共働き世帯などの時間に追われる生活者は、「通勤・保育園等への送迎・通学・買い物・病院など」へのアクセスを考えると、多少住宅価格が高くても、都市部を選ばざるを得ないケースも多いでしょう。
一方で、同じ予算を使えば、郊外や地方の方が広くて豪華な住宅を取得できます。それでも、あえて都市部の普通の戸建てを選ぶ合理性はあるのでしょうか。
税務・会計の視点から住宅を土地と建物に分けて考えると、住宅にかけるお金は、建物よりも需要のある土地に配分した方が合理的になりやすいと考えられます。
都市戸建ては一般的に、住宅価格に占める土地の割合が高く、敷地面積は小さくなります。この特徴が、固定資産税、不動産取得税、相続税などの住宅税制と相性がよいからです。
この記事では、建物比率の高い地方の豪邸と、土地比率の高い都市部の普通の戸建てを比較し、都市戸建ての税務・会計上のメリットを解説します。
※本記事は、戸建てを取得することを前提として、住宅予算を土地と建物のどちらに配分するかを検討するものです。マンションと戸建て、持ち家と賃貸の優劣を比較するものではありません。
- 本記事における「都市戸建て」の意味
- 建物より土地にお金をかける会計上の理由
- 都市戸建てと住宅税制の相性がよい理由
- 不動産取得税・固定資産税・相続税における違い
- 都市戸建てが有利にならないケース

この記事は共働き夫婦の資産形成をテーマにしたシリーズの一部です。
全体像をおさえてから読み進めたい方はこちらの記事を先にどうぞ

この記事における「都市戸建て」の意味
本記事でいう「都市部」は、東京都心など特定の地域を指すものではありません。次のような条件を満たす地域を想定しています。
- 土地需要がある
- 土地単価が相対的に高い
- 住宅価格に占める土地の割合が高い
- 戸建ての敷地面積が200㎡または330㎡以内に収まりやすい
この条件を満たすなら、東京都心でも地方都市の中心部でも、本質的な違いはありません。
反対に、大都市圏内であっても、土地需要が弱く、価格が下落している地域は、本記事でいう都市部には当てはまりません。
つまり、「都市部だから有利」なのではなく、土地単価が高く、土地比率が高く、敷地がコンパクトな住宅ほど、税制上の優遇を効率的に利用しやすいということです。
共働き夫婦にとって都市部は「戦略的な制約」
多忙な共働き夫婦等にとって、生活に必要な施設が近くにあることは、単なる理想ではなく、仕事と家庭を両立させるための成立条件となることがあります。
都市部の住宅は、価格が高く、面積も狭くなりやすいという制約があります。しかし、住宅価格の多くが需要のある土地に配分されていれば、その価格の高さは単なる住居費ではなく、将来に残る資産への支出という側面を持ちます。
建物より土地にお金をかける会計上の理由
会計的に見ると、住宅に係る「土地と建物」は性質の異なる資産です。
建物は、使用や経年劣化によって価値が減少するため、会計上は減価償却資産として扱われます。実際の売却価格も、通常は築年数の経過とともに低下します。
これに対し、土地は経年によって物理的に消耗する資産ではないため、減価償却の対象になりません。
土地も人口減少や需要の低下によって、土地価格が下がることはありますが、『通勤・通学や生活の利便性が高く、継続的な需要がある土地』は、需要の弱い郊外や地方の土地に比べて価格が維持されやすい傾向があります。
同じ5,000万円の住宅でも、
- 土地4,000万円・建物1,000万円
- 土地1,000万円・建物4,000万円
では、将来残る資産の性質が異なります。
豪華な建物に多額の資金を投じても、建物は経年劣化します。住宅予算を需要のある土地に振り向けた方が、将来の資産価値を維持しやすいということです。
土地需要は公示地価や路線価で確認する
将来の土地需要を正確に予測することはできません。
ただし、公示地価、基準地価、路線価の推移を確認すれば、その地域の土地価格が過去にどの程度維持されてきたかを確認できます。
