共働き夫婦は、仕事・家庭を両立させなければならず、とにかく忙しい。そのため、節約できる時間は移動時間しかなく、結果として都市部に住まざるを得ません。
子育てにおいても、保育園への送迎や、塾や私立中学へのアスセスも考慮すると、やはり都市部を選択することになります。
都市部での生活は、住宅が狭くなるなどの制約も多く、コストも高くなりますが、副次的なメリットもあります。
ここでは、見落とされがちな都市部での生活(つまり立地選択としての都市部)の優位性をご紹介します。

この記事は共働き夫婦の資産形成をテーマにしたシリーズの一部です。
全体像をおさえてから読み進めたい方はこちらの記事を先にどうぞ

都市部に住むことは“戦略的な制約”
移動時間の節約
一般的に都市部の方がアクセスが良く、通勤・通園・通学・移動の時間が節約できるのは大きなメリットです。
片道30分、往復で1時間節約できれば年間で250時間程度を別の時間に充てることができます。
時給換算すれば、それなりの金額になります。
生活インフラ
保育園・病院・教育機関なども都市部に集中しています。(もちろん職場も)
「職住近接」とよく言いますが、多忙な共働き夫婦にとっては、「職住」だけでなく、その他の生活インフラも近接している方が、時間効率の面で遥かに効率的です。
生活の成立条件
多忙ゆえに生活に必要な要素を住まいの近郊に集中させることは、多忙な共働き夫婦にとっては、「理想」というよりも「生活の成立条件」となっています。
確かに、郊外の自然豊かで静かな環境にも魅力はありますが、そんなことを言っていられない、コストがかかっても都市部に住まざるを得ない、というのが実情ではないでしょうか。
【本題】都市部に住むことで得られる見落とされがちなメリット
土地やマンションの資産価値が落ちにくい
不動産の価格は、都市部に需要が集中するため、需要が安定し、価格も安定しやすい傾向にあります。
不動産の所有には、固定資産税が高いなどのデメリット(住宅は固定資産税は軽減されています)がありますが、売却や賃貸などの出口戦略を取りやすい、という大きなメリットもあります。
地方の郊外の不動産は、売るに売れない、という状況に陥りがちです。
固定資産税などの高さと、売りやすさはトレードオフといえますが、資産の流動性は住宅取得における最大の弱点なので、『売れる』というのは極めて大きなポイントです。
小規模宅地等の特例が効きやすい
出口戦略の派生として、「相続」があります。
相続における最大のネックは相続税ですが、「小規模宅地等の特例」は都市部の宅地のほうが制度上の恩恵を受けやすいのが実情です。
小規模宅地等の特例は、生活の基盤となっている宅地等(居住用の宅地など)について、一定要件を満たせば50〜80%減額できるというものです。
適用できる宅地等には、「面積の上限」がありますので、必然的に単価の高い土地のほうが有利になる、という仕組みです。
うまく活用できれば、資産を次世代に残していけますから、遠い将来の相続の話であったとしても、選択肢を残しておくことで、精神的な負担は軽減されます。
住み替え時の売却がしやすい
所有資産を売却し、売却益が発生すると所得税や住民税が課税されますが、一定の居住用不動産には売却益から3,000万円を控除するという特例があります。
売却益があるということは、基本的に買ったときより価値が高まっているということですから、資産形成がうまくいったともいえます。
さらに、売却益の課税が軽減されれば、住み替えなども、より対応がしやすくなるのも大きなメリットでしょう。
築年数による目減りより、立地の価値が残る
都市部の需要が安定している不動産、特に土地は価値の目減りがありません。
会計的には建物の価値は、物理的な損耗に伴って経過年数とともに減っていくのですが、土地はそのようなことはありませんから、価値が減りません。
都市部の不動産の方が、物件の価値が読みやすいというのはメリットです。
また、マンションであっても都市部は需要が比較的安定していますので(立地や築年数などの要素ももちろんあるものの)、価値が残りやすい。
荒っぽくいえば、ローンを返せば返すだけ、資産形成が進んでいきやすい、ともいえます。
土地選びが「住宅取得」ではなく「家計戦略」になる
住宅取得は、資産性の高い立地・物件を選択できれば、単なる家賃の先払いでなく、資産形成や家計のリスクヘッジにつながります。
都市部の不動産は、コストが高いものの、価値が担保されやすいというのは、保有資産に対するリスクヘッジにつながります。
購入時や保有時には、見えにくいものの、出口の時点で税制優遇もありますから、トータルで見たときには、良い立地・物件を選ぶことは、合理性が高いです。
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