成功の秘訣…いい税理士をつけること

中小企業における税理士は、税務申告のサポート役にとどまらず、外部ブレーンとしての役目もあり、自社にとって「いい税理士」がつけばプラスに働くし、そうでない税理士がつくと不幸です。

酷いところは本当に酷い

中小企業の関係者以外は、日常的に税理士に関わることがほとんどありませんから、税理士或いは会計事務所はどこでも同じと思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません。

税理士或いは会計事務所の業界は、そのほとんどが5人未満の個人事務所で、多少規模が大きくなったとしても、個人事務所の延長でしかありません。

ですから、税理士或いは会計事務所の業界は、個人経営者の集まりなのです。

ひとくちに税理士或いは会計事務所といっても、個人経営者の集まりということは、「個」が強すぎて、サービスの質も均質でなければ、知的水準にもバラツキが大きくあります。(税理士になるルートが複数あるという潜在的な問題もあります)

そして、酷いところは本当に酷いです。以下は、私が見聞した一例です。

・事例①職員教育

職員のレベルが著しく低い事務所。

なんとなく、税理士事務所(会計事務所)と看板を掲げていれば、その職員も「それなり」の知識や見識があるのだろうと思いがちですが、そうである場合もあるし、そうでない場合も多いです。

訪問してくる職員が、「税理士資格を保有していない」ということは日常茶飯事で、勉強中ならまだ全然よいのですが、勉強すらしていないのもいます。

別記事にも記しましたが、税理士事務所(会計事務所)というところは、事務所が教育するということもありますが、職員自身が進んで勉強に取り組まないと、知識や技術を体得できません。(専門知識や見識に報酬を頂戴するわけですから、生半可な勉強ではいけないのは当然だと思います)

勉強すらしていない職員が担当になるとそのクライアントは悲惨で、決算書類なども間違いは多く、決算書類ですらそんなレベルですから、有効なアドバイスを受けて…というような外部ブレーンとしての機能は果たせません。(口の悪い人は、税理士のことを経理の外注屋といったりしますが、経理の外注屋レベルすら満足にできてません。)

・事例②旧態依然

人間という生き物は、一度成功体験を積むとそれに固執するのだそうです。

さらに、経理や会計という分野は、どうしても保守的に物事を行わなければならない側面が多くありますから、昔ながらのやり方を引きずっている税理士や会計事務所が多いのです。

経理や会計にとどまらず、お客さんとの接し方なども古いままの税理士及び職員も多くいます。
典型的なのは「偉そう」というやつです。

偉そう、高圧的な態度の人というのは一定数いて、どんなに仕事ができても、はっきりいってお付き合いしたくない人種です。むかしの殿様商売の気分が抜けてないのか?

または、税理士及びその職員は会計のデータを見ますから、お金の流れを見ると、なんとなく会社を分かった気になってしまいます。そんなもんだから、上から偉そうに…

クライアントにはいい顔していても、職員にはキツくあたる税理士もいます。自分に自信がないから他人にキツくあたるのでしょうか。

クライアントの目も節穴ではないので、見透かされてます。そういった人としての腐った「臭い」は生半可では消せませんので。

お金を払って税理士にサポートを依頼して、仕事はそれなりにやっても、ものすごく態度が悪いというのでは、やってられない…わけですが、現実にそれで悩んでいる経営者はいらっしゃいます。

・事例③無資格

税理士は国家資格ですが、その事務所にいる職員は必ずしも有資格者とは限りません。

無資格でもきちんとしてくれればいいじゃないかという考え方もあるわけですが、医者ではない人間が手術をするのは怖くないですか?

なぜ資格が必要なのかは、そういった危険を和らげる経験や知識を持っていることを担保するためです。

税金の申告について、間違いではないけれど、税務署と見解が分かれたとき、無資格の人間は意見できますか?