できるだけ複数年の推移を確認し、価格が維持・上昇・下落している背景を、人口動態、交通利便性、周辺開発などとあわせて検討します。これにより、その地域の土地需要を大まかに把握できます。
公示地価や路線価だけで個別物件の売却可能性まで判断することはできませんが、土地需要が急速に失われている地域を避けるための客観的な材料のひとつにはなります。
都市戸建ては取得時の税制と相性がよい
土地(取引)には消費税がかからない
土地の譲渡は消費税の非課税取引です。
一方、事業者から新築住宅などを取得する場合、建物部分には消費税が含まれます。
そのため、同程度の住宅価格であれば、建物比率の高い住宅より、土地比率の高い住宅の方が、住宅価格に含まれる消費税負担は小さくなり、土地に多くの金額が配分されることになります。
ただし、中古住宅を個人から購入する場合など、建物についても消費税が課税されないケースがあります。
不動産取得税は「高単価かつ広すぎない土地」と相性がよい
一定の住宅とその敷地を取得した場合、土地にかかる不動産取得税には軽減措置があります。
軽減額は、原則として次のいずれか多い金額です。
- 4万5,000円
- 土地1㎡当たりの価格×住宅の床面積の2倍(上限200㎡)×税率
都市戸建ては、土地単価が高い一方で、敷地面積が200㎡以内に収まりやすいため、この軽減によって土地の不動産取得税がゼロになるケースもあります。
また、住宅部分の軽減には床面積要件があり、一般的な自己居住用住宅は対象になりやすい一方、床面積が240㎡を超えるような豪邸は対象外となることがあります。
不動産取得税の軽減措置も、土地単価が高く、敷地と建物が広すぎない都市戸建てと相性のよい仕組みになっています。
登録免許税では土地比率が高い方が不利
一方、登記の際に支払う「登録免許税」は土地比率の高い住宅がやや不利です。
一定の住宅用家屋には、所有権保存登記や所有権移転登記の軽減税率があります。土地の売買による所有権移転登記にも軽減措置はありますが、住宅用家屋より税率は高く設定されています。
そのため、同じ固定資産税評価額であれば、土地に評価額が多く配分されている住宅の方が登録免許税は高くなります。
もっとも、登録免許税は取得時に一度負担する税金であり、税率自体がそこまで大きいとは言えないため、保有中や相続時の税負担(そもそも相続税は必ず発生するわけでもないため)とは分けて評価する必要があるでしょう。
都市戸建ては固定資産税を圧縮しやすい
固定資産税には、住宅用地の課税標準を軽減する特例があります。
- 住宅1戸当たり200㎡までの小規模住宅用地:価格の6分の1
- 200㎡を超える一般住宅用地:価格の3分の1
例えば、土地と家屋の固定資産税評価額の合計が同じであっても、評価額の多くが200㎡以内の土地に配分されている住宅は、その部分を6分の1に圧縮できます。
これに対して、建物には住宅用地のような恒久的な6分の1特例はありません。
したがって、
- 土地比率が高い
- 敷地が200㎡以内
- 建物比率が(相対的に)低い
という都市戸建ては、同程度の評価額の地方戸建てより、固定資産税を圧縮しやすい構造です。
ただし、固定資産税額が必ず地方戸建てより安くなるという意味ではありません。都市部の固定資産税評価額自体が高くなる傾向にあるため、6分の1に圧縮した後の税額も相応に大きくりがちです。評価額が大きければ1/6になるベースも大きい、つまり税制における優遇の「効率」がよいという意味です。
また、市街化区域などでは都市計画税が課税されます。都市計画税についても住宅用地の軽減はありますが、都市計画税が課税されない地域との比較では追加負担となります。
都市戸建ては小規模宅地等の特例を有効に使いやすい
住宅の出口には、売却だけでなく相続もあります。
相続税における小規模宅地等の特例では、一定の要件を満たす特定居住用宅地等について、330㎡まで評価額を80%減額できます。
