会社のお金の調達・借入金と基礎知識と税金との関係

中小・中堅企業においてはお金をいかに調達するかが、会社経営の鍵になります。お金の調達方法と基礎知識を紹介します。

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会社の生命線は「お金」

会社は「赤字が続いているだけ」では潰れません。

その証拠に日本の法人の約7割が赤字申告(赤字の状態で税金の申告をすること。税金・とりわけ法人税は利益にかかるので、原則的には赤字だと税金を納めなくても良い)と言われています。

企業がつぶれるのは、資金が無くなった時です。逆に言えば、資金が回り続ける限り会社はつぶれないのです。(利益と資金は一致するものではありません。)

では、企業はどこからお金を調達してくるかと言えば、大企業であれば株式市場を通じて直接お金を調達出来ますが、中小企業においては、銀行などの金融機関からの借入が一番大きな方法です。

銀行はお金を貸すのが仕事とはいえ、いきなり何の準備もなしに銀行に行って、「明日金がいるから1000万貸して」といっても難しいでしょう。銀行も商売ですから、貸したお金をしっかり返してくれるところに貸したい訳です。

その際に重視されるのが財務諸表(B/S、P/Lなど)です。(昔は担保があればお金が借りれたようですが、現在は財務諸表を分析して、数値の良い→お金を返してくれる会社に貸しています。)

お金の調達方法は3つ

先ほどと少し重複しますが、お金の調達方法は大きく分けると3つです。

1つは株主から資本金というかたちで出してもらう方法。資本金は返済不要のため便利では有るのですが、中小・中堅企業においては社長と株主は同一人物のため、自分の懐からお金を出すだけということにもなります。

自分以外の人に株主になってもらうにしても、株主は会社の経営に口出しをしてきますし、配当圧力が強くなったりするのでいいことばかりでもありません。

2つ目は、銀行などの金融機関から借り入れるという方法です。最も一般的な方法でしょう。詳細は後述します。

そして3つ目は、中小・中堅企業の経営者の多くが見落としている方法ですが、税金を払うという方法です。会社は利益を上げると税金を払わないといけませんが、言い換えれば、税金を払ってしまったあとのお金は会社に残ります。

最も合理的で、堅実な方法なのですが、業績をしっかりと上げ資金計画を立て実行することが必要です。

1つ目の資本金を誰から調達するかという「資本政策」は様々な制約がかかることから、単にお金を調達するという話に留まらないので、一般的ではありません。ここでは、2つ目を中心に3つ目の利益との関係まで考えてみたいと思います。

中小・中堅企業が借入れるところは4つ

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日本政策金融公庫等から借りる

お金を借りようとなるとまずは銀行…と思われる方も多いかと思いますが、「実績」の無いものに対してお金を貸すのはなかなか難しいものがあります。

利益を上げて、税金をしっかり払っている(=実績のある)会社は、税金をしっかり払える会社とも言えます。貸したお金もしっかりと返してくれるでしょう。

となると、会社や商売を始めたばかりの人は実績がありません。

そこで、日本政策金融公庫。中小企業や新規開業者向けの融資を行う100%政府出資の金融機関(お金を貸してくれるところ)です。

政府出資の金融機関のため、銀行のように実績だけにこだわらず中小零細企業や個人事業主、新規開業者も借りやすく、比較的低金利で長期間借入ができるというのが特徴です。

ただし、比較的小規模な企業や事業を始めたばかりの会社や人向けなので、融資額はそこまで大きくはできません。 

保証協会を利用する

日本政策金融公庫から借入をした。さらにお金が必要だとなると、信用保証協会を利用します。

信用保証協会は、中小企業が銀行等から融資を受ける際に保証人になってくれる公的な機関です。

銀行から直接お金を借りるにはまだ心もとない会社などでも、保証人がいれば銀行はお金を貸しやすいという話はわかりやすいと思います。

融資の返済(銀行からすると回収)が滞った場合には、信用保証協会が「立替えて」くれるので、銀行としてはリスクを抑えてで融資(お金を貸すこと)ができるわけです。(信用保証協会は立て替えるだけなので、踏み倒したりはできません。信用保証協会に返済することになります。)

よって、信用保証協会の保証があるほうが、ないよりも断然融資は受けやすい。

ただし、保証人になってもらうために「信用保証料(保証料ということも)」が必要となります。借りる方からすると金利にプラスして保証料というコストも必要になります。

また、保証枠という信用保証を受けられる限度額がありますので、信用保証協会を利用する場合には、保証枠を意識しなければなりませんし、信用保証協会を利用して借り入れする場合には、信用報奨協会の審査も必要になるので、融資の実行まで若干時間がかかることが多いです。

銀行から直接借りる

信用保証協会を介さずに、銀行から資金を直接に調達する方法です。いわゆる「プロパー」と呼ばれている融資です。

信用力の乏しい会社や創業後間もない会社は、融資を受けることが難しいですが、都市銀行のプロパー融資は低金利で利用できますので、事業が軌道に乗り信用力が増せば活用したいところです。

都市銀行は融資の金額が億単位になってくるので、一般的な中小企業の場合は地場の地銀や信用金庫などを利用することが多いです。

ノンバンクからの融資

上記の融資を受けられない方が利用する場合が多いです。

審査は通りやすいので、資金ショートを防ぐための一時的な利用であれば良いでしょう。

ただし、決算書にノンバンクからの融資のあとが残ってしまうと、取引先の銀行や公庫などからの信用力が落ちると言われていること、金利負担が重いことなどから、積極的には使わないほうが良いでしょう。

日本政策金融公庫と信用保証付き融資が一般的

融資のセオリーとしては、会社の成長段階に合わせてお付き合いする金融機関を変えていくのが一般的です。

創業後間もなくで「実績」がまだ心もとないときは日本政策金融公庫からの融資、そこから信用保証付き融資を中心に利用していく。

逆に言えば会社をはじめてしばらくは、この二つ(日本政策金融公庫と信用保証協会)の利用ができるように徹底的に対策を練るべきでしょう。

借入金はいくら借りられるのか?

