確定申告は「簡単なもの」なら自分でできると言われます。
自分で確定申告できれば税理士報酬も不要ですが、「簡単なもの」が何かわからなければ、間違えるリスクが高まり、「これでよいのか」という不安もつきまといます。
「簡単なもの」は、
- 必要な資料と処理が定型化されている
- 個別の税務判断がほとんどない
という2つを満たすものと考えます。
一方で、特に判断が難しくなるのが、事業所得のある個人事業主です。
ここでは、自分の申告が「簡単なもの」に該当するのか、そうでない場合の対応を紹介します。

「簡単な申告なら自分でできる」の難しいところ
確定申告を自分で行えば、資料の整理や申告書の作成には、相応の手間と時間がかかるものの、申告内容を自分で把握しやすく、税理士報酬を抑えられます。
そのため、「簡単なもの」であれば、なるべく自分でやった方が良いのですが、
問題は、何が「簡単なもの」に当たるのかを、初心者自身では判断しにくいことです。
簡単ではない確定申告を自分で行うと、誤りに気づかないまま申告したり、後から税務署に指摘されて追加の税金を納めたりすることがあります。また、申告後も「これでよかったのか」という不安が残ります。
初心者が自分で対応しやすい申告の範囲
「簡単なもの」は税理士寄りのプロ目線になってしまうため、「初心者が対応しやすい申告」と言い換えます。
初心者が対応しやすいのは、適用要件が明確で、必要書類が揃っており、個別の税務判断がほとんど生じない申告です。
たとえば、次のような申告は比較的対応しやすいと考えられます。
- 給与所得者が、医療費通知などの資料に基づいて行う医療費控除の還付申告
- 給与所得者が、単独名義で取得した一般的な住宅について初めて住宅ローン控除を受ける申告
ただし、適用要件に疑問がある場合や、共有名義、連帯債務、親からの資金援助などがある場合は、単純な申告とはいえません。
また、申告すること自体が決まっており、源泉徴収票や寄附金受領証明書など必要な資料がすべて揃っている場合には、次のような申告も比較的対応しやすいものです。
- 2か所給与の源泉徴収票を合算する申告
- 公的年金等の源泉徴収票に基づく申告
- ふるさと納税について寄附金控除を受ける申告
ただし、申告が必要かどうか、ワンストップ特例がどうなるかなどの判断は別途必要です。
これらは、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」でも資料のどこを見て、どの数値を入力するのかが示されており、初心者でもある程度対応しやすいと思われます。
ソフトで完成しても正しいとは限らない
「初心者が対応しやすい申告」に当たらないのが、事業所得などの確定申告です。
事業所得では、売上や経費に関する資料の形式が、取引先や決済方法などによって異なります。それらを整理し、正しい時期に計上するだけでも手間がかかります。
そのため、集計や記帳には「会計ソフト」を利用することが一般的です。
会計ソフトは、入力、集計、計算を効率化し、勘定科目を提案してくれることもありますが、その支出が必要経費になるか、いつ計上するか、資産として減価償却すべきか、家事按分が必要かといった判断の正しさまで保証してくれるわけではありません。
つまり、数字をまとめて申告書を完成させることと、その申告内容が正しいことは別の問題です。
税理士事務所の新人でも申告書作成を間違える
私がこれまで見てきた範囲では、新人職員が少し複雑な申告書を初めて作り、最初のチェックで何も修正されないケースは、体感として半分程度です。
もちろん、事務所の教育体制や申告内容によって差はあります。ここで言いたいのは、簿記や税務を勉強して税理士事務所に入った人であっても、初めから一人で正確な申告書を作れるとは限らないということです。
そのため、税理士事務所では、経験のある職員や税理士が確認することでミスを防いでいます。申告書を作るだけでなく、作成後に確認する仕組みも重要なのです。
記帳と資料整理は自分で、判断と申告は税理士という分担
初心者でも対応しやすい申告であれば、納税者自身で申告することで、税理士報酬を抑えられます。
一方、簡単ではない申告だからといって、資料整理や記帳を含めてすべて税理士へ任せると、その分だけ報酬が高くなりやすいです。
そこで、
- 資料の収集と整理は納税者が行う
- 日々の記帳も可能な範囲で納税者が行う
- 税務判断、決算整理、申告書作成は税理士へ依頼する
という分担が考えられます。
どこまで自分で行い、どこから税理士へ依頼するかは、申告内容、使える時間、費用、間違えた場合のリスクによって変わります。
「全部自分でするか、全部税理士へ任せるか」の二択ではありません。自分でできる部分を整理したうえで、判断や申告書作成を税理士へ依頼する方法も、現実的な選択肢です。


