借金の善悪・是非について

事業と借金は、健康と脂肪のような関係にあり程度であれば問題なく、過ぎると身を滅ぼします。結局、借金との距離感を正しくとるというのが必要なのかと。

借金の善悪・是非

事業を行うにあたって、借金をしなくても良いのであればしないほうがいいです。利息がかかりますから。
ただ、借入をするか否かは、会社自身の状況や会社を取り巻く環境にもよりますので、必ずしも借金が悪だと決めつけるのも短絡的です。
事業における借入金と、実生活での借金は全く性格が違いますので、実生活での借金のようなイメージで語る或いは考える人は、それは早計でしょう。

時間を買う

モノを仕入れて売るときに、時間という概念がなければ、仕入れた瞬間に売ればいいわけですが、実際には、モノを仕入れてから売るまでは、時間がかかり、その間はお金を回収できません。
100万円でモノを仕入れて、売れるまでに3か月かかったとしたら、その3か月間はお金が回収できていない状態です。
仮に3か月後に200万円で売れたとしても、その3か月間をどうにかして凌がなければならないはずです。
そこで、お金を借りればその3か月間の支払いなどを賄うことができます、言い換えれば3か月分の猶予「時間」を買ったことになります。

これを応用すれば、事業の拡大にスピードをつけることが出来ます。
100万円のモノを買って、3か月後に200万円で売れるのであれば、100万円と言わずもっとたくさん仕入れればいいハズです。
1000万円借入れば、10倍ですから、単純に考えれば10倍のスピードで利益を上げたことになります。
このように、借入金は時間を買うという側面が有るので、上手く使えば事業に有利に働きます。

利益からの制約

ただ、先ほどの例は誰が考えてもおかしな理屈があって、「100万円で仕入れたモノが必ず200万円で売れるとは限らない」「3か月で売れるとも限らない」ということでしょう。
100万円で仕入れたモノが3か月後に200万円で売れるとして、借入することができる金額は、単純に考えれば100万円。
つまり、利益と同額のはずです。
仮に120万円を借りたとしたら、返済すると手元には80万円しか残りませんから、同じモノを仕入れることが出来ません。

だから、借入できる金額は、基本的には得られる(だろう)利益とほぼ一致します。
最初に戻って「100万円で仕入れたモノが必ず200万円で売れるとは限らない」「3か月で売れるとも限らない」となれば、利益が予想よりもズレてしまい、借入を返済すると元手を食い潰すという、先ほどと同じ失敗パターンに陥ります。
お金を借りるときに事業や利益の見通を示さないといけないのは、こういった理由もあるわけです。

借入が利益からの制約を受けるということは、少し視点を変えると、借入は将来の利益の先取りをしているともいえます。
事業である以上は利益をあげなければならず、損失を借入で穴埋して…というのは、成り立たないわけです。

税金との関係

借入金には税金が密接に関わります。
借入金そのものには、税金はかかりません。借りただけ、返しただけで税金を取られるというのはあり得ないのですが、借入金を返すにあたっての返済資金が問題になるのです。
繰り返しますが、借入金には税金はかかりません。お金を借りても、儲けたわけではないし、返しても損したわけではないからです。

しかし、借りたものは必ず返さなければならず、返すための「返済資金」はどこからもたらされるかというと、会社の利益です。
そして、利益には税金がかかります。
つまり、基本的には「借入金を返すためには利益をあげなければならず、利益には税金がかかる」ということです。
税金を払いつつ、返済をしなければなりませんから、借入金と税金は切っても切れない関係なわけです。

しないほうがいい借入

借入金は使い方次第で事業のスピードを上げてくれるなど大きなメリットがある一方で、将来の利益に依存するため、その予測が難しく、返済においては税金のことも考慮しなければなりません。
したがって、借りたほうがいい場合もあれば借りないほうがいい場合もあります。会社の状況によって様々なので、一概には言えませんが、借りないほうがいいのは「利益の見通しが立たない」場合でしょう。

借入金は将来の利益を先取りしているだけですから、利益の見通しが立たないにもかかわらず借入すると、行き詰まるのは目に見えています。
逆に、返せる見通しがあり、一時的な資金都合をつけるための借入金は、借りても問題ないでしょう。

たとえば、事業の拡大に伴う増加運転資金のためとか、季節変動によるつなぎの資金とか。
資金計画・資金繰りは一度後手を踏み出すとなかなか先手を取れなくなりますから、必要なときは素早く借りるという先手をとるべきです。資金繰りで後手を踏み続けるツラさは厳しいものがありますので。