この特例には、金額ではなく面積の上限が設けられているため、「土地の単価」が高いほど有効に作用します。
また、都市戸建ては敷地全体が330㎡以内に収まりやすいのに対し、地方の広い敷地は330㎡を超える部分が特例の対象になりません。
さらに、住宅全体の相続税評価額が同程度であっても、
- 土地比率が高い都市戸建て
- 建物比率が高い地方戸建て
では、80%減額できる土地の割合が高い都市戸建ての方が、特例適用後の評価額を大きく圧縮できます。
つまり、小規模宅地等の特例は、土地単価が高く、土地比率が高く、敷地が330㎡以内に収まる住宅ほど有効に利用できます。
ただし、相続税が発生しない世帯や、特定居住用宅地等の人的・利用要件を満たさない場合には、この特例による直接的なメリットはありません。
売却しやすい土地は出口を選びやすい
住宅は、購入した時点だけでなく、将来の出口まで考えて取得する必要があります。
資産の換金しやすさを「流動性」などと言いますが不動産は流動性が低いため、必要なときにすぐに換金しづらいです。
その意味では、需要のある都市部の土地については郊外に比べて買い手を見つけやすい傾向にあります。
一定の居住用財産を売却して譲渡益が発生した場合には、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
この制度は都市部の住宅だけを優遇するものではありませんが、土地価格が維持され、実際に譲渡益が発生する住宅の方が、制度を利用する場面は生じやすくなります。
都市戸建てなら必ず有利とは限らない
都市部にある戸建てなら、どの物件でも資産性が高いわけではありません。
次のような場合には、本記事の考え方は当てはまりにくくなります。
- 土地需要が継続していない
- 周辺の公示地価や路線価が長期的に下落している
- 災害リスクが高い
- 接道、形状、権利関係などに問題があり売却しにくい
- 周辺相場に比べて取得価格が高すぎる
- 建物価格の割合が高い
- 敷地面積が200㎡・330㎡を大きく超えている
- 相続税が発生せず、小規模宅地等の特例による実益がない
税制上のメリットがあっても、割高な土地を購入してよい理由にはなりません。
税制は、需要のある土地を適正な価格で取得するという前提の上で、資産形成を加速させるものです。
まとめ:住宅取得を「土地と建物への資金配分」として考える
住宅を「広いか、狭いか」「豪華か、普通か」だけで比較すると、同じ予算なら郊外や地方の住宅の方が魅力的に見えます。
しかし、住宅を土地と建物に分けて考えると、見え方は変わります。
建物は経年劣化し、通常は価値が低下します。一方、需要のある土地は、建物より価値が維持されやすい資産です。
税制上も、土地には次のような措置があります。
- 土地の譲渡に消費税がかからない
- 住宅用土地の不動産取得税が軽減される
- 住宅用地の固定資産税の課税標準が6分の1または3分の1になる
- 小規模宅地等の特例により、一定の土地を330㎡まで80%減額できる
登録免許税や都市計画税などの負担はありますが、同程度の資産価値で比較すれば、建物比率の高い「地方の豪邸」より、需要のある土地に資金を配分した都市戸建ての方が、税務・会計上の合理性は高くなりやすいと考えられます。
都市戸建ては、土地単価と土地比率が高く、敷地面積がコンパクトであるため、住宅用地に設けられた税制優遇を効率的に利用しやすい住宅です。
税制上の優遇だけで住宅の良し悪しが決まるわけではありませんが、同程度の資産価値で比較すれば、建物に多額の資金をかけるより、需要のある土地に資金を配分した方が、将来に資産を残しやすくなります。
税務・会計の視点から住宅を選ぶなら、建物の豪華さだけでなく、土地の需要、土地比率、敷地面積を重視することが重要です。

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