売上が特定の得意先に偏っていると、その会社との取引がなくなったときに、資金繰りや利益に大きな影響が出ることがあります。
とはいえ、小規模企業では、期中に得意先別の売上比率を細かく管理することが難しい場合もあります。
そのようなときに確認したいのが、決算書に添付される売掛金の内訳です。
売掛金の内訳を見れば、売上や入金が特定の得意先に偏っていないかを確認する手がかりになります。
この記事では、売上の1社依存リスクと、決算書の売掛金内訳から確認できるポイントを整理します。
この記事は、法人取引・下請け取引・継続取引など、特定の得意先への売上依存が起こりやすい事業を主に想定しています。

中小企業の分析はシンプルでも良い
個別性の強い中小企業では、財務分析は機能しづらいときもあります。
そのため、シンプルな分析でも十分なケースも多く、決算書や内訳書といった書類を眺めるだけでもリスク評価が可能です。
まずは、決算書や内訳書から「偏り」を見る、のが手軽でおすすめです。
売掛金で代替分析
本来は売上の偏りを分析すべきですが、決算書から(得意先ごとの売上比率は)直接は読み取れないため、内訳書の売掛金で代替します。
売掛金の明細は「期末時点」での構成ですから、大きく偏っていれば、日常的にも偏っている可能性が高いためです。
特定の得意先に偏っていると、「リスク」が高いです。
(注意点)
売掛金の残高は、その会社への年間売上そのものではありません。回収のタイミングや月末時点の請求状況によっても変わります。ただし、毎期の決算書で同じ得意先への売掛金が大きく残っている場合、売上や入金が特定先に偏っている可能性があります。
経理の精度の問題も
内訳書における売掛金の件数が極端に少ない場合、特定の得意先に偏っているのか
それとも、経理が雑なため記載できていない可能性もあります。
この場合は、売上の偏りとはまた別で大きなリスクですので、改めていく必要があります。
売上が偏ると何が起きるのか?
すべての得意先に対する売上を100%としたとき、一つの得意先に対する売上が「20%」を超えると偏り過ぎといわれます。
デメリットはとして、
その得意先が倒産すると入金が滞り、そのお金で払おうと予定していた支払いができなくなり、自社も倒産する「連鎖倒産」が挙げられます。
資金繰り対策:倒産防止共済の活用
連鎖倒産を防ぐという意味では、倒産防止共済も有効です。
倒産防止共済は、得意先が倒産した際に連鎖倒産を防ぐための共済です。掛け金を支払うと、いままで掛けてきた掛け金のうち一定倍の金額を貸し付けてくれます。
交渉力の喪失と「言いなり取引」の危険性
特定の得意先に売上が偏ってしまうと、その会社の言いなりにならざるを得なくなります。
力関係が一方的になれば、売上の大きさをいいことに低い利幅の取引をさせられたり、納期などで負担をかけられたり、入金のタイミングを一方的に変えられたり…などということも起こり得ます。
売上を分散する方法とリスク管理の実務
一つの得意先に対する売上の比率は全体の20%程度までとして、20%を超える得意先についての比率を引き下げるには
・他の得意先の売上を上げる
・その得意先の売上を減らす
と考えられますが、ケース・バイ・ケースなので状況に応じて対処したほうが良いでしょう。
時間がかかるゆえに、徐々にでも是正できるように取り組みを始める「サイン」が「偏り」です。
売上の偏りは、数期かけて是正していく
売上が特定の得意先に偏っているからといって、すぐにその取引を減らせばよいという話ではありません。
その得意先が現在の利益や資金繰りを支えている場合、急に取引を減らすと、かえって会社の経営が不安定になります。
そのため、売上の偏りが見つかった場合には、すぐに取引を切るのではなく、新しい取引先を少しずつ増やす、別の販売経路を作る、既存顧客への依存度を下げるなど、数期かけて是正していく視点が必要です。
決算書の売掛金内訳は、そのための出発点として使うものです。
この問題は資金繰りだけでなく、
経営や融資とも関係します。
全体の構造はこちらで整理しています。



