税理士試験の科目には当然のことながら給料計算はありません。給料計算の手順は難しいものではないのですが、知らないと苦労することも有るので簡単にまとめてみました。
下記の手順は、私が実際に給与計算をしていた際の手順です。結構アナログな方法でやってましたので、改善出来るところもあろうかとは思いますが、参考にしていただければ幸いです。
手順1.勤怠を集計
まずは、前の締め日の翌日から、今回の給与計算の締め日までの勤怠を集計します。勤怠とは給料の増減に関わるような次の事項です。
・遅刻・早退時間
・平日残業時間、休日出勤時間(深夜残業時間)
・有給休暇の消化、欠勤日数
・出勤日数
これらの事項は、タイムカード他の資料から確認して集計していきます。
勤怠は会社によってルールが異なったりしますので、給料計算を外部に委託していたとしても会社が集計することが一般的なようです。
有給などの消化や復活、早退や遅刻による手当の増減など結構めんどくさいです。有給の届出等はしっかりと出すようにして会社的にルール作りをしておかないと、ズボラな人間のために他の人が迷惑を被ります。
手順2.データを給与計算ソフト等へ入力
上記データを給与計算ソフトに入力していきます。時間外の賃金や、皆勤手当などが月によって変動がある部分ですので、入力の際には注意を要します。給与計算ソフトにて、有給の管理をしている場合は、合わせて有給の消化・付与も入力します。
Excelなどを用いて、あるいは手集計でも計算はできるのですが、検算のことを考えると給料計算専用のソフトを用いるべきでしょう。(量販店などで数万円程度で買えます)
社会保険料の改定や、住民税の改定がある場合には、改定後の正しい数字を入力するようにします。
社会保険料に注意
社会保険料とは健康保険や厚生年金の保険料などのことを社会保険料といいます。
社会保険料は給料に一定率を乗じて計算をするものですが、給料は毎月変動するため手間が増えてしまいますから、社会保険料率を乗じるための給料を行政側が決定します。これを標準報酬月額といいます。
基本給などの変動があって、社会保険料の標準報酬月額が2階級以上動いている場合(標準報酬月額がまとめられた表から判断する)には、標準報酬月額を修正しなければなりません。これを随時改定といいます。
標準報酬月額は、年に一度見直しをします。9月に行われる見直しを定時改定、先述の給料が著しく変動している場合の見直しを随時改定といいます。これらがあると社会保険料が変わるので、給与計算担当者は注意を要します。
また、社会保険料が変わる場合には、社会保険事務所への届け出も行わなければなりません。特に記載が難しい様式ではないので記載がわからないということはないのですが、届出を忘れてしまうと一大事ですので、管理をきちんとする必要があります。
住民税
住民税については、前年の所得に基づいて、6月以降徴収されます。年間の税額を12分割し、端数は6月に合算しますので、6月と7月は住民税が変わる月となります。
住民税については、1月に従業員の住んでいる各自治体へ給与支払報告書を提出しており、それに基づいて各従業員から天引きすべき住民税が通知されます。
住民税については、従業員自身が自分で支払う方法(普通徴収)と、会社が給料から天引きして各自治体へ支払う方法(特別徴収)があります。
中小企業では、事務にそこまでの手数がかけれない場合も多く、普通徴収としているところが多いです。(近年は各自治体の要請で特別徴収を進められています)
雇用保険や源泉所得税
雇用保険は失業手当などを受けるための保険料です。
あくまでも雇用者だけにかかるものですから、役員に対しては発生しません。加入者をしっかりと確認するとともに料率が間違っていないか(業種などによって変わるので)確認します。
源泉所得税は、毎月の給料から概算で所得税を天引きする制度です。
家族の有無などによって天引きされる金額が変わります。
雇用保険や、源泉所得税は設定がしっかりされていれば普段の給与計算では殆ど触ることはありません。
新規に入社してきた人がいる場合などに初期設定をしっかりとすれば問題ないでしょう。
会社独自の手当もある
上記以外にも、結婚したり子供が生まれた場合には、家族手当(会社によって呼び名が違うでしょう)を考慮し、引っ越したりした場合には、通勤手当の変更を考慮しなければなりません。
会社ごとの手当は、会社によって支給ルールが異なります。
(手当関係は、会社ごとの給与規定を入手しておき、それを参考にします。言い換えれば、給与計算担当者は会社の給与規定をしっかりと確認しておく必要があります)
手順3.入力したデータを確認
データ入力が終われば、前月の給与データなどと比較をし、変更があった部分について正しく変更がされているかどうか確認をします。
ほとんどの給与計算ソフトは、自動で計算をしてくれますので、数字が合っているかどうかの確認よりも、変更が正しく反映されているかをしっかり確認します。
給料計算については、従業員のお金に関わることなので、ミスが有ってもなくてもクレームが入りやすいです。
ミスが有ってクレームが入るのは、あり得ることとして、ミスがなくても従業員やその家族は給与計算の仕組みに長けているわけではないので、金額の変動があると(悪気なく)クレーム(クレームという表現が重い場合には質問)が来ます。
ですので、正々堂々と対応できるようにしっかりとした確認をしておく必要があります。
手順4.振込用のデータを作成
給与振込用のデータを作成します。このデータに基づいて、振込担当者が従業員さんの銀行口座に給料を振り込みます。銀行振込でない会社の場合、金種表などを作ることもあります。
給与計算の担当者と振込担当者が同一人物であると、振込用データの作成は忘れようがないのですが、別人の場合はホッとしてしまい忘れることがあります。
締日との関係で、給与計算を実行する日と振込日に余裕が無い場合は特に気をつけないといけないでしょう。
また、給料データから源泉所得税に関する納付書を作成するのも忘れないようにしましょう。
手順5.後片付け・発送
給与明細を、各人別にプリントアウトし封筒につめていきます。
社会保険料などの変更があった場合には、変更があった人に対して変更の旨を知らせる文書を同封するのも良いでしょう。さきほど述べたように、給与明細を見る人すべてが休養計算の仕組みに長けているわけではないので、クレームへの牽制(あと給与計算担当者自身の確認)になります。
給与の封筒を手渡しなどで渡す場合にはその段取りを、郵送の場合には郵送の準備を行います。郵送だと間違えて送ってしまうリスクが怖いので、手渡しが無難だと思います。
社会保険の改定がある場合には、社会保険事務所(日本年金機構)への届け出資料も同時に作成します。
その他補足
人を雇っている会社では、給与計算は避けて通れません。
給与計算の仕組みがどの様になっているのかを知らないと、会社が損をしたり従業員などにも迷惑をかけてしまいます。
給与計算を外注で行うという方法もあります。その場合は、締日から支給日までの間隔がタイトなのでどのような資料がいるのかしっかり把握をしておく必要があります。
資料のやり取りを外注先と正確にできないと、間に合わなくなってしまいます。
給与計算に関しては、経理経営に関わる人間であればその基礎知識は必須です。が、経理の現場では特に初心者は疎かにしがちでもあります。
もし、給与計算に関する知識に不安がある場合には、書籍などで勉強しましょう。外注をするにしても知識がないと迷惑をかける可能性が高いので。
個人的には、TACなどの経理学校が提供している実務講座(webなどで見れる)を活用して一通り勉強するのが最も合理的だと思います。