「伝え方が9割」の書評です。コピーライターの著書が、コトバの伝え方、要はテクニックを具体例を織り交ぜながら体系的に説明している本です。
伝え方で可能性が変わる
「この領収書落とせますか?」
「いつもありがとう、山田さん。この領収書、落とせますか?」
営業マンがオフィスで事務のお姉さんに経費精算のお願いをしている場面での一言です。著者によると、前者は可能性が低く、後者は可能性が上がるそうです。
なぜなら、「ありがとう」と感謝するコトバに、人は否定をしにくいから。加えて、「山田さん」と名前を言われると、人は応えたくなるからだそうです。
もちろん、全てのことが必ずOKになるわけではありませんが、その可能性が大きくなれば、人生は大きく変わります。
まさに、伝え方一つで可能性が広がり、大げさな話、人生が変わる、と。
ノーをイエスに変えるステップ
①自分の頭の中をそのままコトバにしない
②相手の頭の中を考える
③相手のメリットと一致するお願いをつくる
以上のステップを踏めば、誰でも、可能性の高まる(ノーがイエスになる)伝え方が出来るようになるそうです。
さらに、②相手の頭の中を考える には、7つの切り口が有効で、
①相手の好きなこと
②嫌いなこと回避
③選択の自由
④認められたい欲
⑤あなた限定
⑥チームワーク化
⑦感謝
つまり、冒頭の経費精算の下りでは、この「⑦感謝」を使ってお願いをとおしているんですね。
さすがに「伝え方が9割」といっている著者だけあって、内容をコンパクトかつ明瞭にまとめてあります。そして、それぞれについて具体例を挙げて説明をしているので、思わず「そうなのかなぁ」と納得してしまいます。
非常に分かりやすいけど…
本書に載っている方法を実践できれば、ノーをイエスに変える可能性が上がりそうだと思えます。そのくらい、伝え方のテクニックは重要なんだと思い知らされると同時に、怖さも少し感じます。
税理士のような職業ですと、クライアントとの間に大きな情報ギャップがあります(税理士などの専門家は分かっていても、クライアントからは分かりづらいことブラックボックスになっていることは意外と多いです)から、クライアントの思考を誘導(表現が適切かどうか分かりませんが)することも場合によっては可能です。
ですから、伝え方が大事なのはもちろんなのですが、テクニックに走りすぎず、誠実に分かりやすく伝えることも大事なのではないかと思った次第です。(そういった意味でも、伝えられる側の防衛策として読んでおくのも良いかもしれませんね)