税理士になるまでの流れは「試験に受かること」、「実務経験を積むこと」です。税理士を目指す人向けにまとめてみました。
税理士試験に合格する
税理士になるためには「税理士」になるための資格を手に入れる必要があり、税理士試験とよばれる国家試験をパスするのが一般的です。
税理士試験は年に一度、8月上旬に行われます。
以下の11科目の中から5科目合格(簿記論と財務諸表論は必修、法人税法と所得税法は選択必修。消費税法と酒税法、事業税と住民税は重ねて選択は出来ません)する必要があり、各科目の合格率はおよそ10〜15%ぐらいで、実質的には競争試験です。
・簿記論
・財務諸表論
・法人税法
・所得税法
・相続税法
・酒税法
・消費税法
・固定資産税
・事業税
・住民税
・国税徴収法
1度受かった科目については一生涯、有効なので、一度に5科目受験するというより、何年か掛けて5科目を集めるのが実情です。早ければ2〜3年程度、普通に働きながらだと5年〜7年くらいで合格する人が多いです。
5年かける価値があるのか?
税理士になるまで5年前後かかるとして、人生の中で短くない5年という時間をかける価値があるのかという疑問は湧いてきます。
税理士との特殊性やメリットをしっかりと理解していれば、個人的には価値あるのではないかと思います。
・他人に代わって税金の申告や事務を行うことができるのは税理士だけ
→税金に係ること(申告や事務、相談も含めて)できるのは税理士だけです、税金は日本が続く限りなくなりませんし、法人や個人と顧客層も多くいるため税理士のニーズ高いです。
・AIが進化しても税理士業務が無くなるわけではない
→税金の申告、特に会社の税金は、経営者と税理士の阿吽の呼吸みたいなもので作り上げる側面があります。そういった「人間」でないと難しい面が多いので、AIがいくら進化しても無くなることはないでしょう。
・自分にあった生き方、働き方ができる
→非常に強力な資格なので、自分にあった生き方や働き方も可能です。独立してもいいですし、気の合う仲間と組んでもいいでしょう。趣味との親和性も高いのが特徴です。
特殊性やメリットは、また別の記事にて記したいと思います。
合格までの戦略が重要
税理士になるための最大のネックが試験に受かるかどうかです。
また、試験に受かるとしてあまりにも時間をかけすぎるのも、人生の時間は限られていますからライフプランが狂ってしまうリスクがあります。
ですから、合格の可能性を高め、比較的短期で合格するための戦略が重要となります。
①受験専門学校に通う
短期合格かつ堅実に合格を狙うなら、受験専門学校(TACと大原が有名で、実質はこの2択です)に通うのが手っ取り早いです。
受験専門学校では過去に多数の受講生を合格させたノウハウがあるので、独学よりも合格率は高く効率的でしょう。
意外(?)と、「お金」と「時間」をかけてしっかり勉強している受験生って多くありませんので、まずは受験専門学校を利用するば一歩リードです。
費用の面では独学に分があるかもしれませんが、合格の可能性を高め、時間を買うと考えれば、十分もとが取れるでしょう。
②ミスの傾向を知る
受験専門学校に通っていると、5〜7月はテストばっかりになります。時間には限りが有るので、必然的に解ける回数が限られます。
ですから、自分のミスの傾向を知るのが大事です。ケアレスミス、間違って覚えていた、そもそも覚えていなかった(知らなかった)、読み間違えた、読み飛ばしていた、電卓を叩き間違えたなど。
間違いノートを作成し、自分のミスを集約していきます。その間違いノートをテストを受ける前等に読み込むだけでも随分と意識が変わります。これは、実務についてからも結構役立っています。
③勉強のリズムを作る
税理士試験は、長丁場です。この時間は必ず勉強する、といった習慣を付けとくといいです。最初の三ヶ月くらいはしんどいんですが、いったん習慣が身に付くと、今度は勉強しないと落ち着かなくなってしまいますので。
気が向いたときだけ勉強するとか、仕事をするでは、合格しないし、食べていけません。
その点で、受験専門学校では通信講座よりも教室受講の方が優れているといえます。決まった日時に教室で授業を受ける習慣をつけると、学習のペースメーカーにもなります。
当然のことながら、講義を受け続けるというのも大事なことで、意外とドロップアウトする人がいます。勉強も仕事も途中で投げ出すのはいけません。
ただ、根を詰めてやりすぎると体や精神を壊してしまいます。息の抜き過ぎは問題ですが、ある程度のところで息抜きはひっすです。株をする人の言葉で、休みも相場といいますが、休むのも勉強、休むのも仕事です(笑)
実務経験を積む
税理士になるには、「税理士となる資格」に加えて2年間の実務経験が必要です。
簡単にいえば会計事務所で2年間修行し、証明に(親方の)税理士から印鑑証明を貰ってこいということです。
税金の世界は1年サイクルで回っています。
2サイクルほど経験を積めば、ある程度の業務は経験するので、税理士として認めようということでしょう。
この2年間は、会計事務所で正社員として働いて2年という理屈ですから、一般の会社での経理での勤務の場合や、アルバイトとして勤務していた場合には、2年だと足りず、もう少し期間が必要になります。
この2年間というのは、1つの会計事務所で2年間働かなければならない訳ではなく、複数の事務所での勤務経験の合算でも可ですし、税理士試験に合格する前でも、合格したあとでもどちらでもいいことになっています。
そこで、多くの税理士受験生はある程度の合格科目数が揃ってきたら(3科目とか4科目合格して終わりが見えてきた頃になると)、会計事務所に就職・転職を考える訳です。
会計事務所への就職・転職のシーズンは8月頃と12〜1月頃が一番多いようです。これは、税理士試験の終了直後(8月)と、税理士試験の結果発表直後(12月)といった事情からです。
上記の就職・転職のシーズンには、大手の受験専門学校では合同就職セミナーのようなイベントも開催しておりますので、利用される方も多いですね。
事務所の選び方
顧問契約などと違って、自分が勤務をするという観点からどんな事務所がいいのか?
