
資産形成には「稼ぐ力」だけでなく、共働き夫婦の「家事折半」がカギ。
年収バランスや外注活用、家庭内リスクの分散まで──人的資本と時間の最適運用について具体的に解説します。
共働きの持続こそ資産形成の中核

共働き世帯の家計運営、資産形成のために最も重要なことは、「共働きを持続」させることです。
住宅ローン返済も、教育費も、株式投資も、老後資金の準備も、共働きを続けることが、これらの戦略を考えるうえでの前提となるからです。
家事や育児負担が、片方に偏ることによって潰れてしまうと家計のエンジンが片方無くなるわけですから、家計運営も資産形成も立ち行かなくなってしまいます。
収入比で家事分担はナンセンス
共働き夫婦の家事分担でよくある失敗が、年収比に応じて家事負担を分担するというものです。
年収1,000万と500万だから、家事分担は2:1というのは上手くいきません。
かといって、年収比を無視して完全に家事を折半するのも納得感が得られにくい。
大きく収入格差が開かないような相手との結婚が望ましく、その場合には家事分担は5:5というのがバランスが取れています。
ただ、夫婦それぞれにキャリアもあるしライフイベントもあることを考慮すれば、5:5をベースとしつつ短期的には6:4くらいまでは許容範囲ではないでしょうか。
長期的に5:5に近くなっていけばいいわけですから。相手を使い潰さないのが大切で、良い言葉で言えば思いやり、悪く言えば、上手く長く使うということです。
相手が潰れると、相手の収入も減るし、家事に手を取られて、自分の収入も減ってしまいます。
無理せず外注も活用
企業経営においても、特にリソースの小さな中小企業では、全てを内製化するよりも、外注に出したほうがコストが安く、クオリティも確保できるということは、よくあります。
最小の経済単位は家計ですから、家計においても全てを内製化せず、一部を適宜外注に出すのも経済的合理性があります。
大きく負担を減らす家電などに投資をするのも、手抜きでなく、家計を守るために必須です。
料理も全てこなすのでなく、多忙だったり、体調的に厳しければ、惣菜や弁当で済ませるのも、リソースを消耗しない戦略として有効です。
企業経営においても、なんでも自分でやりたがる社長がいますが、時給換算するとかなり無駄になっていることも少なくありません。
社長が倒れたら、会社は立ち行きませんから、社長のリソースを無駄に消耗しないのは、会社を維持するうえで必須です。
現場を知らないで経営はできない
中小企業経営においては、現場を知らない社長は適切な意思決定をできません。リソースに限りのある中小企業は、適切な意思決定が出来ないことを繰り返すと、すぐに潰れてしまいます。
小さな経済主体であることは家計も同じですから、家計の運営をするうえで、「現場」を知っておく必要があります。
家事をすること、家事の実態を知ることで、家計の構造が理解できます。構造が理解できれば、使って良いお金、とっておかなければならないお金の区別もつきやすく、意思決定の精度も上がります。
中小企業で経理担当者が、現場も知らないのに、データとしての数字だけで、ああだこうだと机上の空論を振りかざすと、かなりの確率で経営が危機に陥ります。(そのようなケースを何度も目にしてきました)
現場を知っていると…副次的な効果として
普段の家事で、家計から日常的にどのような支出があるのかが適切に把握できるため、ふるさと納税を有効活用できます。
返礼品を食事に充てれば、食費の節減が可能となりますし、日常消耗品(例えば洗剤など)に充てれば、家計の余裕が増します。
あるいは、家事の中での気づきが、保険の見直しなどにも有効に作用します。家計のバランスが見えれば、必要な補償・不要な補償の見極めも精度が高まります。
家事の中で、家族の健康も見えてくれば、医療費控除への理解も上がりますし、予防としてのセルフメディケーション税制も活用可能でしょう。
家事分担はリスク分担
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企業経営にでは、売上を特定の会社に偏らせないというのは鉄則です。その会社の業績に、自社の命運も振り回されるから。
家事分担も同様で、「できる人がやる」というのは、短期的には良くても、長期的には突発的な病気・介護・転職などへの耐性を失ってしまいます。
壊れにくい生活基盤を築くことにより、安定した家計運営が可能となり、資産形成につながっていくのです。
まとめ
共働き夫婦にとって、家事を折半することこそが安定的な家計運営と資産形成の中核。
やる/やらないは感情の話でなく、仕組みの話。
家事折半がうまくいけば、税制を活用したり、支出をコントロールできたりと、資産形成に加速がつき、長期的には大きな差になります。
家事分担に正解はなく、家庭特有の事情もありますが、感情論や惰性で「なんとなく」家事が行われてしまいがちです。
しかし、資産形成を本気で考えるなら、「家事をどう回すか」こそが、その要諦であります。
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