上場していない会社は、資金調達の方法が融資に限られますから、融資が受けられないと、その経営は極めて厳しいものになります。
ですから、融資を受けられるようにしておくのが大事であるのですが、融資以外に会社を守る方法もあります。いずれも、「ことが起こってから」というよりは、「ことが起こる前に」準備すべきことです。
キャッシュを分厚く持つ
キャッシュとは会計の世界では現金預金のことですが、キャッシュをある程度手元に持っておくことは、会社を守るうえで重要です。
キャッシュは、いつでも使いたいときにお金として使えるものであれば現金でなくても構いませんから、普通預金や当座預金なども「キャッシュ」です。
また、中小企業に限っていえば、「オーナー社長の持っているキャッシュ」も、いざというときのための予備のキャッシュと考えて良いでしょう。
ですから、オーナー社長の役員報酬はいざというときのためにもあまり低くし過ぎないように、考えなければいけないのです。自分の手持ち預金を事業に(一時的にしろ)出したくないというのであれば、経営はしないことです。
何重ものセーフティネット(倒産防止共済、小規模企業共済、契約者貸付、定期預金)
いざというときのための、救済システムをセーフティネットといい、中小企業のためのそれも融資以外にも用意されています。
①倒産防止共済
得意先が倒産すると、入金予定だったお金が入ってこず、当社も倒産の危機に陥ることもあり得ます。
このように得意先が倒産したことにより、その取引先も倒産するというような事態を「連鎖倒産」といいますが、これを防ぐための共済(保険)が、倒産防止共済です。
倒産防止共済の掛金(保険料)を一定期間支払っておけば、払った金額に対して一定の割合で、いざというとき(得意先が倒産)に、お金を貸してくれます。
また、倒産防止共済を運営しているのは国の関係機関のため、支払った掛金は税制上の優遇を受けられます。
解約しても、掛金のうち一定額は返ってきますから、倒産でなくても、資金的に困ったときには使うことができるので、資金的な面さえクリアできれば加入したいところです。
上記の倒産防止共済と類似の制度として、小規模企業共済もあります。個人事業主などの退職金準備的なものとして知られていますが、これも貸付制度などがあるため、同様に資金的な面などがクリアできるのであれば、備えておけば心強いでしょう。(貸付そのものは条件を考慮して受けるべきなのは断っておきますが)
②契約者貸付
法人保険は、支払った保険料のうち一部が保険の運営などに充てられ、一部は貯金のようなイメージで保険会社に積立てられます。
保険会社に貯金のように積立てられたお金を、契約者(会社)が借りる制度を「契約者貸付」といいます。(会社から見れば借入ですが、保険会社から見れば貸付です。)
契約者貸付は、自分の貯金を引きだすイメージですから、積立てた金額以上には引き出せませんが、一般的な融資に比べてスピーディーに入金が実行されます。
法人保険は節税という観点からは利用しづらくなっていますが、いざという時のためという保険本来の側面から考えると、まだ価値はあるでしょう。
税金は払っておく(繰戻還付含めて)
税金を払っておくのは義務だからというだけでなく、回り回って自分のためでもあります。
①繰越欠損金・繰戻還付
適正な申告をしておくという意味です。社会の構成員としての会費が税金ですから、税を払わない(申告していない)と、社会からの救済を受けられません。
また、税の世界では損失を繰り越すことができるというのはよく知られた話です。今年に500万円の赤字だとして、これを翌年以降に繰り越せる(持ち越すことができる)ので、来年が300万円の利益だとしたら相殺し、残りの200万円はその次の年以降に持ち越せます。(これを繰越欠損金といいます)
逆に、前年まで黒字で、今年赤字だったとしたら、前年に遡って税金を返してもらえる制度もあります。(繰戻還付)
いずれにせよ、税を正しく申告している前提の制度ですが、税を払う見返りもそれなりにあるということです。
②税を払わないとお金が貯まらない
税と資金の関係ですが、税を払わないとお金(会社の資金)は溜まりません。
難しい理屈はさておき、そういう仕組みになっています。
ですから、適度に節税などする分にはいいのですが、過剰に節税すると、節税のために本来なら使う必要のないお金を使ってしまい、結果として会社のお金が減ってしまう、ということも。
過度に税を払えというわけではありません、行き過ぎた節税はせず、適正な税を払おう、ということです。
情報を取るチャネルを確保
経営基盤の弱い中小・中堅企業が生き残るためには正確な情報を取らなければなりません。だめな会社は情報に踊らされることを考えると、情報をどこから取るのかは重要でしょう。
①専門家とのパイプ
専門家(弁護士、社労士、税理士…など)とのパイプは持っておくに越したことはありません。
法律的な相談をしたいときには、弁護士さんの力を借りるのが最も確実です。
相談に行くのにハードルが高いし、フィーも気になるところですが、揉めたときのリスクをよく考えれば、そこは飛び越えるべきです。
労務であれば社労士、税であれば税理士。
一般的な中小企業であれば顧問税理士はいるはずですが、そういった定期的に連絡を取る専門家がいれば、情報を取るチャネルの一つとしても活用できるし、相談もできる。
私自身の経験でもありますが、相談に来るのが手遅れのタイミングで来る人がいます。
早めであれば対処できたのになぁ…と。
目先の面倒臭さや、心理的なハードルとリスクを天秤にかけてよく考えれば自ずと答えは出るはずです。
②自身でも情報を気にしておく
経営者は忙しいので、自分自身で情報を取りにいくということが難しいのはわかるのですが、それではダメだと断言します。
専門家や同業者などから情報を得たとしても、それを判断する必要があります。
特に顕著なのがネットでしょう。玉石混合の情報が氾濫しているので、誇張が過ぎたり、嘘が入っているものも少なくありません。
また、情報を得ても正しく理解できなければ無用の長物ですから、自身でも情報を取る(自身でも考える)という姿勢が必須です。
あの人が言うから、そうしよう…とかでは危機は乗り切れません。(そうしたくなる気持ちはわからないでもないですが、いざというとき「あの人」は助けてくれませんよ。)