税理士も商売の一つですから、クライアントを獲得しないと成り立たないのですが、税理士のマーケティング活動は難しいです。
税理士業は少数派
小売業や飲食業などの数が多い事業についてのマーケティング手法は書籍もよく見かけるし、ネット上でも情報が多く見られます。
一方、税理士向けのマーケティング手法は書籍なども少なく、ネット上でも情報はそこまでありません。数が少なければ、それだけ需要も低いわけですから、世に出る情報量に格差があるのも仕方がないのかと。
質の高いマーケティング情報にアクセスするのが難しいというのは強く感じます。
方向性が画一的
税理士向けのマーケティング本なども少ないけれど、あることはあるのですが、方向性が画一的で、その方向性を指向する人にはいいのでしょうが、そうでなければあまり役には立たないです。
どのような方向性かと言えば、「業務をある程度定型化して、規模をとっていこう」というような感じです。
その方向性自体は否定するものでもないし、アリだと思うわけですが…圧倒的につまらない(笑)。
飲食業で例えると
飲食業でいえば、「業務をある程度定型化して、規模をとっていこう」というモデルは、チェーン店型の業態でしょう。
しかし、飲食業でもジャンルも様々あれば、チェーン展開せずに、店主のこだわりの店みたいなのもあるし、価格帯もさまざま。
私はチェーン店を否定しているのではなく、それしかないのはつまらないと言っているだけです。(個人的な好みですので、気を悪くされた方には申し訳ありませんが…)
税理士業も、チェーン店もあっていいし、こだわりのオヤジが作る1日20杯しか作らないラーメン屋(儲かるかどうかは知りませんが…)みたいなノリの税理士もいていいと思うわけです。
でも、マーケティング本などはチェーン店型の手法しか押しませんから、その指向に合わない人にとっては、非常につまらなく難しい。
特殊性・個別性が強いわりに分かりにくい
税理士が提供するサービス、お金をもらう商品は、同じように見えてまったく違います。
「クライアントと打合せ」と称して訪問しても、ひたすらデータの正確性を検証するという税理士もあれば、データの確認はそこそこに(後で事務所で確認する)経営者の話をひたすら聞き、質問に回答するというスタイルの事務所など、スタイルはさまざまです。
「巡回」などと一括りに扱われますが、スタイルはさまざまです。打合せ(巡回)一つでも多様ですから、他の業務も言わずもがなです。
このように特殊性が強いわりに、クライアントからは見えずらく、マーケティング本を書いた人間もわかっていない。
提供するサービスのスタイルが違えば、(本来は)マーケティング手法は変わるでしょう。(おそらく、クライアントからすればコモディティ化していると言われる所以はこのあたりにあるのでしょうが、実際にはコモディティ化していないと思うのですが)
小さすぎて統計が効かない
マーケティングの手法のいくつかは、統計的・確率的に集計した結果から導かれた結論もあるのでしょうが、税理士業は小さすぎて統計が有効に作用しない面が大きいです。
そもそも、マーケティングというのは統計的な側面もありますから、サンプル数が多ければ多いほど正確性が増すものです。
税理士業界は小規模事業者のみ
税理士業が小さいというのは、二つの側面があり、第一には「税理士業界にはガリバー的な事務所がない」という点が挙げられます。
最も大きな事務所でも全体の1%のシェアもないでしょうし、税理士という業務の性質からしてそれが自然だとも思います。
税理士が提供するサービスは基本的にオーダーメイドのサービスですから、規模を大きくしたからといってスケールメリットが効きませんし、その割に訴訟などのリスクは増えます。(これは税理士業に限らずですが)
つまり極めて小さな事業者の集まりが税理士業で、小さいということは大企業がするようなマーケティングや広告宣伝はできません。
しかし一般的なマーケティング手法のいくつかは大企業を意識したものも少なくなく、それらが作用しないか、作用しても効果は限定的でしょう。マーケティングでは、大は小を兼ねないです。
合理的選択をするとは限らない
第二に「税理士のサービスを何度も受ける機会がない」という点です。
税理士の主なクライアントは中小企業、個人事業主ですが、これらの人々は税理士のサービスを何度も受けることはありません。
もう少し丁寧に言えば、何人もの税理士と接する機会は全くといっていいほどないでしょう。
税理士を変更したとしてもせいぜい2度あれば多い方です。となると、飲食業などであれば顧客は様々な店の商品を口にするため、比較検討がある程度合理的にできます。
一方、税理士は選んだりするのはせいぜい1回か2回であれば、クライアントが完全に合理的に選択をしているとは言えません。
マーケティングあるいは、経済では一般的に物事を選択する側は完全に合理的に行動する前提ですが、それが成り立たない。
心理的な要因や、そもそもの選択肢が少ないという中での選択ですから、それ故にマーケティングが有効に作用しないことも多いでしょう。
検証が難しい
クライアントが完全に合理的な選択をしているとは限らないとすると、マーケティング手法の検証も難しいです。
定量化(数値化)できるものばかりでなく、定性的(数値化できない)な要因が多くあり、さらに合理的とは限らない。
だから、マーケティングを仕掛ける側からすると、どの施策がどのように響いたのかがわからないので、再現性が乏しいという問題がのしかかります。
結局のところ色々試してみるしかない
結局のところ、さまざまな手法を試してみるしかないのですが、少なくともいろんな人に会うということにはなるでしょう。リアルで会うのも、ネットで会うのも含めて、機会を増やして偶然でもいいから顧客を獲得していく。
そうすると、徐々に自分に合った方法論が見えてきます。
私も、他の税理士さんなどの仰ることなども試したりしましたが、その人のキャラクターや性格なども絡む問題のため、合う合わないが大きいです。
つまるところ、いろいろ一般的なマーケティングが効きにくいから、いろいろ試しながらやっていくほかなく、それが難しさでもあり、面白いところだともいえるでしょう。