そして、資格を持って独立開業してみると分かることですが、独立開業してからする仕事は密度が全く違います。

雇われの身で仕事を手を抜いているわけではなくても、全てが自分にかかってくるという異常に重い責任感のなかで積む経験値は、負荷が何倍も違います。

税理士がお付き合いするのは「社長」さんですが、自身も独立開業している立場でないと、真の意味で「社長」の立場で考えることは出来ないでしょう。

税理士事務所の無資格の職員が気楽なことばかりいって社長の気分を害している…なんて光景は、滑稽でもあり悲しくもあります。

自社にとってのブレーン

税理士は単なる経理の外注屋となるか、外部ブレーンとなるかは、使いような面もあります。
ただ、会社にとって「社外」の人間で、会社の内情をわかっていて、相談に乗ってくれる人は何人かは確保しておいた方がいいでしょう。

・なぜ社外がいいのか

社内の人間だと、利害関係が強すぎて冷静な意見でないことが多いわけですが、社外の人間だと、俯瞰的に物事を見れますから、客観的な意見として受け入れやすいです。

また、自社の人間だと社内或いは同業他社の動向くらいしか把握できませんが、社外の人間だと他の業界を見ていますから、より多角的な意見として受け入れられるでしょう。

・ヒト、モノ、カネ

経営では「ヒト、モノ、カネ」の動きに目を光らせなければならない、ということは昔からよく言われることです。

もちろん、会社のことは社長が一番熟知しているはずですが、カネを通してヒトやモノの動きを捉えることに関しては税理士はプロですから、その知見を生かして、融資や納税だけでなく、大きな投資、人事考課などにも意見を求めると、また別の角度から意見が得られるのは大きなメリットです。

・銀行員はすぐ居なくなる

会社のアドバイザー或いは社外ブレーンとして、銀行員はどうでしょう?

確かに「優秀な」銀行員が、知り合いにいれば心強いのですが、優秀であればあるほど、自社だけに関わっていることはできません。

また、税理士でも同じことを述べましたが、能力の有る無しが大きいのにかかわらず、はたからみるとわかりづらい。

無責任な銀行員などは、無責任に融資を進めて、困ったときには転勤して、もう居ません…なんてことはよくあります。

税理士は「転勤」はありません。(事務所の職員だと、辞めたり又は担当替えがあったりで、個人的にはアドバイザーとしての役目を担うのならば、頻繁に担当替えなどはすべきでないと思います)

判断材料を多く持っている

アドバイザーや社外ブレーンは、判断材料を多く持っている人にすべきです。
会社を取り巻く状況、会社内部の状況、関連法規など、さまざまなことを考慮して意見する必要があります。

会社の内部事情を、一番理解しているのは社長ですが、お金周りを中心に税理士も内情には精通しているはずです。

会社の成績表である決算書の内容を精査している税理士は、自社の内情をよく理解しているし、他社も見ているわけだから、ある程度客観的な目も持っています。

アドバイザー、外部ブレーンとして意見を求めても良いのではないでしょうか。

定期的に会う

一般的に税理士は、その職務内容からして定期的に会社を訪問したり、社長とコンタクトを取ったりします。(契約によってはそのスパンが長いこともありますが)

相談したりというのは、この「定期的に」会っているというのは好都合です。

特に時間のかかる相談事などは、定期的に会う際に継続的に話をしていると、状況を逐一わかっているし、説明する手間もないし、機動的にも動けます。

何も相談することがなく雑談をしているだけでも、その雑談から経営に関わる話に変わったり、ということはよくあります。

自社にとって「悪い」税理士

税理士は使いようによっては、自社の良きアドバイザー或いは社外ブレーンのようにもなるし、その適性もあるということを述べました。

ただ、税理士は人が提供するサービスですから、そのクオリティに差がありますし、関わり方をしくじると、うまく機能しません。
以下のような場合もあります。

納税

経営と税金は切ってもきれない関係にあり、経営者は決算のたびに、税金に悩まなければなりません。
ただ、良い税理士は事前にどのくらいの税金になりそうなのかは相談してくれます。

これが要領の悪い税理士だったり、クライアント側が充分な情報を提供できていないと、決算期限の間際になって「来週までに300万円払う準備してください」というような不幸が起こります。

納税は避けられないモノですが、事前に準備ができていると、その負担は和らぎます。
逆に突然だと、負担は増します。

例えば悪いですが、防御の構えをとって殴られるのと、不意に死角から殴られるのと、どっちがダメージが大きいか、というようなイメージです。

良い税理士は、少なくとも決算の3ヶ月前くらいからおおよその着地点を示して、どのように着地させるかの相談をするでしょう。

資金繰り,融資

資金繰りや融資に直接税理士が働きかけをするわけではありませんが、資金繰りであれば、いつどのくらい資金ショートしそうかという予測のもとに事前に打合せしますし、その結果、融資が必要であれば条件などについてもアドバイスなどをします。