①事務所の規模はどれくらいがいいか?
世の中の会計事務所の殆どが5人未満。大きくなって10人前後、それより大きいところは、数えるほどというのが実情です。(約90%の事務所は10人未満です)
近年では、ITの進歩や多様な働き方を求める人も増えたことから、「一人」事務所も多くなっています。(就職転職という観点からは、一人事務所は縁がありませんが、将来独立したときなどのモデルとして大いに参考になります)
5人未満が多い理由は、税理士というビジネスモデルは5人未満くらいの規模が一番儲かるからです。税理士業界を知らない人は大きいほうが良いという誤解が有るようですが、規模を大きくしてもリスクが増えるだけなので、あまり大きくしすぎません。
規模の大小よりも、個人的には風通しがいいかを重視すべきでしょう。良くも悪くも、税理士事務所は零細企業のため、人間関係が難しい事務所もあるので、そういったところは避けたほうが無難でしょう。
従って、規模感にはそれほどこだわる必要は無いと思います。(ただし、小さい事務所で、所長が高齢の場合は廃業リスクを加味しないといけませんが)
②業務内容は?
最近は、資産税に特化してますとか、公益法人が得意ですのような特化型の事務所も増えてきました。将来、どんな税理士を目指されるのかによって、特化型の事務所も良いといえますし、良くないともいえます。
自分の中に明確なビジョンがある方以外は、特化型はさけた方が良いかもしれません。大多数の事務所は、オーソドックスな業務です。
面接の際に、どんな業種・業務が多いか確認すると良いかもしれません。
③残業は?
残業が多いのか少ないのか?は事務所(所長)の方針によって千差万別です。
普段の残業には残業代がつかない事務所もあります。繁忙期には、電車がなくなってタクシーで帰宅するような事務所もあれば、確定申告期であろうともほぼ定時で退社できる事務所もあり、本当に幅が広いです。
税理士の受験勉強中の方は、受験専門学校に通う日には仕事を早く上がれるのかなども確認された方が良いでしょう。あと、本試験の日は(その前日あたりから)休暇が取れるのかなども要確認ですね。
あんまり、自分の権利ばかりを主張しすぎると労働の意欲を疑われますので、加減が大事です
④給料は?
多くの会計事務所では、給料は思ったよりは高くないです。
だいたい、未経験〜キャリア3年ぐらいは250万〜350万、3〜10年くらいで300万〜500万、それ以上で上限は700万ぐらいで頭打ちってところが相場でしょうかね。ただ、これも事務所によって全く異なります。
会計事務所では、運営経費の基本的考え方として、売上を3分割し、それぞれが所長の取り分・職員の人件費・人件費以外の運営経費とされています。従って、顧問料の単価が高い・業務効率が良い事務所であれば、それだけ職員の方は幸せといった理屈ですね。
上記の考え方からいけば、自分の給料が自分の担当先の顧問料総額の1/3前後であれば普通の事務所で、1/3よりも多ければ所長先生が身を削ってくれてるということで感謝しないといけませんね。
⑤転職エージェントは使うべき?
転職エージェントとは、職員を捜している事務所と、仕事を探している人をマッチングするビジネスです。
仕事を探している人からは料金はもらわず、エージェントが持っている求人案件を紹介し、成約すれば事務所から、採用した人の給料の何%といった具合で報酬をいただくといったしくみです。
転職エージェントを使うメリットは…
・自分で探す手間が少ない
・お金を払って人を採用しようとする事務所を紹介してくれるので、採用側も真剣
・エージェントの営業力によっては、志望する事務所の大まかな内情が分かる
デメリットも挙げておきましょう
・エージェントからのプッシュが強い
・採用側からすると、紹介料がかかるので志望者へのハードルは上がる
・エージェントの立ち位置は、あくまで事務所側
エージェントの「立ち位置が事務所側」だというのは、しっかりと認識しておいた方が良いでしょう。
エージェントの営業担当者と事務所の関係はお金のやり取りがあり、今後も継続するであろう関係なのだから、案件を紹介しておしまいの志望者とどちらを大切にするかは明白です。
エージェントのメリット・デメリットを逆にすると、ハローワークからのルートになります。
ハローワークの求人は、本当に玉石混合で、掘り出し物の良い求人もあれば、人材が定着せず年がら年中求人を出している事務所もあります。
時間的余裕のある方でしたら、活動をする前から年中求人を出している事務所などをチェックしておいて、選別しておいた方が無難でしょう。
税理士になる
「税理士試験に受かる」「実務経験を2年積む」をクリアすると晴れて税理士になります。
税理士会に登録申請して、税理士として登録します。
申請すると、審査があって、簡単な面接をして、税理士にして良いと認められると税理士です。
だめな場合とは、偽税理士行為を行っていたとかですので、大抵の場合はクリアできます。
税理士となると、受験生や勤務していた頃よりも格段に責任も重くなりますが、やりがいや選択肢も格段に増えます。
この「税理士になったあと」をいかにイメージして受験や勤務時代の仕事に取り組めるかが大事です。
イメージが弱いと受験や勤務のモチベーションが上がらなかったり、税理士になったあと燃え尽きてしまったり…
「税理士になる」イメージの強い人が税理士になってる気がします。