相続税の納税資金を準備しないと…延納、物納は非常に厳しい

相続税は財産に対して課税されるので、税額に対してお金の裏付けが無い場合があります。そのような場合には、分割で支払ったり(延納)、モノで支払ったり(物納)が認められていますが、非常に厳しいのが現状ですので、納税資金の準備はしっかりと考えなければなりません。

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相続税の納税方法

 相続税は金銭一時納付が原則となります。要するに、お金で一括でおさめてくださいということなのですが、相続税の場合には所得税や法人税のように利益に課税されるのでなく、財産に課税されることから、税金に対してお金の裏付けが無い場合も少なくありません。

 

お金の裏付けが無い、つまりお金で納付することが難しい場合には、一定の要件の元に分割で納付をする(延納)と、延納してもお金で納付するのが難しい場合にモノでおさめる(物納)が認められています。

 

ちなみに、相続税には延納と物納の両方が認められていますが、贈与税には延納の制度しかありません。贈与税は物納が出来ませんので、贈与税が支払えないならば贈与はしない方が無難です。

 

延納の要件は厳しい

 相続税を一括でなく、分割で支払うことを延納と言います。一定の要件を満たせば、最長で一般的には20年ほどの年賦延納が可能です。(年賦ですので、1年に1度ずつ税金を支払っていくことになります)

 

延納の要件はいくつかあるのですが、

①相続税額が10万円を超えること

②金銭で納付することを困難とする自由があること(延納許可限度額)

③延納税額に相当する担保を提供すること

④申告期限までに申請書等の書類を出して申請すること

 

①については、単純な話で、金額が大きくないと延納できないよってことですね。

 

②が厳しいので、後述します。

 

③については、延納とはローンで支払うわけですから、ローンの際には担保が必要というのは当然のことですので、これも分かる話です。

 

④については、「延納したいんだったら、自分で申請しなさい」ってことですね。税務署が延納しませんか?と聞いてくれるわけではありません(笑)また、③の担保に関わる書類を添付しなければなりません。

 

これだけでも結構めんどくさいですが、さらに厳しいのが②延納許可限度額です。

 

延納が受けられる金額は…

 延納が受けられる金額のことを「延納許可限度額」といいます。一括で納付するのが難しいので、分割で納付させてもらえる限度額ってことなのですが、計算式は次のとおりとなります。

 

延納許可限度額 = 納付税額 − (現預金など − 3ヶ月分の生活費 − 1ヶ月分の事業資金)

 

算式を見れば分かりますが、3ヶ月分の生活費と1ヶ月分の事業資金を除いた他は、手もとにある預貯金などを納付に当てて、それでもおさめられない部分に限定されています。

 

この預貯金などは相続で手に入れた財産だけでなく、税金を納める方(納税者)が元々持っていた財産(納税者固有の財産)も考慮に入れていることに注意が必要です。言葉が悪いですが、納税者が金銭的に相当カッツカツになっていないと延納が認められないということですね。

 

延納すると利息を払うが、利息も高い

 延納とは分割で税金を支払うことなので、当然のことながら利息が発生します。利子税と言いますが、この利子税は相当高いです。延納期間や換金の難しい財産をどの程度持っているかによって利子税の割合が変わりますが、年3.6%~6.0%ほどです。(高すぎるので、引き下げる措置がありますがそれでも高いです)

 

 先に述べた、延納の条件の厳しさと利子税の高さから現実問題としては延納は選択がしづらい制度だと言えるでしょう。

 

 納税資金に困った納税者の方達は、銀行などの金融機関から借入を起こして相続税を納付しているのが実態です。(金融機関から借り入れた方が利息が安いので)それらに合わせて、相続した土地を売却して納税資金の捻出を図る方もいらっしゃいます。

 

 相続で取得した土地を申告期限から3年以内に売却すると、売却益にかかる所得税が少し安くなります。(取得費加算の特例)

 

 ただ、土地も売却するのに手間も時間もかかりますので納税資金をしっかりと準備しておくにこしたことは無いでしょう。

 

まとめ

・相続税は分割でおさめたり、モノでおさめることも出来る

・ただし、その要件は相当厳しい

・納税資金に困った人は借入を起こしたり、相続財産の土地を売却したり

・事前に納税資金を準備しておく方が無難