また、良い税理士は融資などで必要書類となる試算表の作成においても、役割を果たします。
キチンと会社の内情を把握したうえで、融資において好かれる試算表、或いは決算書というものが確かにあり、それを作ります。

試算表・決算書は会社の状況をまとめた書類ですから、税理士だけの力ではどうにもなりませんが、こうしたら良いというアドバイスのもとに一緒に良い試算表・決算書を作ってくれる税理士は、良い税理士でしょう。

逆に、単に数字をまとめるだけだとか、取引を適切な科目にまとめられていないという税理士もいます。

実態を正しく把握できなければ、資金繰りでも正確な予測はできませんし、融資も難しくなります。
中小企業において、資金繰りで後手を踏むと、抜本的な対策を取らない限り、半永久的に後手を踏み続けるということはよくあります。後手を踏み続けたうえで、取る手がなくなると、会社は立ち行かなくなってしまいます。

投資判断

現代的な会計の考え方では、会社が行う行動のほとんどは「投資」と考えます。
投資ですから、その判断が重要になるわけですが、判断に際して頼りになる税理士であれば意見を求めて参考にすることができます。

例えば出店するにしても、場所、場所から派生して家賃等、設備、工事費などを打合せにあげながら、出店すべきか否かなどの相談をする。

最終的には社長が決めることですが、後押しがもらえるのとそうでないのとでは、心理的な面で安心感も違いますし、二の手三の手を考えておけるという面でも有用です。

また、こういった判断は言語化して頭の中を整理することも重要ですが、社長が1人だけで決めてしまうと、言語化して頭の中を整理するという工程がすっ飛んでしまうことがあります。
そういった面でも、アドバイザー或いは社外ブレーンである税理士に話をするのは、必要なことだと思います。

良いか悪いかが分かりづらい

良い税理士をつけるメリットと、そうでない税理士をつけるデメリットは今まで見てきた通りですが、そもそも、良いか悪いかが分かりづらいというのが実際のところです。

こればかりは試してみないとわからないというのが本音ではあります。

立派なHPで、立派なことを言ってる税理士が必ずしも良い税理士では無いのは、私も目にしてきましたし、かといって税理士紹介会社に頼んだとて(税理士にとっては費用が嵩むためあまりメリットがないので、税理士紹介会社を使わない税理士も多くいますから)良い税理士に巡り合えるとは限りません。

知人などに紹介を受けるというのも昔からある手法ですが、その知人がどのくらい信頼ができる人なのかによって、紹介される人(税理士)の質は変わります。

良い税理士は、なかなかわかりづらいのですが、「コミュニケーションが取れる」「最低限の常識を弁えている」というところを見れば良いかと思います。

コミュニケーションの取れない人はいますし、自分の財布を預ける(中身を見せる)ような人ですから、コミュニケーションが取れない人では問題外です。

また、最低限の常識を弁えていないというのも意外といます。大して賢くもない(勉強していない)のに偉そぶっている人もいますし、そんな人と付き合いたくありません。
そういったところから仕事ぶりもなんとなく知れますので。

悪いときは代える〜代えるためには

税理士は長く付き合えば付き合うほど味が出てきますから、大きな不満がなければ代えないほうがいいと思います。

私の知人も、私が税理士になる前から依頼している税理士がいて、特に問題もないようだったら、無理に代えてくれとも言いませんし、気に止むこともありませんし、それで付き合いが変わるということもありません。

ただ、問題のある税理士であったりすれば代えるべきでしょう。

代えるにあたって、税理士が何をやってるのかさっぱりわからないというのでは、主導権を持てませんから、少なくとも税理士が何をしているのかは把握しておかないと、代えたくても代えられません。

価格を理由に変えるのは最悪

税理士を変更するのに、価格を理由に変えるのはやめておいたほうがいいでしょう。

「その価格でやる」となったら、じゃあ今までの価格は何だったのか?ともなるし、それが税理士が無理している価格だと、ますますサービスなどが悪くなるのは目に見えていますので。

正直に他社に変更する旨を伝えればいいでしょう。どうしても、言いづらければ「身内が税理士になったのでそちらに変えます」という古くからある断り文句を使えば、大抵の人は察しますので。