「起業の成功率」はネット上に「タチの悪いウソ」が氾濫している最たるものでしょう。あまりにも曖昧すぎて、人を迷わせるからです。
10年で1割しか残らない?
自分で事業を立ち上げることを「起業」といいますが、その成功率はネットでは10年で1割しか残らないなどと言われています。
しかし、他のデータを見てみるとそんなことはなく、この「10年で1割しか残らない」というのは「ウソではないかもしれないけれど」、様々な制約のあるデータから抽出した数値だと思われます。
もし、起業を検討していて、こういったデータに惑わされている人が一定数いるのであれば、そこまで心配しなくても良いと思います。
中小企業白書では
中小企業白書2017では、企業の生存率という資料が公開されており、生存率が5年で81.7%となっています。
また、中小企業白書2011では企業の10年後生存率は70%となっています。
生存率は、会社が存続しているということなので、「成功」とイコールではないでしょうが、企業が存続することは企業にとっての大きな目的の一つでもありますので、一定の目安にはなります。
「10年で1割しか残らない」のが、中小企業白書においては、10年で70%残っている、前提が同じでデータないにしろ、大きな乖離があります。
そもそもデータの取り方に問題はない?
中小企業白書のデータは、民間信用調査会社のデータだそうですから、恣意的に数字を変えたりということはないでしょう。
おそらく、10年で1割しか残らないのいうデータの元はネット上の数値で、出典は不明でした。
データの捏造はこのご時世不味いので、何らかのデータの根拠はあるのでしょうが、
業界や業種を限定していたりと、データに何らかの制約がかかっているものと思われます。
そうでないと、両者の乖離について説明がつかないですから。
事業の寿命
さらに、中小企業白書においては起業して30年残る率は5割弱という、一見すると厳しい数値が出ていますが、これも考えてみれば妥当で、信用に足るデータであることを裏付けています。
中小零細企業の一定割合は、代替わりが出来なくて廃業することがあります。
これは倒産ではなく、体力があるうちに綺麗に閉めてしまうということです。
一般に、創業者の社長が30歳過ぎで起業して、切り盛りしていっても70歳前には引退を考えることはごく自然なこと。
この間は、おおよそ30年〜40年程度です。
30歳よりも遅い年齢で起業する人も多いでしょうから、収斂していくと中小零細企業の寿命は30年程度というのも妥当なところです。
なかには、後継者を見つけることができて代替わりがうまくいくところもありますから、起業後30年の生存率が5割弱というのも、体感的に「さもありなん」と言えるでしょう。
事業をやめる理由は倒産だけではない
事業をやめる理由は、倒産のように経営不振によるものだけではありません。
代替わりができない(代替わりのことを難しく事業承継といいます)こと、社長の健康状態、複数の会社を運営していて統一した、とか様々な事情で企業を閉めるわけです。
これらが「失敗」なのかといえば、断じてそうではないでしょう。少なくとも、存続していた期間は社長は飯を食えていたわけですし、事業の目的を果たしていたのですから。
起業の成功率は「タチの悪い」ウソがある
起業の成功率が「10年で1割しか残らない」という数値は、どう考えてもおかしい。
業種や規模などでデータを絞っているのかもしれませんし、そのうえで都合のいいようにつかっているのでしょう。
誰が?都合がいいのか、というとネットで見れば一目瞭然で、起業のコンサルなどです。
自分たちがサポートすれば、「成功の可能性は上がるよ」と示唆しているのです。
私がなぜ、「タチの悪い」ウソだと少々厳しい言葉を使うかというと、このウソは100%ウソでなく、数%はホントが混じっているからです。
ウソと断じきれない、しかし真実100%とは言い切れない極めてグレーな。
少し例えをだすと、クスリというものは、用法容量を守って使えば「薬」ですが、使い方を誤ると「毒」になることもあります。クスリを「薬」のフリして「毒」を処方するのは、水を「薬」偽って処方するよりも、危険度が高い分だけ悪質だと思うのです。
成功率は関係ない
そもそも、起業する人は成功率をそこまで考えない方がいい。自分次第で、成功率はあげられるからです。
様々な努力をして、手を尽くせば成功率は上がります。
間違っても、タチの悪い業者には騙されないようにさえすれば、さらに成功率は上がるはずです。