会社から独立して、自分自身で商売をしようと考える人は多いのですが、なかなか思い通りになることは少ないです。
税金は会社経営の様々な場面で関わってきますので、税理士としてまた、
起業支援の公的な機関のサポーターとして、多くの方の相談にも乗ってきました。
起業を志し成功を収めた人あるいは残念な結果となった人を多く見てきたからわかることは、事前準備をしっかりとしていれば失敗の確率をかなり減らせるということです。
事業資金と生活資金を貯めておく
事業をはじめる(会社から独立して起業する)には「事業資金」と「生活資金」が必要で、この両方を貯めなければなりません。
店舗やオフィスを借り、PCなどの備品を購入し、商品を仕入れるためにはお金が必要です。
これらのように事業にかかるお金を「事業資金」といいます。事業に必要なお金は、事業の種類などによって変わってきますから、自分がしようとする事業がどのようなものでどのくらいお金がかかるのかを調べておく必要があります。
事業がはやく軌道に乗れば良いのですが、どんなに優秀な経営者であっても軌道にのせるまでには半年ほどの時間は必要です。
その間の生活のためのお金は、事業から生み出せませんから、べつに用意します。これが「生活資金」です。
事業を始めてからお金が足りなくなる恐怖感は相当なものですから、事前にある程度のお金を用意しておくということは、落ち着いた気持ちで経営できるという大きなメリットがあります。
事業に必要なお金(事業資金)と軌道に乗るまでの生活費(生活資金)
を事前に貯めておく
事業の計画を立てる
自分で事業をすることは、航海にたとえられることが多いです。(会社は船、経営者は船長ですね)
どこに行くのか(目的地)を自分で決めて、そのための方法を考えていくわけです。
どこにくのかを決めずに、行き当たりばったりだと、船の燃料や食料(会社のお金、先ほどの元手です)が切れて沈みます。
また、目的地までのルートにはどのような危険があるのかを知っておかないと、遭難してしまうこともあります。
ですから、大まかでかまいませんので「目的地」「航路」を考える意味で、計画をたてるのです。(本格的なものになると「事業計画」といいますが、そこまでかしこまったものでなくても構いません。「自分で」考えるということが大事なのです)
起業する「事業」をくわしく考える
「事業」の詳細を知らないまま起業する人は意外と多いです。
これから始めようとする「事業」がどんな環境なのか、どうやってお客さんをみつけるかなどです。
深く考えず事業を始めたが、「競合が多すぎて食えない」「思っていたのとやってみると全然ちがう」…というようなことはよくあります。
商売で最も重要なのは、どのように売るか?(お客さんをどこから見つけてくるのか)です。
その方法が少なかったり、考えを深掘りができていないと、あとあと苦しみます。
起業するまえの、こころにもお金にも余裕のあるあいだに考えておいて損はないでしょう。
数字に落とし込む…経費の予測をたてる
はじめようとする事業をくわしく考えたら、数字としてまとめます。
とくに最初は、売上の予測が立ちづらいので、経費を積み上げて考えます。
家賃にいくら、仕入れにいくら、水道光熱費にいくら、通信費にいくら…というかんじです。(どのくらいの経費がかかるのかがわからないということであれば、事業について調べたりないのかも知れません。もうすこし、事業について調べてみましょう。)
経費がわかれば、必要な売上がわかります。売上と経費の差が「利益」で、事業は「利益」をあげるためのものです。
しっかりと考えておくことで、「どのくらいの売上で採算がとれるのか」や「どのくらいのお金が必要なのか」が具体的に見えてきます。
第三者に見てもらう
はじめようとする事業についてある程度しらべて、経費などの予測をたてたら、それをなるべく他の人にも見てもらうのが良いでしょう。
というのも、自分では完璧に作ったつもりでも、第三者の目で見ると…
「読みが甘すぎたり」「必要なものが抜けている」「その経費ではやっていけない」「メリハリが付いていない」ということがあるからです。
メリハリが付いていないというのは難しく、経費を絞り込みすぎて本来かけるべき広告活動のためのお金が足りないとか、自分で何でもやろうとしてお金は足りても時間が足りない(費用対効果があきらかに悪い)ということです。
一歩引いた第三者から見てもらうことで、計画がうまくいく可能性がグッと上がります。
第三者に見てもらうことで、さらに良くなる
それでも起業は楽しい
起業をしたいという思いを一歩すすめて、具体的にしらべたり数字に落とし込んでみると、思いのほかしんどいし疲れます。
実際の経営はもっとしんどいです(笑)
思い通りにいかないことも多いし、次から次へと考えなければならないことが湧いてきますし、何もかも自分の責任で決断しなければなりません。
それでも、起業は楽しいです。
人の命令でやるのではなく、自分の責任のもとに生み出された商品やサービスで、お客さんがよろこんでくれる。
すべて自分の責任でやるからこそ、よろこびもお金も自分に返ってきます。
起業するまえに(見つけるのは難しいかもしれませんが)、そういった「やりがい」や起業によって「成し遂げたいこと」「楽しみ」などを明確にしておくことで、起業の苦しさにも耐えられるはずです。
「成し遂げたいこと」や「やりがい」「楽しみ」なども考えておく