財務分析等をしないと会社の詳細な状況は分かりませんが、その会社が儲かっているのかそうでないのか、大雑把に掴むには「役員報酬」を見れば、分かることが多いです。
中小企業では儲かっている企業は役員報酬を増やす
上の図を御覧下さい。収益が前期に比べて100増加しています。それ以外は変動は無いと考えてください。普通だったら、翌期は収益が増加した分だけ利益が増加すると考えますよね。ところが中小企業では、収益が100増えた場合には利益が100増えるとはなりません。100増えた分は役員報酬が増えます。
中小企業では、会社の利益に対してかかる法人税と、個人の役員報酬等にかかる所得税を両方とも考慮して、両方が最も少なくなるように税金を考えています。その結果、利益が出そうだと予測される場合には役員報酬を増額して、利益を出しすぎないように調整します。(役員報酬は一定時期しか操作できません)
会社が法人税を支払って、法人税を支払った後の利益を配当として株主(中小企業では株主と役員は同一)に分配するという方法も考えられますが、法人税法上では配当は損金(税金を計算する上での経費)にならないのに対し、役員報酬は損金になりますから、中小企業の多くでは配当をせず、役員報酬で利益を還元します。(役員個人の所得税を考えても、配当よりも役員報酬で貰った方が有利となります)
決算上は赤字でも役員報酬を考慮すると
以上のような理由から、中小企業では会社と役員を一体として税金を考えていきます。すると、決算書上は赤字に見えても、実は役員報酬を増額したことによる赤字だとすれば、実際のところは会社は儲かっていることもあります。(もちろん、銀行対策等も考えて小幅な黒字にして法人税を払う方が良いのですが)
ですので、儲かっている会社(儲かりそうだと予想している会社)は役員報酬を増やす→逆の見方をすれば役員報酬が増えている会社は儲かっている(会社自身が儲かると予想している)と解釈できます。
逆に、儲かっていない会社は何とか経費を減らして黒字を確保しようとします。経費を減らす際に一番最初に手を付けるのが自身の報酬である役員報酬です。つまり、役員報酬が減っている企業は収益力(もうける力)が落ち込んでいるとも考えられます。
つまり、役員報酬が増えている会社は儲かっていて、役員報酬が減っている会社は収益力が落ちてきているといった分析が出来ます。(ただし、この分析は社長が会社と役員の両者の税金まで気を配って経営しているとの前提ですので、放漫経営をやっていたり、係数能力の低い経営者である場合には通用しません。また、ずっと赤字が続いている会社もこの分析からは外れます)
同じような科目に交際費もある
交際費はもっと単純で、儲かっているときはそれなりに交際費を使い、収益力が落ち込んでくると財布のひもを締めて交際費が減るといった具合です。たしかに、会社の収益力が落ちてくれば、儲かっていたときと同じように交際費をジャブジャブとは使えませんね。
交際費は、社長の価値観も反映されますので、儲かっていても交際費をそこまで使わない会社もあるでしょう。その場合は、この分析は使えませんので、あくまで参考と考えてください。