大は小を兼ねるといいますが、経理の世界では当てはまりません。上場企業(大会社)の経理と、中小企業の経理は違います。
取り巻く環境が違う
中小企業の定義はいろいろとあるのですが、ここでは「上場していない」「比較的規模の小さい」「オーナー会社」をいうことにします。
上場している会社は、上場しているため、会社の状況を株主などの外部の関係者に報告する必要(法律でも求められています)があります。
ですから、外部の関係者が見ても耐えられるような会計ルールに則った書類を作るための経理をします。
一方の中小企業は、上場しているわけではないので、外部の関係者に知らせる必要性に乏しいので、外部の関係者を上場企業ほどは意識しません。
これは、上場企業の多くは「株主と経営者が異なる」のですが、中小企業の多くは「株主と経営者」が同じということからもわかります。
経理と税金の申告は別
経理は会社の経営状況などを正しく把握するために行います。
その経理で得られたデータを加工して、税金の計算を行います。
ですので、経理(会計)と税金(税務などといいます)は別物なのです。
上場会社(大企業)は、経理と税金を完全に切り離しています。(外部の関係者に適切な報告をするため)
ところが、中小企業の場合、外部の関係者への報告は上場会社(大企業)ほどは厳密なものは必要ありません。
また、中小企業は大企業に比べて、経理にさけるパワーも大きくありません。
そこで、上の図のようなイメージですが、中小企業は経理(会計)と税金関係の処理(税務)をまとめて行ってしまいます。
経理にさけるパワーに乏しい、中小企業の場合、このようにしたほうが合理的なわけです。
目的が違うのだから
もちろん、上場会社(大企業)と中小企業が全く異なることをやっているわけではありません。
基本的には同じなんだけれども「一部に」違う部分があるということです。
目的が少し違うのだから、それぞれの経理が違って当然です。
上場会社の経理をしていた人が、中小企業の経理に転職してきて、そのあたりをよくわからないまま採用した社長が「あいつは使えない」などと思うということがあります。
使えないということではなく、そのあたりがわかっていないということでしょう。
経理本が使えないのも同じ理由
経理について解説した書籍、いわゆる経理本ですが、同じことがいえます。
上場会社の経理向けに書かれた経理本を、中小企業の経理担当者が読んでも、あまり役に立たないことも十分にあり得ます。
また、逆に、中小企業向けに書かれた経理本を上場会社(大企業)の経理担当者が読んでも、役に立たない部分もあるでしょう。(純粋な勉強目的であれば、役に立たないということもないのでしょうが、明日からの仕事に活かそうとなると…ということです)
経理の書籍にはそのあたりのことを書いているものもあるのですが、読む側が見落としていたり、知らなかったりすれば残念ながら「この本、使えない」ということになります。