個人事業主は住宅ローンを組む際に不利だと言われていますが、しっかりと条件を整えていれば住宅ローンを組むことも可能なようです。
個人事業主は不安定
住宅ローンの審査においては、個人事業主は会社員に比べて「安定」していないと見られます。
会社員は、会社さえ潰れなければ(そしてクビにならなければ)一定の給料を受け取ることができるので、安定して返済を行えますが、個人事業主は業績が傾くと(意外とすぐに傾きます)返済するお金が不足しがちなため、安定した返済が難しいと考えられるためです。
安定しているか否かは、住宅ローンを審査する側から見た話で、「安定して返済できるのか」否かということでもあります。
つまり借りる側からすると、安定して返済できるということを証明しなければならないわけですが、個人事業主の税金の申告レベルというのは本当にピンキリでとてつもなく酷いのもいれば、キチンとやっている人もいます。(税理士がついていない個人事業主の申告レベルは…)
その酷いのが全体のイメージを悪くしているというのはあるでしょう。(きちんとやっている人からすれば迷惑ですが)
所得を収入とみる
住宅ローンにおいては、安定して返済できることとともに大事な要素として、一定の収入があるか?ということもポイントとなります。
この収入という言葉も曲者(くせもの)で、会社員などの給与所得者は、いわゆる額面の金額(源泉徴収票における収入金額)を収入と見るのに対して、個人事業主の場合には所得金額を収入とみます。
所得とは、税を計算するうえでの利益のことで、大雑把に言えば収入−経費=利益(所得)です。
会社員はこの収入を、そのまま収入と見ているのに対し、個人事業主は経費などを差し引いた後の金額つまり所得を「収入」と見ているのです。
会社員つまり給与所得者は、経費がほとんどありません。事業所得者(個人事業主)と同じように収入−経費で所得を計算すると税が高くなり過ぎてしまいます。
そこで税を計算するうえでは、給与所得控除という概算経費を認めています。
会社員(給与所得者)は給与収入−給与所得控除額=給与所得の給与所得に対して税がかかるにもかかわらず、住宅ローンにおいては給与収入を「年収」と考えるわけです。
個人事業主は、収入−経費=事業「所得」ですが、この「所得」が年収ですから、住宅ローンという観点からは個人事業主は極めて不利なのが分かります。(税金面では有利なのですが)
複数年の所得が必要な場合も
個人事業主の場合、年によって(一年ごとに)収入や所得が大きく変わることもザラですから、複数年にわたる所得の証明が必要な場合がほとんどです。
また、その平均をとるのか最小を取るのかも審査する側によって違うので、個人事業主の場合には住宅ローンの審査が、ある銀行では認められ、別の銀行ではダメだったということもありがちです。
一般的には3年分を用意する必要があるところが多く、逆に考えると、住宅取得の3年前から準備を進めていかないといけないということでもあります。(「仕込み」に手間がかかります)
青色申告特別控除
個人事業主の確定申告書には「青色申告特別控除」というものが認められており、認められている人には最高で65万円が控除されています。
青色申告とは、取引データを「キチンと集計する方式」のことで、データを精密につけているのでそのご褒美として65万円を事業所得等から差し引くことができるのです。要は会計データの精密性を担保するために課税庁が認めた特典です。
とすると、この65万円は個人事業主からすると本来は所得を構成すべきもののはずなのですが、住宅ローン審査においては所得に含めないところも一定数あるのです。
会計を生業とする者からすれば理屈に全く整合性がないのですが、与信という観点からはセーフティに考えているのかもしれません。
対応
このように個人事業主は、安定性やその所得の構成などが特殊ゆえに、給与所得者に比して住宅ローン審査においては不利になってしまいがちです。
ですから、自身の状況に応じた対応をしておくほかありません。
例えば、個人事業主として独立する前にサラリーマンをしていたのであれば、その間に住宅ローンを組んで、自宅を取得しておくというのも一つの方法でしょう。
ただ、個人的にはこの方法はおすすめしません。独立後すぐに安定した所得を得られるかは、不透明でから、個人事業主としてある程度のメドがたってからの方が無難だとは思います。
配偶者の収入を合算する。という方法もあります。
個人事業主だけでは住宅ローンの希望額に届かないような場合ですね。
これも一長一短で、配偶者の属性が良ければ住宅ローンの借入額が大きくなるメリットがありますが、夫婦でお互いに連帯保証するとか難しい問題すなわちリスクを抱えることにもなりますから、やめておいた方がこれも無難かと。(個人的には夫婦で連帯保証人になるメリットは薄い割にデメリットは大きいと考えます)
とすると、数年のスパンで確定申告について住宅ローンを意識して作り込んでいくことがもっとも大事ではないでしょうか。
所得が大きくなれば税金も大きくなりますが、ある程度は仕方のないこと。
あまりにも節税をやり過ぎると、当然のことながら住宅ローンでは弱者ということです。
そのうえで更に、頭金を分厚く入れるというのも有効で、頭金が分厚ければ審査における心象なども有利だし、借入額を小さくできるメリットも大きいですから。
以上のように、時間はかかるし税の痛みも伴いますが、地道にやっていけば個人事業主でも住宅ローン審査で除け者にされるということはありません。
ちょくちょくいる、税や経理に対してモラルハザードを起こしている個人事業主とは「違う」んですよということをしっかり確定申告書や頭金などで示すわけです。
多くの銀行を回る
これは自分ではどうにもならない面もありますが。
銀行によって個人事業主の「安定性」や「実態としての収入」などの考え方が異なります。そして、細かな部分は公表されていません。
ですから、サラリーマン以上に個人事業主は銀行によって借りる借りれないが出てきますので、数打てば当たるではないですがある程度の数の銀行にアプローチしていくという考え方は持ってもいいのかなと。(このあたりは事業融資とは異なった面がありますね。)