いくら借りられるのかは、完全にはわかりませんが、どの程度が健全な借入金の範囲かを理解しておけば目安にはなるでしょう。

月商や返済期間などから、どのくらい余裕があるのか無いのかは理解しておいたほうが良さそうです。

また、適性や融資を超える資金が必要となるような場合は、事業そのものや事業計画の見直しも必要となるでしょう。

借入金は月商の3ヶ月分が目安

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一般的には、借入金は月商(月々の売上)の3ヶ月くらいが目安と言われています。つまり売上が月1,000万円の会社であれば、借入金は3,000万円くらいが安全と考えられているということです。

業種などによっては4〜6ヶ月ぐらいが目安になることもありますので、あくまで目安の1つとして考え、他の要素との兼ね合いで考えなければならないでしょうが、さすがに借入金が月商の12倍くらいになると問題ありでしょう。

何年で借入金を返すか?

月々に返済している元本で、借入金の残高を割り算すればあと何ヶ月で借入金が返済出来るか概算で計算できます。

例えば、借入金の残高が6,000万円で、毎月100万円づつ返済しているとすれば、6,000万円÷100万円=60ヶ月 となり、5年で返済が終わるというような。

おおむね、5〜7年くらいが安全と言われる範囲です。10年くらいになるとちょっと借入金が多いと思われます。(期間が長いほうが返済は楽ですから、長くしたくなりますが…)

月商や期間はあくまで目安であって、しっかりとした事業計画のもとに返済が計画的にできるというのが望ましいのは言うまでもありません。

融資を通すために重要な「財務諸表」

先にも述べたとおり、昨今では銀行などの金融機関は企業が作成した財務諸表(決算書や試算表で代用する場合も)を審査して融資の可否を判断します。

銀行などの金融機関は、貸したお金を回収しなければなりませんから、財務諸表から「会社はお金を返せるのか?」を中心に確認するわけです。

借入金は、税金を支払ったあとの利益で返済していきます。なので、利益を上げていないとお金を借りにくいということになります。

決算(もしくは資金)の状況が悪いからお金を借りたいのに、決算の状況が悪いと借りにくいという…

決算の状況が悪いときは、今後回復する見通しだとか改善策だとかそういったことを根拠をきっちり示していかなければなりません。

で、その根拠の中心となるものの1つが決算書ですが、決算書が「汚い」と融資の場面でも嫌われます。「汚い」とは言い換えれば、会社の決算内容がいわゆる「どんぶり勘定」だとも言えます。特に「仮払金」や「(役員)貸付金」という科目がある場合には注意が必要です。

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仮払金

仮払金とは、支出内容や支出金額等の詳細が不明な場合に「とりあえず仮に支払った金額」のことです。本来は、取引内容などの調べて、正しい科目に直すべきものなので、正当な理由がなく仮払金があるのはマズイです。

本来は経費であるにもかかわらず、経費として計上すると決算が赤字となってしまうため仮払金に計上しているケースが見られることがあるため、多額の仮払金がある場合には早急に是正すべきです。

貸付金

貸付金も要注意の科目です。「会社がお金を貸した」という科目です。問題は誰に貸したのか、貸した金は返ってくるのかということです。

中小企業では、内容があまり公に出来ないような支出を、役員に対する貸付金(=役員貸付金)として処理していることが多いです。多くの場合、役員貸付金は返済が滞っています。

そもそも、
①会社の支出と役員の個人的な支出は厳密に区別すべきものなのに区別が出来ていないというのは大きな問題ですし、

②長期間、返済が滞っているような役員に貸付金は、会社からすると返ってのではないか→会社財産ではないとなって、目をつけられます。

役員貸付金については、役員報酬を増額し増額した分を返済に充てる等、適切に決算書から消していくようにしましょう。

ややこしい話ですが、役員貸付金には「認定利息」の問題があります。「役員に対して企業が金を貸した場合、企業側が役員から利息をもらわないのはおかしい」との考え方に基づいて、利息を受け取っていない場合に推定で利息を計上するというものです。

税務調査の際にも認定利息が問題になることも有るので、役員貸付金はさっさと処分してしまいましょう。

会社にお金を貯めるには税金がついて回る

銀行からお金を借りるには利益を出さなければなりません。利益には税金がかかります。

借りたお金を返すには、利益を出さなければなりません。利益にはやっぱり、税金がかかります。

借り入れをせずに、会社があげた利益からお金をためていくという方法もあります。最も堅実ですが、利益を上げると税金がかかります。

税金を払わない方法を考えると、利益の分だけお金を使って利益を減らすことです。(経費を増やしたり、従業員に分配したり…)

ただ、税金を払わないと、いざというときにお金を借りにくいし、心もとない。(経営では、こころもとないという状況は負の連鎖を招きますからできれば避けたいところです)

よっぽど特殊な事情がない限りは、会社にお金を貯めるには税金が必要ということになります。

税金は払いたくない、でもお金は貯めたい。気持ちは非常によく分かるのですが、なかなか難しいので、どのくらいの税金であればなんとか支払えるのかを見極めながら、「うまく」税金と付き合っていくしかなさそうです。