新規の事業を新しく会社を作って行うのか、それとも既存の会社で行うのかは難しい問題です。絶対的にどちらが有利とは言い切れないため、ケースバイケースで判断していくことになります。
新事業を「新しい会社」で行う
新しい会社を作るので、既存の会社とは別の運営を行うことができます。
別の会社を新たに作るわけですから、例えば会社が2つあることになるので、会社につきそれぞれ一回ないし一個しか使えない規定や優遇措置が、それぞれで使えるというのがメリットでしょう。
逆に会社が2つ或いは複数あるということは、事務処理が極めて煩雑になることも意味します。
また、同一オーナーで複数の会社があれば、それぞれの会社同士でのやりとりは、税務会計上の問題が生じやすくなります。
新事業を既存の会社で行う
既存の会社で新事業を行えば、先に述べた新会社で行う場合のメリットは得られませんが、管理自体は単純です。
複数の会社があれば事務処理は会社の数だけありますが、一つの会社であればほとんどは一元化できますので。
また、既存の会社の信用度や知名度を活かした経営ができますし、新事業の赤字も会社全体で吸収することが可能です。
中小企業においては同一の会社で行うのがベター
前提が変わると結論も変わるため、あくまで個人的な意見ですが、中小企業においては新事業は同一の会社で行うのがベターでしょう。
会社を分けるメリットは、機動的な組織運営にあるのだとすると、大企業が事業の一部を分社化することなどは合理性がありますが、中小企業ではそこまで規模が大きくないため、機動性を高めるというメリットはありません。
逆に、複数の会社を運営することによる事務コストや負担が大きな足枷になるでしょう。
大企業が分社化しても、資金的に盤石なため事務コストなどはそこまで問題にならないでしょうが、中小企業ではこのコスト増は致命的です。
同一オーナーが経営する複数の会社間の取引は、税務上も注視されるため、節税メリットがそこまで大きくないというのが実情です。
となれば、中小企業においては新事業は基本的に既存の会社の中で行なっていくのが無難でしょう。
(補足)別の会社にそれぞれ別の税理士
新規事業を行う際に、新たな会社を作り、新たな会社には既存の会社に関与している税理士とは「別の税理士」に依頼するというのはやめておいた方がいいでしょう。
というのもデメリットが大きすぎるからです。
会社間の取引
会社間の取引を行ったときに、それぞれの会社の辻褄が合ってないといけないわけですが、別の税理士が関与するとそのチェックができません。
同一オーナーのもとでの会社間の取引は、税務上、複雑な判断を要することもあり、それを野放しのような状態にするのは危険でしょう。
船頭多くして
賢明な経営者の方は、複数の会社があっても同じ税理士に依頼しています。
別々の税理士に依頼すると、税務的な判断が分かれる場合があります。
どちらかが正しくて、どちらかが間違っているという単純な話であればよいのですが、判断の根拠となる事実や前提は、「全体的に見ないと」見えなかったりもしますから、どちらも間違っているということもあり得ます。
判断が分かれた場合に、対処のしようがありません。
やり方が違う
経理や会計の世界では、複数の真実があります。会計をしっかり勉強した人にとっては常識ですが、一般的には少し混乱します。
要は会計的な理屈が通っていて、その会社の実態を最も表すように(認められた方法のなかで)処理すれば良いので、真実が複数あるわけです。
となったときに、税理士が複数いれば、それだけ真実があるわけで、また、それぞれの税理士・会計事務所によって決算などの進め方も(当然、報酬などに対する考え方も)違うでしょう。
完全に独立した組織同士で有れば良いのでしょうが、そうでない場合は無用な混乱を来すだけで何らのメリットもありません。