創業時に融資を受けるのが当然のように語られることが多いですが、果たして本当でしょうか?
創業融資は当初の資金不足を補う働きがありますが、多ければ多いほど安心が増えるというものではなく、返済に必要な利益水準も上がってしまいます。
この記事では、創業融資そのものを否定するのではなく「借り過ぎない」という観点から整理します。

創業融資が魅力的に見える理由
経営者にとって、手元資金が厚いことは、それだけで安心材料になりやすいものです。同じ理由で、創業当初は自己資金だけでは不安がつきまとう人も少なくありません。
業種・業態によっては設備・雇用・仕入などにまとまったお金が必要に見えることもあります。
その結果、「借りられるなら借りておいたほうが安心」と思いやすいのです。
もちろん、事業には「資金」が分厚くあったほうが安全性は高いのですが、返済義務のある資金は注意が必要です。
創業融資を受け過ぎると、必要利益が上がる
借入金そのものには税金はかかりません。
ただし、返済した元本も「経費」になりません。
つまり、借入金の返済には、「税金を払った後」のお金(≒税引後利益)を残す必要があります。
だから、借入金が増えると必要利益が増えてしまします。(創業時は特に利益が安定しづらいにも関わらず、です)
たとえば500万円を5年で返済するケースだと、単純計算でも毎月80,000円超の元本返済が必要です。
創業直後は、売上が計画どおりにいかない前提で考えるべき
融資の審査において、金融機関は決算書から過去の実績をみて「返済できる利益があがるか?」を確認しています。
ところが創業時は過去の実績がなく、計画に基づいて融資を受けることが一般的です。
計画はその通りに進むことのほうが稀ですから、悪い方に外れると返済が苦しくなってしまいます。
創業融資は、計画の「不確実性」を考慮して慎重に決める必要があるのです。
創業融資は「借りられる金額」ではなく「返せる金額」で考える
返せる金額を算定するには、売上と経費だけでなく「税金」「経費にならない支出」「生活費」まで考慮しなければなりません。
「税金」→利益に課税される法人税等だけでなく、利益が出ていなくても支払うケースがある消費税は見落としがちだか考慮すべきです。
「経費にならない支出」→借入金の返済だけでなく、預り金など。
「生活費」→法人であれば自身の役員報酬。変更は年に一度しか出来ず、少な過ぎると生活が立ち行かず、多過ぎると個人の税金や社会保険料が負担になりやすい。
設備や雇用が必要な事業では、融資が必要な場面もあります
借入を多くすると必要利益が押し上げられ、事業の難易度が大幅に上がります。
とはいえ、飲食・医業・製造のように一定の設備や雇用を前提とする事業では、融資が半ば必須となります。
その場合でも、自己資金と利益のバランス・設備の有効性をみて「重過ぎない」ように設計することが事業を持続させるポイントです。
創業時に融資を受け過ぎないための考え方
- 最初から完成形で始めようとしない
- 設備や内装は本当に必要な範囲に絞る
- 雇用ありきで考えない
- 売上は手堅く読む
- 自己資金で保てる範囲を見極める
- 税金や経費にならない支出も考慮
- 返済後のキャッシュが残るか確認する
融資が活きるのは、事業が回り始めてからのことも多い
創業時の借入は、計画に基づいて行うしかありません。
一方、事業が回り始めてからの借入は、売上や利益の実績を踏まえて判断できます。
そのため、使い道や返済可能性を見極めやすく、創業時より合理的な借入になることがあります。
創業融資をあえて借りすぎず、事業が回り始めてから本格的に融資を受けるという選択肢も残しておくのも有効でしょう。
まとめ
- 創業融資は便利だが、返済負担が経営の難易度を上げる
- 特に売上がまだ読めない段階では、借り過ぎは危険
- 設備や雇用が必要な事業もあるが、その場合も自己資金とのバランスが重要
- 借入は「借りられる額」ではなく「返せる額」で考えるべき
- 創業時は、まず重い構造(必要利益が大きい)で始めないことが大切

