「共働き夫婦の住宅購入」には、借入可能額を増やす目的で「ペアローン」という選択肢があります。しかし、当ブログはリスクを極力避けるという観点から、ペアローンは非推奨としています。
ペアローンは、ファイナンス面でのリスクだけでなく、リーガルなリスクも大きく、「リスクを最大化する仕組み」と考えているからです。

この記事は共働き夫婦の資産形成をテーマにしたシリーズの一部です。
全体像をおさえてから読み進めたい方はこちらの記事を先にどうぞ

ペアローンの概略
ペアローンとは夫婦それぞれが「自身の名義」で住宅ローンを組むものです。(つまりローン契約が2つ存在します)
場合によっては、お互いがパートナーの連帯保証人なることもあります。
その一方で、自宅は共有名義となります。(持分は「出資」した金額の比率で決まります。)
要するに、一つの住宅を取得するのに、夫婦それぞれが住宅ローンを組む、という仕組みです。(財産は一つ、ローンは二つ、揉める火種がくすぶっている構造と思えませんか?)
ペアローンの2大リスク
ファイナンシャルリスク
ペアローンは共働き夫婦がフルパワーで働くこと(フルタイム勤務)を前提としますから、ライフイベント(出産、育児、転職、介護、病気や怪我など)により、収入や就労形態に変化が生じると、その持続性に問題が生じます。
つまり、ペアローンには家計の余力や余白が全くない、というのがファイナンシャルリスクです。
リーガルリスク(法的リスク)
共有はあまりにも、リスクが高いです。共有財産を売却するのも、持分を整理するのも単独名義と違い、一筋縄ではいきません。
共有名義人「全員」の合意がないと、共有財産についてのものごと(売却するなど)を決めることができません。
その結果、身動きが取れなくなった不動産は数多くあります。(駅前の一等地なんだけれど、いつまでも更地のままなど、探してみると、意外と身近にもあります。)
離婚や相続など利害関係が対立する場面では、なおさらですから、共有は近しい関係ほど避けるべきなのです。
単独ローンを勧める3つの理由
柔軟性が高い
共働きの最大のメリットは、お互いの働き方や収入を「柔軟に」補完し合えるという点です。
出産など一時的に収入が減ったとしても、もう一方の収入でカバーしたり、お金が必要な局面では、2馬力で世帯収入を増やせる。
単独ローンですと、そのような柔軟性を損なうことはありませんが、ペアローンではフルパワー前提となるため、共働きのメリットを損なってしまいます。
財産の処分がしやすい(機動性)
単独名義にしておけば、共有と異なり、財産処分などの決定プロセスがスムーズです。
小さな経済主体(中小企業もそうですが)は、その「規模の小ささ」を、その機動性で補うのがセオリーですが、共有名義では機動性が損なわれます。
例えが不適切かもしれませんが、自転車操業の会社が、意思決定にもたつけば、たちまち資金ショートに陥る、というと分かりやすいでしょうか。
家計に余力を持たせられる
単独ローン、つまり単独名義ということは、1人で返せるローンですから、パートナーの収入は余力ということになります。
生きていくためのお金は、住宅費だけではありませんから、家計に余力があれば、破綻リスクは小さくなります。
筆者は税理士として、多くの会社の資金繰りを目にしていますが、資金繰りは一旦後手を踏むと、半永久的に後手を踏み続けることになります。一発逆転はありません。
余裕のない資金繰りは、まさに「地獄」です。
お金を出し合うならどうする?
どうしても夫婦それぞれでお金を出して家を買いたい、というならばペアローンでなく、一方が他方にお金を貸し付けるという方法がまだマシです。
貸してるだけなので、不動産は共有名義とならないし、贈与税の問題も生じない。
ただし、手続や証拠を揃えるなどが面倒となりますから、専門家の助言が必要となり、コストが高くつく可能性はありますので、「どうしても」というときに限ります。
まとめ:ペアローンは『リスクを最大化するローン設計』
ペアローンは借入可能額が上昇する引き換えに、共働き夫婦のメリットも大きく損なってしまう設計です。
家庭の安定のための住宅取得が、その安定を損なうとすれば本末転倒ですから、ペアローンは避けて、家計の安定性や柔軟性を活かす設定を推奨します。
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