべての仕事についてそうでしょうけど)

安定性

税理士事務所は安定性はあります。毎月、クライアントから一定の顧問料を頂戴するビジネスモデルのためです。
また、税金の申告という仕事は、日本という国家が税収で成り立っている以上は、なくなることはありません。

と、一見安定しているように見えますが落し穴もあります。
所長の引退リスクです。税理士事務所は、「税理士」がいないと成り立ちませんから、所長である税理士が引退してしまうと、残りの職員は行き先が無くなり、失職です。(だからこそ、手に職をつける必要性があるとも言えます)

福利厚生

残念ながら多くの税理士事務所では福利厚生に期待ができません。
社会保険に加入していないところもあるくらいです。これは税理士事務所というより個人事業主の「あるある」でしょうけれど。
税理士事務所の95%以上が5人未満の小規模事務所で、上場企業や公務員などのような福利厚生は期待できるはずもありません。

教育

福利厚生と同じく、教育もそれほど期待しないほうがいいでしょう。
別記事にも記しましたが、教育する余裕や能力がないというのが実情ですので、自分自身で「己の価値」を高めるのが手っ取り早いです。

変なクセを仕込まれるより、自分で考えて工夫して実務能力を身につけることができると考えれば良いのかも知れません。

残業

残業が多いか少ないかは、所長の考え方次第ですが、(税理士事務所の中で)それなりの規模があるところは残業もそこそこあります。(近年は、残業が異常に多いというところは是正されているとも聞きますが)
あるいは、いわゆる繁忙期に土曜日出勤させるとか。
そもそも、独立開業した税理士が休日も含めて労務を自身で管理して、平日に早く仕事を切り上げたから、土曜に少し補う。といったことは問題ないと思いますが、従業員に残業をや土曜日出勤を強いるというのは、仕事の割振が出来ていないということ。
仕事の割振の失敗を、従業員に押しつけているのと同義だと思います。

仕事

独立開業を目指すならば、担当先の業務を一から全部見られるような担当者として仕事をするのが良いでしょう。

大きな事務所だと、業務が細分化されて、すべてを自分で見れず、「パーツごと」に見ることも多いです。

そうなると、独立開業する時に自分で補わなければならず、独立開業を目指すものにとっては弊害といえます。

また、大きな事務所だと、マイナーな業務に従事させられることもあり、これも考え方次第ですが、少なくともメリットとはいえないでしょう。

ネームバリュー

大きな事務所に勤めていたから、独立開業した後「〇〇事務所勤務」と肩書にして、もて囃されるかといえば、全くそんなことはなく、役にも立ちません。
大きな事務所といっても税理士業界の話であって、「世の中的」にはあまり大きな意味を持たないからです。

結論

独立開業を目指さないのであれば、大きな事務所に勤務することにメリットもあるのかもしれませんが、独立開業を多少なりとも考える人にとってはほとんどメリットはありません。

「開業までの実務経験のため」と割り切って考えるのが合理的でしょう。