住宅取得とはきっても切れない住宅ローンは、その金額の大きさも問題ですが、ローン期間の長さが最大のリスクです。
返済期間が長期になると、その間に就労状況などが変わる可能性があるためです。ローンの審査は「今の働き方が今後もずっと続く」ことを前提にしていますが、そんな保証はどこにもありません。
住宅ローンで「借りられる上限」はかなり危険な金額で、頭金を入れるべきなのです。頭金を入れることで、借りる金額を引き下げる→一定期間「ずっと」同じ状態で働く、という仮定を「緩和」します。

この記事は共働き夫婦の資産形成をテーマにしたシリーズの一部です。
全体像をおさえてから読み進めたい方はこちらの記事を先にどうぞ

頭金ゼロで家を買うリスクとは?
オーバーローンのリスク
オーバーローンとは、物件の価値がローン残高を下回る状況(物件の価値<ローン残高)です。
オーバーローン状態だと、住宅を売却しその代金をすべて返済に充てても、住宅ローンは残る(残債がある)ことになります。(潜在的な借金を背負っている状態)
就労状況が変化して、自宅を手放さざるを得なくなったとしても、「住んでいない住宅」のローンを払い続けることとなり、家計をかなり圧迫します。
金利上昇リスク
住宅ローンを変動金利で組んでいると、金利が上昇すると、返済額(利息)が増えます。
頭金がないと、その影響はさらに大きくなりますから、頭金のない住宅ローン(フルローン)はかなり危険、というより無謀でしょう。
固定金利ならば金利上昇のリスクは避けられますが、固定金利であってもフルローンならば、利息も含めた返済負担は家計を大きく圧迫します。
頭金をキチンと入れれば家計が安定する2つの理由
「建物部分は現金、土地だけ借りる」のが理想
会計的には建物の価値は時間の経過とともに減りますが、土地の価値は減りません。
「価値が減るもの」に対して、ローンを設定するのはリスクですから、価値の減らない土地にのみローンを設定するのが合理的です。
もちろん前提として、「価値」(ここでの価値は会計ではなく、一般的な意味で)が減りにくい土地を選ぶことは最重要です。
別記事でも触れていますが、マンションであれば「建物の比率」が高くなるため、簡易的に頭金を1/3設定すれば、概ね価値の減らない部分にローン設定するのと同様の効果となります。
家計のリスクヘッジになる
住宅ローンの最大リスクはその期間の長さで、その間の自身の就労状況や健康状態が一定であれば良いですが、それは誰に予想がつきません。
団信など、一定のリスクヘッジ手段がありますが、頭金も「状況変化」に対する備えと捉えれば、必須と言えます。
頭金は英語で「down payment 」といいますが、支払いを減らせばリスクが減る、それが長期間ならば効果は絶大です。
頭金がない場合の選択肢|それでも買うべきか?
「頭金を準備できない場合に、住宅を購入すべきか?」という問いには、このブログは極力リスクを避けるという方針なので、「購入すべきでない」という回答になります。
筆者は、中小企業の支援を主体とする税理士が本業ですが、事業のケースでも頭金がないケースは、かなりの確率で破綻することを実感しています。
「頭金のない事業」で考えると
例えば、飲食店を出店するにあたって、自己資金なしで必要資金をすべて借入で賄った場合、高確率で破綻します。
借入は、将来の利益で返済しなければなりません。つまり、借入が多ければ多いほど、その事業から生み出す利益は大きくなる必要があります。
先の見通しが全くたたない開業の時点で、より大きな利益を見込んで事業をしなければならない。そして、利益には「税金」がかかります。
税金を払いつつ、借入金も返済を進めていく。(借入金返済は経費にはなりません)
かなり「計画的」な事業でないと、破綻するのは当然です。
頭金がなければ、事業の規模を小さくする。
頭金を準備してから、事業を始める。
個人の自宅購入でも、規模は異なりますが、本質は同じことです。
まとめ:頭金なしの住宅取得は難易度が極めて高い
住宅ローンの審査は、同じ状況で働き続けられると仮定して行われています。
そんな保証はどこにもありませんから、リスクを下げるために頭金は必須です。
頭金の準備ができなければ、家計の破綻を避ける為に、購入時期を変えるなどの対応が必要です。「住宅を買えるかどうか」ではなく、「買っても破綻しないかどうか」が判断の基準です。
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