税理士が考える潰れにくい会社の作り方

会社の目的は、儲けることですが…もっと大事なことは、潰れないことです。ただ、潰さないというのは簡単なようで意外に難しい。

潰れにくい会社の作り方

社長の係数力が高い

係数能力とは数字を把握する力です。

経営における結果(データ)は数字で表れます。

その数字がどういったものなのかをしっかりと見極められる能力、言い換えれば、会社の「お金がどのように流れているのか」がしっかりと説明できる能力です。

係数力が高ければ、現状認識をしっかりできるので適切な対策が取れます。

適切な対策を取れれば、それだけ会社が安定し潰れにくくなるというわけです。

係数力を磨くためには、まずは会社のお金がどのように流れているのかをきっちりと把握することでしょう。そのうえで、試算表や決算書などと辻褄が合っているか確認します。

固定費が低い

売上に応じて支払いが変わる支出と変わらない支出があります。

前者の代表が材料費や仕入れで変動費といい、後者の代表が人件費や地代家賃で固定費といいます。(会社の事業内容によって変動費と固定費になるものは変わります)

売上に応じて支払いが変わらない固定費は、売上が少なくなったとしても一定の金額を支払わなければなりません。

ですから、固定費が大きくなると資金繰りが苦しいわけです。

固定的な支出は、ゼロにすることは不可能なのですが、規模に比して大きくなりすぎないように気をつけないといけません。

借入金が少ない

借入金の返済は支出ではありますが、費用ではありません。

税金は「儲け(利益)」に対してかかるので、借入金は儲けたわけでも損したわけでもなく、借りたものを返すだけ。

ただ、借入金の返済が大きくなりすぎると儲かっているのにお金が残らないという少々ややこしい状態になります。

借入金は利用の仕方によっては企業経営にとても有効な方策ですが、考えなしの借入は返済に苦しむだけ…ですので、考えなしの借入金が少なければそれだけ会社としては潰れにくいです。

人に対する工夫

事業の種類によっては、人を雇わなければならない場合もあります。

人を雇うと、様々な問題が起こります。(メリットも多いですが)

病院に行った際に一定額を負担してくれる健康保険、年齢を重ねて働けなくなった際に受け取るための年金保険、これらを合わせて社会保険といいますが、社会保険は従業員と会社で折半して負担です。極めて大きな負担ですので、資金繰りに大きく影響を及ぼします。

また、給料を払うことに伴う煩雑な事務の問題も生じます。給料の計算、社会保険の申請や届け出、従業員の給料にかかる税金の源泉徴収や特別徴収…。

事務にとどまらず、従業員同士の人間関係トラブル、健康面やメンタルの問題、退職に際しての引き継ぎなども考えなければなりません。

上記は首尾よく雇うことができた場合の話ですが、人が集まらない場合などは募集のためのコストも掛かります。(これが結構バカにならないのです…)

これから事業を始めようとする場合には、少ない人でも回せるのか。少人数のほうが、上記の手間やコスト、リスクが減ることは確実。

事務などは外注できたりしますが、組織を作るのは経営者の仕事であって、人を雇う事業であればこういった問題は必ず生じますので、対応がうまくできれば潰れにくいし、そうでなければ…。

販売チャネルが細い(ちょっと上級編)

どんな事業であれ、お客さんをどのように見つけてくるかというのが大事なのですが、お客さんを見つけてくるルートが多くあるのか少ないのか、太いのか細いのか。

開業前にありがちな失敗事例ですが…

お客さんをどのように見つけてくるのか、という方法論が殆ど無いというものがあります。

いいものを作ったり、いいサービスを提供していれば会社は潰れないというものでもありません。どうやってお客さんを見つけてくるのか…ルートが沢山あればあるほど、そのルートが太ければ太いほど潰れにくいです。

ただ、最初からルートが有る人は少ないので、先述の通り固定費を下げつつ様々な方法を試していくというのがセオリーになります。開業する前の人は、お客さんを見つける方法(いわゆるマーケティング)は勉強したり考えておいて決して損はありません。

収入源が複数

収入源は複数ある方が安全です。

売上を1,000万円あげるとして、一つの得意先だけで1,000万円あげるより10個の得意先で100万円ずつ売上を上げるほうが安全なのは明白です。

また、事業の種類も複数あったほうが安全です。サラリーマンの方でも副業を持ってらっしゃる方も多くいるように、事業を始めようとしても最初から軌道に乗りにくいのであれば、別のところで給料をもらったり外注になるというのも。

会計の世界では、事業(自分で商売をすること)も投資の一つと考えます。

株式投資などの世界では、分散投資は基本中の基本。「卵は一つのカゴに盛るな」はよく知られた格言ですが、自分の事業(商売)やさらには自分の人生を一つのかごに盛っていいんでしょうかね。(ただし、よくわからないカゴに盛るというのも危険なのは言うまでもありません。投資には勉強が必須です。)

良い相談相手がいる

あと、意外と重要なのが「相談相手」がいるということでしょう。

経営者は孤独です。そして決断の連続です。

自分で勉強するのは当然として、判断に迷ったりすると話を聞いてほしくなったり、背中を押してほしいものです。

そういった相談相手がいるといないのとでは、メンタル的に違うのですが…

また、相談というのは初期にすることで効果を発するもので、問題がどうにもならなくなってから相談しても後の祭り。

相談相手は一人とは限らず、分野ごとに相談相手を分けてもいいでしょう。